プロローグ 始まりの恋
あなたは片想いが実らず
時が過ぎた経験はありますか?
その片想いをしていた人をなんとなく忘れられずに
過ごしてしまっていませんか...?
※このお話は実話に基づいたお話ですが、
登場する人物の名前、建物の名前などは架空のものです。
2015年5月。
初めて彼女ができた。
2才も年が上だけど、好きなら関係ない。
すごく人に頼られて、優しくて可愛くて。
自慢するには十分すぎる彼女だ。
付き合ったきっかけは、単純に幼なじみで
ずっと前から好きだったからだ。
それ以外に大した理由はない。
2才も年が離れていることで、
中学3年と高校2年では行ける場所も意見も違った。
それでもデートくらいはできたし問題なし。
毎日がもう楽しすぎ。
うわー受験勉強もしないと...会えないのはモヤっとする。
それでもクリスマスや年末年始も二人で楽しんだ。
2016年10月。
ようやく高校生カップルとなり、バイトも始めた。
恥ずかしいがアニメオタクになってしまって
彼女に打ち明けるのがちょっと怖かった。
でもそれは、彼女も同じ思いだった。
お互い好きなアニメとか見合ってあれこれ感想言ったよね。
共感、反論もまた。
もう本当に楽しくて、幸せで胸がいっぱいだった。
そんなのがずっと続くと、思ってた。
2017年4月。
彼女がふといなくなった。
進路は大学に進学とだけしか聞いてなくて
詳しくは知らなかった。
家族全員引っ越したのだと。
なぜかどこに行ったのか近所は知らず、
彼女の友人達は口を固くし、何も教えてくれなかった。
なぜ。どうして。会いたいよ。
枕に顔をうずめて全力で泣き叫び続けた。
2017年5月。
事態は急展開した。彼女の友人の一人が話をしてくれた。
彼女は今、秋田の病院にいると、そう言った。
そこで衝撃の事実を聞いた。正直、腰を抜かしそうだった。
彼女には前から悪性の腫瘍があったこと。
去年まではまだ平気なところはあったが、
今年の4月に容態が急変したこと。
2017年6月。
学校まで休み、彼女の元へ向かった。
道中は心臓が張り裂けそうなほど緊迫していた。
そして病室には、呼吸器をつけて眠っていた彼女と
彼女の両親がいた。
両親の顔はここへ来ることが分かっていたかのようだった。
別の場所で彼女の両親から話を聞かされた。
余命はあと三ヶ月なんだと。
世界が真っ白になったみたいに呆然とした。
お母さんのほうは涙を流しながら謝ってきた。
お父さんは眉間にしわを寄せ、拳を固く握っていた。
2017年9月。
この日は彼女と旅行雑誌を読んでいた。
お互い、秋葉原に行きたいと意見が合った。
そんな他愛ない話がとても幸せだった。
ずっとこの瞬間が続けばいいのにと、心から願った。
こんなに二人で笑ったのはこれで最後だった。
2017年9月13日。
容態は急変し、担当医から告げられた。
鏡には泣きすぎた酷い顔がそこにあった。
彼女の病室には多くはなかったが友人達、両親などが
集まっていた。誰もが涙を流していた。
呼吸器が外された時は、小さく泣いていた人が多かった。
その時、彼女は笑った。そしてかすれた声で
ありがとうと。
そして泣きながら笑顔で彼女に最後の言葉を伝えた。
彼女は少し微笑んだ顔をしながら、静かに息を引き取った。
2017年10月。
彼女の葬式に参列した。思っていたより人が多く、
こんなにも彼女に親しんでいた人がいたのかと驚いた。
多くの人が悲しみに耐えきれず泣いていた。
しかし、自分は泣かなかった。
泣きたい、泣き叫びたい自分はいたはずなのだが
そうはしなかった。
きっと彼女に笑われてしまうと思うと泣けなかった。
葬儀が終わり、帰り道を歩いていると
一組の高校生カップルが前に歩いていた。
とても楽しそうで幸せそうに見えた。
きっと彼女ともあんな風に笑いながら未来を
歩いていけたんだろうと思った。
その時の空は雲一つなく晴天できっと彼女に
笑われているんだろうなと思った。
こんな青空の下で泣いている自分に。
どうも読んで下さってありがとうございます。
今回のお話は本編に入る前のお話です。
書いていて色々な事を思い出しました。
途中泣きそうになったのはここだけのお話で(笑
本当に忘れることができない唯一の経験談です。
最後までぜひ読んで下さい。
よろしくお願いいたします。