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第23話 光明



 ビルの奥へ消えていった二人の怪人を見送ったエレナ。しばらくすると、エメラルドガールが地に落ちてきた。アーバインの攻撃を受けたのか? 女怪人は、道路をゴロゴロと転がっていく。


 アーバインが女怪人を追い、割れたガラスの壁から飛び降りてきた。そして道路へ出た。


 緑色の怪人は、地面に仰向けに倒れている。アーバインは、女怪人を見下ろした。倒したのか?


 安心したのも束の間、エメラルドガールは寝転がったまま横に脚を一閃し、アーバインをこかせた。そして即座に起き上がった。アーバインの首を両手で掴み、持ち上げる。


 アーバインの体が宙に浮いた。

「うっ……!」


 首を絞められ、アーバインが唸った。今、彼の両足は空中をふらふらと揺れている。なんとかしなければ! しかし、エレナに何ができるというのであろうか。


 そこで、エレナの視界に、赤と黒の巨大なバイクが目に入った。アーバインのバイクである。これだ! これで突っ込むのだ!


 エレナはバイクに駆け寄り、エンジンをかけようとした。しかしロックがかかっており、びくともしない。カギがかかっているのか? どうやってロックを解除すれば良いのであろうか。一般的なバイクにある、カギを差して回すような部分は見当たらない。エレナは、バイクのあちこちをキョロキョロと見回した。


 そして、右のハンドルの根元あたりに、指を置くようなところを見つけた。もしかして指紋認証なのか? エレナは直感的に、そこへ指を置いた。


 ピピピ……


すると、アーバインの腕輪が発していたのと同じ、女性に似た機械音声が流れた。


――指紋が、一致しません。ロックを解除しません――


 アーバインの指紋でなければ起動できない! しかし、アーバインは今、首を絞められ、今にも死にそうなのだ!

「くそ!」


 エレナは声を発した。そして、指を置く部分を力任せに殴った。何発もドカドカと殴ると、ロックは破壊された。


――し、ししし、指紋……ロックを解除……解除……――


 バイクは意味をなしていない言葉を発した。エレナは試しに、右のハンドルに手をかけ、アクセルをかけてみた。


 ブゥゥン……ブゥゥン……


 動いた! エレナはバイクにまたがり、エメラルドガールへ向けて走らせた。そして、寸前で飛びのいた。エレナは地面を転がり、バイクはエメラルドガールへ直撃した。

「ぐわ!」


 エメラルドガールはバイクごとふっ飛び、首を絞められていたアーバインは振り落とされた。アーバインは手を地面に突き、せきこんだ。

「ゴホッ! ゴホッ!」

「ウルボーグ!」


 エレナはせきこむアーバインに駆け寄った。アーバインは顔をあげた。

「エレナ、隠れるぞ! 体勢を立て直す!」


 エレナとアーバインは走り、近くにあった駐車場の壁に身を潜めた。壁に身を隠す寸前、エレナは視界の端に、緑色の怪人をとらえた。バイクでふっ飛ばされた相手は、地に手を突き、今にも起き上がろうとしている。ゾッとしながら、エレナは身を潜めた。


 ……。


 レンガの壁の向こうに身を潜めるエレナとアーバイン。夜の静寂の中、女怪人の足音が聞こえた。近くに来ると思えば、立ち止まり、少し遠ざかった。どうやら、エレナたちを見失っているようだ。

「くそ……! どこに隠れた!」


 キュインキィイン……!


 突然の機械音に、エレナは背筋をこわばらせた。隣のアーバインを見ると、腕輪が赤く光っている。これは以前も見た。おそらく、もうすぐ変身が解けるという合図だ。

「ふふふ……そこにいるのか」


 ああ、なんというタイミングであろうか。エレナらの居場所は、もはや敵にバレてしまった。


 エメラルドガールの足音が、少しずつこちらに近付いてくる……。隠れているゆえ、敵の姿が見えない。これが、余計にエレナの恐怖を煽った。エレナはアーバインと向かい合った。そして、おそらく最後のチャンスであろう作戦を提案した。


 小声で、早口に話し始める。

「アーバイン。聞いて。私が上着を投げて、一瞬だけエメラルドガールの気を引くわ。あなたは反対側から壁を飛び越えて出て、攻撃をして。たぶんチャンスは一回だけよ。三秒数えるからね」


 エレナはアーバインの返事を待たず、カウントを始めた。

「三……」


 アーバインの太ももの筋肉が動いた。いつでも飛び出し、攻撃を仕掛けられるように。

「二……」


 エレナは警察の制服、その上着を脱いだ。これを横へ投げ、ほんの一瞬、エメラルドガールの気を引くために。

「一……」


 トン……。エメラルドガールの足音がした。ヤツはすぐ近くに来ている!

「ゴー」


 そうつぶやくと、エレナは横へ上着を投げた。

「この! ……あれ!」


 暗闇も味方してくれたからか、エメラルドガールが蹴り上げた脚は、エレナが投げた上着を蹴った。いきなり壁から飛び出してきた上着を、敵と勘違いしたのだ。


 タタタ!


 そのとき、エメラルドガールの左側から、素早く駆け寄る音が聞こえた。

「うりゃあ!」


 アーバインが、腕を振り上げ相手の顔めがけて攻撃を繰り出した! 一瞬のスキを突き、怪人ウルボーグのパンチが決まる!

「な!」


 女怪人は瞬時に振り向き、アーバインの存在を確認した。だが、その拳は既に眼前にあり、防ぐことも避けることもできない。


 ド……!


 アーバインの拳が、エメラルドガールの顔へ直撃した。

「ぐあ……」


 しかし、痛みにうめく声を発したのは、女怪人ではなく、アーバインの方であった。アーバインは女怪人の顔から手を離し、手をパーにしてひらひらと振った。


 エレナは、アーバインの姿を見て、愕然とした。アーバインの必殺の一撃は、決まらなかったのである。拳が当たる直前に、彼の変身は解けてしまった。そして、生身の拳が、エメラルドガールの頑丈な顔に直撃したのである。アーバインは声をあげ、痛みにしびれる手を振ったのだ。



第24話 正体 へつづく

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