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訓練と姫君

 ユウリたちが召喚されて二日目


「・・・・・・んん、ふぁあ」

「おはよう、ユウリ」


 ユウリが目を覚ますと、先に起きていた慶太が挨拶をしてきた。ユウリは慶太に挨拶を返した後、顔を洗い、着替えをして食堂に向かった。


 食堂へ着くとクラスメイトたちがそれぞれのグループに分かれて食事をしていた。その中には雅と皐月の姿もあった。


「・・・・・・ん?あっ!ユウリ君、慶太君、こっちこっち!」

「み、雅ちゃん、声が大きいよ」


 食堂に着いたユウリたちを見つけた雅たちが、大きく手を振って呼んだ。そのせいで注目されたユウリたちは少し居心地が悪かった。


「雅、声がでかい」

「ユウリ、もう少しオブラートに包もうよ・・・・・・」

「ははは、ごめんね」


 ユウリたちは雅と皐月の反対側に座って、食事を取ることにした。二人は食べ終えていたようで、話をしていた。


「ねえ、この後の訓練って何するんだろう?」

「う~ん、なんだろう?」


 二人がそんな話をしていると、食堂に騎士団長であるラグドが入ってきた。すると、ラグドはクラスメイトたちを見渡して、人数を数えた。


「・・・・・・全員いるな。・・・召喚者諸君に聞いてほしい。この後、魔法訓練や戦闘訓練を始めたい。食事を済ませたら、訓練場まで来てくれ」

「は、はい!分かりました!」


 和人が返事をすると、ラグドは頷いて、来た道を戻っていった。ラグドが姿を消すと、クラスメイトたちが各々騒ぎ始めた。


「うおお!魔法だってよ!マジか!」

「もしかしたら、俺が最強だったり・・・・・・」

「どんな魔法が使えるんだろ!やっぱりゲームみたいなのかな!?」


 クラスメイトたちは早く魔法が使いたいのか、すぐに食事を済ませた。ユウリたちもみんなに遅れることはできないので、仕方なく食事を切り上げた。


 食事を終え、訓練場へ行くと、そこにはラグドともう一人の男がいた。その男はレスト・ファイニスといい、このルーリアン王国で一番の魔法師だ。そして、レストが、ユウリたちを見て説明を始めた。


「これから魔法の訓練を始めたいと思う。まず、魔法を使う為に必要なものは何か?・・・それは魔力だ。魔法を使う際には、必ず魔力を消費する。そして、次に必要なものは何だと思う?・・・・・・そこの君」

「え、えっと・・・・・・」


 男子生徒の永田は、急に指名されたことに驚いてタジタジだ。


「正解は、想像力だ。使う魔法がどんなものか想像できるだけで、使うタイミングなどが分かるものだ」


 レストのこの説明に、ユウリは「なるほど・・・・・・」と呟きながら納得していた。確かに、その魔法のことを知っているだけで使い勝手が違うだろう。


「では、実際に私が使ってみようか」


 そう言って、レストは手を前に出した。


「では、行くぞ。・・・・・・《フレア・ショット》」


 レストは右手を前に出した。すると、レストの手から火球が出てきて、前に放たれた。これは《フレア・ショット》といって、初級魔法では代表的な魔法だ。


 魔法には七つの属性があり、炎・水・風・土・光・闇・無である。そして、そこから派生として様々な魔法がある。さらに、属性の他に、初級魔法、中級魔法、上級魔法、帝級魔法、神級魔法と段階がある。だが、神級魔法を使える者はごく僅かである。それほど、神級魔法は強すぎてしまうのだ。そして、例外でオリジナル魔法がある。オリジナル魔法とは、自ら完成させた魔法である。オリジナル魔法は創った本人しか使えないが、本人が継承すればその人も使えるのだ。現在の他の魔法も元はオリジナル魔法だったのだ。


 因みに、レストは神級魔法もオリジナル魔法も使えるのだ。


「まあ、君たちにはまず、さっきのと同じ初級魔法を教えていこうと思う」


 そう言って、レストの魔法訓練が始まった。最初はイメージしやすいように、先程レストが使っていた《フレア・ショット》を練習することになった。


 実際に魔法を使おうとすると、身体の中に燃料みたいな感じがあることに気付いた。それが魔力だ。魔力量は人それぞれだ。ユウリと慶太、雅はそこそこ多く、意外にも皐月がかなりの魔力量があり、魔法の才能があった。





~~~~~~~~~~~~~~~~~





 魔法訓練を始めて三時間が経過した。


 午前中は魔法訓練で終わり、昼食を取った後、武器を使っての戦闘訓練が始まった。この戦闘訓練はラグドが担当だ。


「今から君たちには、自分に合った武器を選んでもらう」


 そう言われると、各々が訓練場に置いてある武器を選び始めた。


「ユウリはどの武器にするの?」

「う~ん、そうだな。・・・・・・俺はこれかな」

「・・・・・・僕もこれかな」


 クラスメイトたちが自分の好きな武器を選ぶ中、ユウリと慶太は片手剣を選んだ。


「ユウリ君たちは決まった?」

「二人とも剣なんだね」


 話しかけてきた雅と皐月の手には、短剣三本と杖が握られていた。雅は短剣で、機動性を重視したらしい。皐月は魔法が得意ということから、より魔法を使いやすくするために杖にしたそうだ。


 ラグドは、それぞれ武器を手にいたことを確認した。


「・・・・・・よし。それでは、最初はそれぞれの武器に慣れてもらう為に素振りをしてもらう」

「「「はい!」」」


ユウリの片手剣は少し重かったが、本人的には丁度良い重さだった。剣を軽く振ると、手に馴染む感じがした。慶太もユウリと同じくらいの重さの剣だが、しっかりと振れていた。


 そんな中、和馬たちの集団は盛り上がっていた。


「うわ、やべぇ!和馬マジ、勇者みたいだわ!」

「和人格好いい!」

「さすが、和人だな!」

「おお!なかなかいいじゃないか」


 和馬はみんなに褒められ、少し照れくさそうだったが楽しそうでもあった。そしてその後、素振りを続けると今日の訓練は終わった。



~~~~~~~~~~~~~~~~~




 ユウリは訓練が終わると、汗を流して夕食を取った。そして、部屋に戻ったユウリは疲れていたが、寝る気にはならなかった。そこでユウリは外に出ようとした。


「・・・・・・ユウリ?どこ行くの、こんな時間に?」

「ん?ああ、眠れないから少し外の空気を吸いにな」

「・・・・・・まったく。僕はもう寝るけど、ユウリも早く戻ってくるんだよ。明日もあるんだから」

「分かってるって」


 そう言って、ユウリは部屋を出て中庭に向かった。


 ユウリが中庭を歩いていると、花畑の前にある椅子に座っている少女に気付いた。少女は優しい笑みを浮かべ、花畑を見つめていた。すると少女は、ユウリの足音に気付いて、その綺麗な顔でこちらを見た。


「あなたは一体・・・・・・」

「・・・・・・ああ、すまん。俺は久世ユウリだ。昨日ここに召喚された――」

「すみません、召喚者様でしたか。・・・・・・立っているのもなんですから、こちらへどうぞ」


 少女はそう言って、ユウリに自分を隣を勧めた。ユウリは少女の隣へ座り、尋ねた。


「君の名前は?ここで何をしていたんだ?」

「・・・・・・私の名前はアリサ・H・ルーリアンです。このルーリアン王国の国王、ブライド・H・ルーリアンの娘です」

「・・・・・・ってことは王女様!?」

「っと言っても、王の継承は兄であるクレイ・H・ルーリアンですが」

「じゃあ、もしかしてクレイの妹?」

「はい。・・・・・・あの?兄と知り合いだったのですか?」

「ああ、まあな」


 実は昨日、ユウリはクレイとたまたま会ったのだ。最初はクレイのことは知らず、話していた。クレイはユウリたちと同じ17歳らしく、話していると意外にもユウリとクレイは相性が良かったので、すぐに仲良くなれた。


 そして、アリサはやはりクレイの妹のようで、あっさりとユウリと仲良くなれた。すると、アリサはユウリを見て少し笑った。


「・・・・・・何だよ?」

「いえ、なんと言いますか。ユウリさんは私が王族だと知っても、そんな風に接してくれるのですね」

「まあ、クレイともこんな感じだったしな・・・・・・」


 ユリがそんな風に言うと、アリサはモジモジしながらユウリを見ていた。それもその筈だ。これまで家族以外には、たとえ自分より歳上だとしても敬語を使われたりして距離感があった。しかし、ユウリにはそれがない。


「・・・・・・そろそろ戻ったほうがいいな」

「そうですね」


 そうして、ユウリとアリサは椅子から立ち、城に戻った。そして、アリサは別れ際にユウリを呼び止めた。


「あ、あの!ユウリさん!」

「ん?どうした、アリサ?」

「その・・・・・・また、明日もあの場所で会えますか?」

「・・・・・・まあ、大丈夫だけど」


 すると、アリサは嬉しそうな顔で笑った。


「あ、ありがとうございます。・・・・・・では、お休みなさい。ユウリさん」

「お休み、アリサ」


 その後、ユウリは自室に戻り、眠りについた。

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