表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
25/29

第24話 正体


 変身時間を使い果たし、今やただの人間の男となってしまったアーバインを、エメラルドガールがつき飛ばした。アーバインはなすすべなく宙へ浮き、道路に背を打ち付けた。

「アーバイン!」


 エレナは叫んだ。

「ん? さっき服を投げたのはお前か」


 エメラルドガールはエレナの方を向き、ジャンプして瞬時に眼前へ来た。エレナは念のために持っていたふたつめの銃をとり出し、女怪人の方へ向けた。しかし、すぐに腕を掴まれた。その腕は、軽々とねじられていく。

「ぐああ!」


 エレナは銃を落とした。腕はどんどんねじられ、きしむ音が聞こえた。

「ほらほら。骨がきしんでいるぞ!」


 やばい! これ以上ねじられたら、折れる!


 エレナが危機を感じたとき、不意に、エメラルドガールの腕の力が弱まった。見ると、エメラルドガールの腕は、緑色のごつごつした腕から、細い女性の腕へ変わっていた。そして、体は縮み、髪は黒いショートヘアに、顔は白く美しいものへ変化していく。エメラルドガールは、エレナよりも小柄な女性が変身していたのだ。

「うおお!」


 エレナは声を張り上げ、握られた腕をねじり返した。今ならば、簡単に押し勝つことができる。何のことはなく、エレナは腕を振り払った。そして、先ほどまでねじられていた右腕を、女の腹へ繰り出した。

「うっ!」


 まともにエレナのパンチを受け、女は後ろへ退いた。それでも抵抗の意思はあるらしく、へなへなとパンチを繰り出してくる。エレナはこれをひょいと避け、顔面へもう一発くれてやった。

「うぐ……」


 小柄な女は、その身を白い建物の壁に打ち付けた。容赦のないエレナは一気に間合いを詰め、右足を振り上げ横へ一閃した。

「おりゃあ!」


 顔面へ直撃し、女の体がフラフラと揺れる。エレナは、左へ振りぬいた脚を下ろさず、そのまま右へ勢いよく蹴った。二発目の蹴りが、女の顔へ直撃する。

「うう……!」


 女は力なく、地面へ倒れた。手を突いた女に対し、エレナは息を切らしながら言葉を吐いた。

「あんた、話は署で聞くから。おとなしく捕まりなさい」

「はあ……はあ……」


 今や人間の姿へ戻ったエメラルドガールは、息を切らしながら、エレナを睨みつけた。どうやら、まだ諦めていないようである。

「イリアナ……!」


 アーバインが叫んだ。イリアナ? この女のことか?

「あなたたち知り合いなの?」


 エレナは動揺し、アーバインの方を向いた。アーバインはハッとした顔で、エレナの後方をまじまじと見た。

「おい! やばいぞ伏せろ!」


 エレナはアーバインの視線の先、すなわち、イリアナがいた方を向いた。なんと、イリアナはボロボロの体を引きずり、さっきエレナが落とした銃を握っていた。

「へへへ……」


 倒れたままのイリアナは不気味に笑い、銃口をエレナの方へ向けた。エレナは素早く伏せた。


 ドン! ドン!


 銃声が二回聞こえた。体に痛みは感じない。銃撃はエレナには当たらなかったのだ。


 カチッ、カチッ。


 イリアナは何度も引き金を引いているが、どうやら、銃弾はもうないらしい。

「くそ!」


 イリアナはそう言って、銃を投げ捨てた。街灯に照らされた道路の上を、銃が滑っていく。

「先生……一週間後の夜、タイムガーディアンで。ケリを付けよう」


 イリアナはアーバインの方を見て、語りかけた。そして、傷ついた体で転がったり這ったりしながら、道路を移動した。

「待て!」


 エレナはイリアナに向けて走った。だが、間に合わない。イリアナは転がりながら、通りを流れる大きな川へ落ちた。


ドボン……


 そうして、川の流れに従って、その小柄な体は流れていった。




第25話 連鎖 へつづく

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ