表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
19/29

第18話 集結


2025年10月1日午前0時16分 バー・サウス




 ウォッシュと、ウルボーグに変身する男アーバインは、バー・サウスに到着していた。地下へ続く階段を降り、扉を開けると、店のカウンターが見える。

「こんばんはー」


 ウォッシュが挨拶をすると、オーナーの長身な女性ジェシーが歩み寄って来た。

「ウォッシュ!」

「やあジェシー」


 ジェシーは、ウォッシュを抱きしめて、その頬にキスをした。ウォッシュも顔を上げて、ジェシーの頬にキスをした。ジェシーは嬉しそうにウォッシュの肩を抱いた。

「しばらく来ないから、他に良いバーでも見つけたのかと思ってたよ」

「まさか。ここより良いバーなんて、俺は知らないよ」

「ほんと?浮気したら許さないよー?」

「ハハハ、ほんとさ」


 ジェシーは背が高いので、ウォッシュは彼女を見上げて話す。ウォッシュは本件を話題に出した。

「VIPルームって空いてるかな? 今日使わせてほしいんだけど」

「ええ、空いてるわよ」

「良かった。急に使わせてほしいなんて言って悪いね」

「本当は予約制の部屋なんだけど、あなたは特別ね」


 ジェシーはそう言うと、ウォシュの後ろに立つ男アーバインを見た。そして、眉をつり上げた。

「もしかしてあなた、この人と二人でVIPルームを使うの?」


 ウォッシュは、少しばつが悪そうな調子で答える。

「や、その、まあ、後で一人来るかもしれないから。学生時代からの友人でさ。ゆっくり話したいのさ。な? な? アーバイン」


 そう言って、凄い勢いでアーバインの方を振り向いた。当然、ウォッシュとアーバインに学生時代からの面識などない。だが、あまりに必死なウォッシュを見て、アーバインはどうやら合わせる気になってくれたらしい。

「あ、ああそうだ。俺たち仲良しなんです」


 アーバインはそう言って、ウォッシュの頭をぽんぽんと叩いた。ジェシーは笑顔で部屋を案内してくれた。

「そういうことね。VIPルームはこちらよ」



 部屋に入るなり、アーバインは立ち止まった。


 少し料金が高めなVIPルームは、完全個室である。キラキラした赤い壁で覆われ、ハート型の大きなバルーンが机やソファーに置かれている。

「お、おお……」


 ウォッシュは、アーバインの驚きを察し、口を開いた。

「可愛らしい部屋だろ? 本来は、デートとかお誕生日パーティーで使う部屋なんだ」

「なるほどな。男二人で来るようなところじゃないな」


 アーバインは、先ほど店のオーナーであるジェシーに顔をしかめられた理由が分かったようである。


 ウォッシュは、奥にあるソファーに腰かけた。アーバインも、ハート型のバルーンを横に避けて、手前のソファーへ腰を掛けた。


 いよいよ本題へ入るため、会話の口火を切る。

「アーバイン。ではエメラルドガールについて話そうか。俺は、彼女については、昨晩殺害事件を犯したことぐらいしか知らないな。正直、正体に関しては女性であるということ以外は見当がつかないよ。


 君は何か、有力な情報はあるのか?」

「俺は昨日の夜……」


 コンコン


 アーバインの言葉を遮り、部屋のドアがノックされた。アーバインは、ビクッと背筋を伸ばした。ウォッシュは特に動揺していない。

「どうぞ」


 あくまで素朴に返事をした。すると、「失礼します」と言って若い黒髪の女性が入って来た。バーの店員である。

「ファーストドリンクを聞きに参りました」

「ビールをお願いします」


 お酒を選んでいる暇などないというように、食い気味な返事をするアーバイン。一方ウォッシュは、机の上にあったメニューを手に取りじっくりと眺めている。

「うーん……セックスオンザビーチ頼みます」

「分かりました」


 店員は部屋を出ていった。ウォッシュは店員の背中を見送った後、アーバインに話しかけた。

「今の女の子、かわいくね?」

「お前よくそんな余裕あるな」



※※



 しばらくして、エレナが到着した。こうして、警察官エレナとウォッシュ、そして怪人に変身する男アーバインの、奇妙な面談が開始された。

「エレナ、こんばんは。彼がウルボーグに変身する男、アーバインだ」


 ウォッシュはアーバインに手をかざし、紹介した。そんなことをしてくれなくても、エレナは既にアーバインの顔を見たことがある。

「う、うん」


 ぎこちなく返事をし、エレナは椅子に腰かけた。彼女をこのバー・サウスへ召喚するに至った経緯をウォッシュから聞いた。


 アーバインと手を組むことになったから、信頼できる仲間としてエレナを呼んだらしい。手を組む理由はもちろん、エメラルドガールへの対策をするためである。



 アーバインは、エメラルドガールに関して分かることを話していたらしい。アーバインの話は、次のようなものであった。



 彼は昨晩、ウルボーグに変身し、ネオン少女院を襲撃した。その後帰宅したとき、何者かに部屋を荒らされていた。そして、人間をバッタ型の怪人に変身させる薬、薬品エメラルドが盗まれていたことを発見した。


 薬品ウルコイドは男性、薬品エメラルドは女性への適性が強く、もしも逆の性別の者が使用した場合、骨格の変形や脳への障害などの強い負荷がかかるという。アーバインは前々からこの二種の薬品を所持していたが、ウルコイドのみを使用し、エメラルドは自宅の分かりにくいところに隠していたらしい。だが、そのエメラルドは盗まれてしまった。


 とにかく、昨日の間に何者かがアーバインの家へ侵入し、薬品エメラルドを盗んで逃亡した。その何者かがエメラルドガールへ変身し、殺人事件を起こしたのだろうということだ。これ以上のことは、特に分からないということであった。


 アーバインにとって、エメラルドガールは罪なき人々を殺害した罪人であり、戦って倒したいと考えているらしい。そこで、ウォッシュと協定を結んだということだ。



 一通りアーバインが話し終えると、ウォッシュが口を開いた。

「アーバイン。ぶっちゃけた話さ、君とエメラルドガールが戦ったとして、勝てる自信あるの?」


 アーバインはあくまで無表情だ。

「いや、自信はない。圧倒するかもしれないし、互角かもしれないし、完封されるかもしれない。何しろ、どのくらい強いのか分からないからな」

「まあ、そうだよな」

「ああ。だが、ウルボーグ以外の対抗手段もある」

「なに? もっと強力な怪人に変身できるとか?」


 ウォシュは身を乗り出した。そんなウォッシュとは裏腹に、アーバインは変わらず無表情で答える。



第19話 発露へつづく

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ