奈落の底
今回は少し短いです・・・。
周りが薄暗く、とても静かな所で、うつ伏せに倒れていたユウリは目を覚ました。そして、ユウリの意識は少しずつはっきりとしていった。
「俺は・・・・・・そうか、落ちたんだっけ?」
ユウリはそう言って、上を見上げた。しかし、頭上は真っ暗で何も見えなかった。
「・・・・・・マジか。俺、よく生きてるな。ここ何階層だよ」
何故、ユウリが落ちても生きているか。それは、落ちた後、ユウリは咄嗟に壁を使い、落下速度を減速させたのだ。だが、死にはしなかったものの、ユウリの身体はかなりボロボロで身体中が痛かった。
しかし、ダンジョンはそんなユウリを休ませてはくれなかった。だんだんとこちらに唸り声のようなものが近づいてきた。ユウリは唸り声のする方へ向くと、三体のハウンドウルフがいた。
「・・・・・・今度は三体かよ。しかも一人で」
ユウリはボロボロの身体を起こし、腰から剣を抜いた。ハウンドウルフたちはユウリを見るを、すぐに襲いかかってきた。ユウリは一体目の攻撃を左に跳び、回避した。
「はあっ!」
ユウリは回避した後、二体目のハウンドウルフに向かって勢いよく斬りかかった。ハウンドウルフはユウリの切り替えしに反応できずに、肉を深々と斬られた。そして、ユウリはそのまま剣を右に振ると、飛び込んできた三体目のハウンドウルフを斬った。だが、ユウリは二体のハウンドウルフを倒すのに気を取られて、もう一体のハウンドウルフの攻撃に気付けなかった。
「ーーぐっ!あがっ!」
ユウリはハウンドウルフに左肩を噛まれた。ハウンドウルフの牙がユウリの左肩に刺さり、激痛が走った。しかし、ユウリは激痛に耐えて、噛まれた状態のままハウンドウルフを剣で刺した。
「はあ、はあ」
そして、剣を抜くとハウンドウルフはユウリの左肩を離し、力なく倒れた。
「はあ、はあ・・・・・・痛ぅ」
ユウリは噛まれた左肩を見ると出血していて、左手を伝いながら地面に血が落ちていた。止血しようとしたが何もなかったので、ユウリは仕方なく服の一部を千切り、千切った布を傷口に巻き付け応急処置をした。
「・・・・・・ここにいても埒が明かないし、進むしかないか」
そう言うと、ユウリはハウンドウルフたちが来た方向へ進み始めた。
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ユウリが道を進んでいくと、上から殺気を感じた。ユウリが上を向くと、そこには何もいなかったが、何かが迫ってくる気配がしたので飛び退いた。
すると、先程までユウリがいた場所に何かが突っ込んできて、土煙を巻き上げた。
「・・・・・・一体何だ?」
土煙から出てきたのはユウリよりも少し大きいムカデだった。ムカデはユウリに向かって液体を吐き出した。ユウリはその攻撃を上手く避けた。
「危ねえ~。・・・・・・うわっ!?」
ユウリが驚いていたのは、ムカデの吐き出した液体が岩を溶かした事だ。ムカデが吐き出した強力な酸で、一発でも食らえば一溜まりもないだろう。
ユウリはムカデに対して反撃しようと剣を構えると、ムカデの姿がだんだんと消えていった。
「ーーなっ!?消えた!?・・・・・・まさか、透明化か」
魔物は普通の生き物とは少し違い、魔力を持っており魔法も使える。そして、強ければ強いほど、魔力と魔法も強くのだ。
ムカデが使った魔法は《インヴィジブル》といって、一定時間だけ自分の姿を消す魔法だ。
ユウリが自分の周りを警戒していると、後ろから突っ込みながら姿を現した。ユウリは後ろから攻撃してくると予測していたので、余裕で躱しながらムカデに反撃をした。
「くそっ!硬いな・・・」
ムカデの装甲が思ったよりも硬く、剣の刃が通らなかった。
「・・・・・・それなら、これはどうだ!」
刃が通らないと分かると、ユウリは自分の剣に魔力を流し始めた。そして、もう一度ユウリはムカデに斬りかかった。すると、今度はムカデの装甲を切り裂いた。
斬られたムカデは悲鳴を上げて、ユウリに酸を吐いた。だが、その攻撃は当たらず、ユウリはムカデに対して一撃、もう一撃と二連撃を食らわせた。ユウリの二連撃で、ムカデは横真っ二つに切れ倒れた。
しかし何故、ユウリは剣に魔力を流したのか。それは、戦闘訓練の時にラグドに教わったからである。
武器に魔力を流すと、その武器の特性を引き上げる事ができるのだ。剣だったら斬撃、メイスなどだったら威力、盾だったら防御力だ。だから、ユウリはムカデの硬い装甲を斬ることができたのだ。他にも魔力を流して、各属性の魔法を使うこともある。
「・・・・・・やっと倒せた」
ユウリは近くにあった岩に座り、戦い疲れた身体を少し休めた。ユウリは休んでいる間に、千切った布で剣に付いた血を落とすなど、剣の手入れをした。
「さてと。それじゃあ、行きますか」
ユウリは手入れした剣を鞘に納め、腰に着け直した。そして、重い腰を上げて、ダンジョンのさらに奥へと進んでいった。
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