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このお話はできれば週一投稿目指していきたいと思っています。

果たしていつまでそれを守れるかわかりませんが、読んでくださっている皆様、優しく見守ってくださいませ。

『―――ふうむ、まずは人間をみつけないとな』


 棲み処にしていた地から離れ、海と山を越えて飛んでいるなか、アクイラはふと呟いた。

 人の世界に入りたいアクイラの最初の目的は、適当な人間を捕まえることだ。

 べつに捕まえて食べるわけではない、アクイラを使()()してもらうための主を見つけようとしているのだ。

 そのために近づいたのは「国」と人が呼ぶ大きな集落地。

 アクイラが飛んできた国の名はバレクシアという。特徴をもった国であり、今のアクイラには必要な条件が揃いやすい場所だ。

 なぜグリフォンの彼が国の名や特徴など知っているのかといえば、来るのが初めてではないからだ。

 アクイラは、過去にモンスターテイマーと呼ばれる、モンスターを使役することに長けた人間に使役された経験がある。

 ある日昼寝中に突然魔法で拘束され、有無を言わさず連れ去らわれた先でモンスターテイマーに無理やり従わせられそうになったのだ。

 捕まってしまいなにが起きたかわからないまま人間の国に連れ去らわれたわけだが、そこは自然界のトップクラスの力の使い所。アクイラは最悪な出会い方をしたのもあり、人間との契約など誰がするかっと契約のための呪文を唱える人間に突撃したりと、拘束をされていてもかなり抵抗した。

 しかし人間のほうも諦めずにしぶとく契約を完了させようとするため、なぜそこまで必要とするのか尋ねた。

 喋れるなど思わなかった人間側は大層仰天しながらも、契約しようとしていた相手が対話を希望したことでアクイラは人間側に理解を示し、条件付きの契約を交わすことで納得の上でしばらくの間人間の下で働いていた。

 その時に人の世界を知ったのだ。その影響でだいぶ流暢な会話も可能となった。

 さて、前述の通りモンスターテイマーとの主従契約の経験があるアクイラは、今回も条件付きの契約を交わすことで人間世界に混ざろうと考えていた。

 訪れた国バレクシアは、アクイラが契約したようなモンスターテイマーが他より多く集まっている国として特徴的である。

 過去にアクイラ自身が連れてこられた国でもあるので、他よりはある程度の勝手を知っていた。

 今はまだ国の端にあたる位置なので森ばかりだが、もう少し行けば人のいる村や町といったいくつかの集落が見えてくるだろう。そこをさらに進めば大きな都市などもある。


『―――懐かしいな。当時は苛立たしく思いながら眺めていたが、自由の身である今ならなかなか楽しめる』


 忌々しいこともあった場所なのであまり感動などはない。

 だがそれでもアクイラは気分が良かった。しばらく暇ばかりな日々であったため、目的を持って動いていることにアクイラは機嫌をよくしていた。

 急ぐ旅でもないので、暫く飛んだ後途中で見つけた泉に降り立ち軽く休憩した。

 冷たい水でのどを潤し、バサバサと翼の筋肉をのばしてから畳み、馬が休むような体勢で地面に腹を付けてしばし日光浴に浸る。

 目を閉じても周りの気配は伝わっているので警戒の必要はない。

 アクイラがゆったり過ごしているのに感化されてか、獣や鳥がそばを横切る。

 本能で危険がないことを理解しているため、リスなんかの小動物はアクイラの背に上がってそこで丸まったりしている。慣れっこのアクイラはとくに反応も見せず静かに休み続けた。

 どれくらい経ったか、すっかり寝入っていたアクイラの聴覚に不審な音が伝わってきた。

 目を開いて音の発信源へ顔を向ける、ここからでは見えないが音から察するに何かが崩れる音だ。

 グリフォンの鋭い聴覚を使って周囲を探る。


『(―――はて、崩落するような崖もないのに崩れる音とは…………人間か?)』


 人は空を飛べない、力もあまりない。なので馬などの動物を飼育して荷物運びに利用していたのを記憶しているアクイラ。

 そこから推測して、馬に引かせていた荷物が崩れる音ではないか。と、そこまで考えて、アクイラの聴覚に人の話し声がわずかに聞こえてきたことで推測の通りであることが確定した。

 理由が判明したことで、アクイラは再び目を閉じて寝た。

 助ける思考などない、ただ音の原因がなにかわからないから気にしただけだ。予想が立てばもう気にならず、再びゆるやかな眠気に身を任せた。

 二度寝して目覚めたころにはすっかり夜だった。


『―――む、寝すぎたな。中途半端な時間帯に起きてしまった』


 あたりはわずかな星明りだけが頼りで、夜行性の獣でなければ前が見えない程度に暗い。

 背にいたはずの動物たちも住処に戻ったらしく、周囲にはなんの気配もなかった。


『―――困ったな』


 足元もおぼつかない闇の中、ボソッと呟かれる。

 確かに周囲は明かり一つなく一寸先も見えない、人間なら動かず過ごすことを決めるが、アクイラにとってはそれはさほども困らなかった。

 魔力を多く持っているグリフォンは成長と共に魔力の扱いにも長ける。なので視覚に頼るだけでなく、自らの魔力を周囲にばら撒くことで周辺の様子を目で見るように感じることができるのだ。

 優に成長期など越えているアクイラにとっては、こんな暗闇も平然と移動できる。やろうと思えば森一帯に魔力を撒いて把握して、眠っている獲物をみつけて狩ることも容易だ。

 そんなアクイラを困らせるものはないように思えるが、彼にとって困っているのは状況ではなく、起きた時間帯だった。

 中途半端な時に起きてしまい、もう眠くないから朝日が昇るまでしばらく暇をつぶさなければいけない。だが夜は皆寝静まるから暇をつぶしてくれる相手もいないのだ。

 つまりは退屈な時間を待たなければいけないということに困っていた。


『―――つまらんな…………空でも飛ぶか』


 じっとしているのも嫌なのでアクイラは両翼をバサリと広げた。

 バサッ、バサッ、と極力静かに羽ばたいて上昇していき、影響を与えないだろう高さまで上がってから、ただのんびりと飛び回った。

 大きな翼を扇いで雲を突き抜け、数えきれない光を湛える星空を眺め、半分ほどに欠けた月を眺め、眼下の地平線を眺めて……。


『―――つまらん』


 すぐ飽きた。

 住処でもさんざん見ている光景に今更感動などなかった。

 疲れて再び眠れるかも、とも思ったが大きな目は眠気などまったくみせずギンギンに冴えている。バッチリ目覚めていた。


『―――ううむ……困った、暇は嫌だ』


 べつにじっと朝を待てばいいだろうに、それが嫌で何かしようと考えるアクイラ。

 町に向かって飛ぼうにも、夜に近づくと警戒されると友からの教えで知っている、うかつに近場までいくのも誤解が生まれそうで面倒だった。

 できれば近場で、話し相手でもいてくれればいいのに……と、なんとも都合のいい展開を希望している。

 それに応えてかはわからないが、途中、木々の間からなにやら激しく動いている影を見つけたのだった。


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