吹雪の夜
初投稿です。気軽に読んで頂けると幸いです。文才もあまりなく、投稿も不定期ですが。
主人公とその妹の成長を見届けろっ‼
「はあ、はあ」
それは、或る日の冬のことだった。
「ねえ、お兄ちゃん。私たち、大丈夫なのかな?」
不安がる少女は、兄と呼ぶ少年に問う。
「大丈夫。何があっても、俺が守ってみせる」
「うん、ありがとう。もう大丈夫」
そう言って、静かに笑う少女。吹雪の夜に、少年と少女はある人物の家に着いた。
「開けるぞ。絶対に俺の後ろにいるんだぞ」
少年は少女の頬を冷えた右手で撫でながら言う。そして、腰に提げた黒塗りの刀に右手を置き直し、左手で木製の扉をノックする。
「なんだ。こんな夜中に何のようだ」
扉が開かれると、そこには自分達の身長を遥かに越える大男がいた。頬には傷があり、無精髭も生えているため、少年には男が武人に見えた。
「えっと、年貢を納めに来ました。明日の明け方までと聞いたので」
白い息を吐きながら、緊張した様子で話す。そして、引いてきた台車にのった米俵を見せる。
「っち。おせぇんだよ、普通は納め時の一日前には持ってくんだろうが‼それにおめえら武家の子息だな?武士は米俵をこの二倍って伝えた筈だが‼」
「そ、そんなこと言われても出せるわけがないでしょう!私たちは武士、戦うことを本業とする者です。畑いじりをそつなくこなすなど不可能です!」
男の怒号に対し、少年も負けじと声を張る。しかし、それは余計に相手を怒らせたようで、男は憤慨しながら立て掛けてあった薙刀を手に取り構える。
「あんまりうるせえとぶっ殺すぞ‼そこのガキもなあ‼」
「ッ⁉瑠璃、逃げろ‼」
少年がそう叫ぶと同時に男が動いた。薙刀を左から右に薙ぐと、旋風が起きる。それを少年は抜いた刀で防ぐ。
「お兄ちゃん⁉」
「瑠璃‼早くしろ‼俺が、抑えてるうちに‼」
必死の形相で叫ぶ少年を少女はどう思っただろうか。一瞬泣きそうな顔を見せ、すぐに後ろを向いて雪道を駆ける。
「オラァ‼どうした糞ガキ‼」
「グッ‼」
少年は悟った。今の未熟な自分ではこの男には勝てないと。しかし、大切な妹、瑠璃を逃がすためには時間を稼ぐ必要がある。
「おらよ‼」
「ガハッ‼」
思考するうちに、強烈な一撃を腹に受けてしまう。
しかし、ここで倒れる訳にはいかなかった。瑠璃を守るために。
少年は、父親に教わった代々伝わる秘伝の奥義を放った。
「ハアアアアア‼■■■■、■■■■‼」
「グッ、ガハッ‼」
激しい衝撃と薙ぎによる旋風が男に襲いかかる。男は首と腹と口から大量に血を流し倒れた。それを見て安心したのか、少年も地に伏す。
(やばい。意識、が......)
そこで少年の意識は途絶えた。
~ ~ ~ ~
その後、少年の消息は不明。少年の家族、特に妹の瑠璃は酷く悲しんだ。兄の事実上の死を。
~ ~ ~ ~
それから数年の月日が流れて。
「はあはあ。ふう」
少女は肩で息をしながら、手に持った白塗りの刀を鞘に納める。そして、夜の雪道を静かに歩く。
鮮血の花を背に。
ありがとうございます。次回をお楽しみに。