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悪意と悲痛

遅くなってすみません。。

 慶太たちはユウリが奈落へ落ちた後、すぐさまラグドの元へ戻り報告した。


「・・・・・・なんだと」


 報告を受けたラグドは、表情を暗くして考え込んだ。そんなラグドの様子を見たクラスメイトたちは興味本位で事情を聴くと、顔を真っ青にさせた。


 慶太たちはラグドにある事を聞いた。


「ラグドさん。このダンジョンで一人で生きて戻れる確率は、どのくらいですか?」

「・・・・・・俺でもこのダンジョンを一人で戻れる確率は五分五分だ。まして、君たちくらいとなると、生きて戻れる確率は・・・・・・ほぼ0だ」

「そんな・・・・・・」


 慶太はラグドの答えに、顔を引きつらせ下に俯いた。すると、話を聞いていた雅が、突如倒れていまった。


 どうやら、ラグドの答えにショックを受け、脳では処理をしきれず意識を失ってしまった。


 慶太と皐月は倒れた雅に気付いて、急いで駆け寄り名前を呼んだ。


「雅!?雅!」

「雅ちゃん!?雅ちゃん!」


 だが、いくら声をかけても雅は目を覚まさなかった。


「くそ!一旦戻るぞ。この事を国王に報告する。慶太は雅を背負え」

「ーーっ!?ラグドさん!ユウリの捜索をしないんですか!?」

「落ち着け!捜索をするにしても、一度報告をして捜索隊を編成しなくてはならん」

「・・・・・・分かりました」


 慶太はラグドの指示に少し渋ったが、雅を背負い出口を目指した。


 そんな中、ある一人の生徒が慶太たちが戻ってきた方を見て、達成感に満ちた顔で笑っていた。





~~~~~~~~~~~~~~~~~





 ラグドは城へ戻ると、ユウリの事を報告した。その場にいたアリサは報告を聞くと大泣きした。アリサの兄であるクレイは、泣いているアリサを宥めながら、父親であるブライドに告げた。


「父上、今すぐに捜索隊を編成するべきです」

「だがな・・・・・・」

「お願いです、父上。ユウリは私の友達なのです」

「・・・・・・」


 クレイは友達であるユウリの捜索を必死にブライドに頼んだ。だが、国王はすぐには頭を縦に振らなかった。


「・・・・・・なら、私と他の希望者の少人数で行かせてください!お願いします、父上!」

「・・・・・・分かった。ラグド騎士団長、希望者を集め捜索隊の編成を行うように。現場の指揮はクレイに一任する」

「ありがとうございます、父上」


 クレイの願いが真剣だったことが伝わったのか、国王はユウリの捜索隊の編成を許可した。しかし、それには条件があった。


「ただし、捜索はダンジョン攻略中に手がかりが見つかり次第動くものとする。それはでは、これまで通りにダンジョン攻略を行ってもらう。無論、クレイもダンジョン攻略に参加するように」

「「はい!」」





~~~~~~~~~~~~~~~~~





 慶太と皐月は、雅が寝ている部屋にいた。


ーードンッ!!


 慶太は部屋の壁を思い切り叩き、今の状況を悔やんでいた。


「ーーくそっ!あの時僕もしっかり周囲を警戒していれば、こんなことにはならなかったのに!」

「・・・・・・慶太君。でもあんな予測なんて難しいよ」

「でも、実際にユウリはやっていた。・・・・・・多分、僕は浮かれていたんだ」

「・・・・・・」


 正直、この異世界という場所に慶太は少し浮かれていた。今までの地球での暮らしでは想像できないような出来事に、ゲームのような感覚でいられた。それは、皐月も同じだった。


「この世界に来てから魔法を使ったり、武器で戦ったり。地球でできなかったことをして、僕は現実から目を背けてたんだ・・・・・・」


 だが、ダンジョンに入ると現実を見た。初めて確かな殺気を感じた事、初めて肉を斬り魔物を倒した事、そしてユウリが奈落へ落ちた事。この世界では簡単に命が取られてしまうということが、嫌というほど思い知らされた。


「ユウリは最初から分かっていたんだ。だけど、僕は分かっていなかった。そんな自分が腹立たしーー」


ーーパンッ!!


 慶太が言い終わる前に、皐月の平手打ちが慶太の頬を叩いた。慶太は驚きながも皐月を見た。すると、皐月は涙ぐんでいた。


「・・・・・・それ以上、ぐすっ、自分を責めないで。私たちは仲間でしょ。こうなったのは、私たちの責任だから。だから・・・・・・」

「・・・・・・そうだね、今のは僕が悪い。それに、ユウリは絶対生きている。謝ったり後悔するのは、ユウリを見つけた後にしよう」

「うん!」


 皐月のおかげで、慶太の心はだいぶ軽くなった。


「・・・・・・少し楽になった。ありがとう、皐月」

「ふえっ!?え、えっと!・・・・・・どういたしまして」


 慶太の自然とこぼれた感謝に、皐月はおもわずドキッとした。皐月の顔は心なしか少し赤く、鼓動も早くなっていた。


「・・・・・・ん。あれ?皐月?」

「「ーーっ!?」」


 二人の空間ができている時に、今まで気を失っていた雅が目を覚ました。


「雅、身体は大丈夫?」

「雅ちゃん、よかった~」

「慶太君、皐月・・・・・・」


 慶太と皐月が安堵していると、雅がふと質問した。


「・・・・・・あれ?ユウリ君は?ユウリ君はどこ?」


 雅の質問に慶太は俯いた。そして、未だ現実を受け入れない雅に、慶太は今まで起きた事を全て話した。


 雅はやはりショックを受けて、顔を伏せてただただ泣いた。皐月はそんな雅を優しく抱くと、少し落ち着いた雅はすすり泣きながらポツリポツリと言葉を漏らした。


「なんでいつも私なの?私はただユウリ君と一緒にいたかっただけなのに・・・・・・」


 皐月は雅の漏らす言葉を聞きながら、慶太に部屋の外へ出るように促した。慶太もそれに頷き、部屋の外に出た。


 皐月は慶太が部屋から出たのを確認すると、雅のベッドの横に座った。そして、皐月は抱いた雅の頭を撫でながら話を始めた。


「・・・・・・雅ちゃんはユウリ君の事が好きなんだね」

「・・・・・・うん。最初はただ気になっていただけだったんだけど、私が悩んでいる時に何気なく助けてくれた。そんな何気ない優しさに惹かれたんだと思う」


 ユウリの事を語る雅の顔は乙女の顔だった。


「・・・・・・そっか。じゃあ、ユウリ君を見つけてその感情を伝えようよ」

「ぐすっ、うん。絶対にユウリ君を見つけて、大好きって伝える!」


 雅と皐月がそんなやり取りをしている間、部屋の外ではクレイが慶太を訪ねていた。


「やあ、慶太」

「クレイ?どうしてここに?」

「実は君たちにとても良い報告があるんだ」


 そう言ってクレイは、慶太にユウリ捜索隊の事を伝えたのだった。

最後の方は皐月がかなり出てきました。自分で書いててビックリしました。。

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