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ルーリアン王国

 教室ではないどこかへ連れてこられたクラスメイトたちが戸惑っていると、一人の男子生徒が口を開いた。


「みんな、落ち着くんだ。ここが教室でないことは明白だ。もしかしたら、日本である可能性も薄い。日本にはこんなレンガでできた建物はあまりないからね」


 その男子生徒は宮間和人といい、クラスの中ではトップカーストの頂点である。容姿は誰もがイケメンと口をそろえて言うだろう。なので、女子生徒からも人気でクラスメイトからも人望が厚い。


 そんな彼がクラスメイトたちを落ち着かせていると、どこからか扉が開く音がした。ユウリたちは音がした方へ向くと、そこには何人かの人がいた。


 真ん中にいた人は聖職者の恰好をしていて、周りの人たちは鎧兜を着ていた。そして、聖職者の恰好をしている人がユウリたちの前に近づいてきた。


「お気分はどうですかな?召喚者の皆様方よ」


 その言葉を聞いてますます驚いた。日本語ではない言葉が、しっかりと聞き取れるのだ。しかしそんな驚きを隠して、和人は問いかけた。


「あの、ここはどこなんですか?それにあなたは一体?」

「ああ、これは失礼。私の名はクエーゼ・トルガと申します。どうぞ、クエーゼとお呼びください。そしてここは、ルーリアン王国でございます」

「ル、ルーリアン王国?」


 聖職者の恰好の男、クエーゼの答えにクラスメイトたちがまた困惑し始めた。それは仕方がない。なぜなら、地球に「ルーリアン王国」という国は存在しないからである。


「皆様が困惑するのは当然でございます。なぜならここは、皆様がいらしていた世界とは異なる世界なのですから」

「異なる……世界?」

「そうです。いうならば異世界と言うべきでしょうか」


 クエーゼの「異世界」という単語にクラスメイトの大半が興奮し始めた。「異世界」と聞くと、ゲームやマンガなどのように魔法が使えて、敵を倒して経験値を貰いレベルアップなどと想像するだろう。しかし、現実はそんなにやさしくはなかった。その証拠にクラスメイトの男子生徒がクエーゼに質問をした。


「な、なあ。異世界なら魔法はあるのか?」

「はい。魔法は存在しますし、実際に使えます」

「マジかッ!やった!……な、ならステータスはあるの?」

「ステータスですか?……すみません、ステータスとは一体なんでしょうか?」

「はあッ!?ステータスだよッ!攻撃力とか防御力とかあんだろッ!」

「……いえ、そんなものは一切ございません。あるのは、魔法と築き上げた戦闘技術のみです」

「う、嘘だろ……」


 もう一度言おう。現実はそんなにやさしくないのだ。あるのは、魔法と今まで積み上げた戦闘技術のみ。ステータスという都合のいいものは存在しない。つまり、強くなるのも弱いままも全て自分次第ということだ。


 すると、和人が本題を切り出した。


「話を戻しましょう、クエーゼさん。一体俺たちは何の目的でここに呼ばれたのですか?」

「……ここに呼ばせてもらった目的は、この世界に終焉をもたらす邪神を討ってほしいのでございます」

「邪神、ですか?……その邪神ってのはどこにいるんですか?」

「邪神は、六個あるダンジョンをクリアしていただくと現れる、塔の中にいるそうです」


 クエーゼの言う邪神とは、この世界に混乱や厄災を引き起こし、終焉をもたらすものだ。そして、その邪神を討つためには異世界から召喚されし者が必要であるとの事だった。


 だが、ユウリたちには一つ疑問があった。その事を慶太が切り出した。


「あ、あの?……僕たちは元の世界には戻れたりってしますか?」

「た、確かに!俺たちを元の世界に戻せるのか?」

「それに関しては、邪神を討伐すれば、その方法が分かるとの事です」

「じゃあ、その邪神とやらをぶっ倒せばいいんだろ!」


 そう言って、和人の取り巻きの秋原桐矢が右手で作ったグーを左手に当てた。その桐矢の言動にクラスメイトたちが感化され、先程までの困惑などはなくなった。


「……それでは皆様。一通りの内容を説明をお伝えしましたので、国王の元へとご案内致します」

「……分かりました。お願いします」


 ユウリたちはクエーゼの案内で国王の元へ向かった。


 ユウリたちがいた地下から地上へ上がり、国王の元へ向かっている廊下の道中でユウリたちは外を見た。そこにはビルなどはなく、活気がある市場が広がっていた。


「ねえ、ユウリ」

「ああ、マジで異世界感がすごいな……」


 ユウリたちはその異世界という存在に圧倒されながら、国王の元へと着いた。クエーゼは扉の前で止まり、大きな声で告げた。


「国王、ブライド・H・ルーリアン様!召喚者たちをお呼びしました!」


 クエーゼがそう告げると、扉が重い音をさせながら開いた。扉が開くと、そこには鎧を着た者たちが並んでいて、部屋の奥には大きな玉座があり、その玉座に国王のブライド・H・ルーリアンが座っていた。


 ユウリたちは国王の前に行くと、事前にクエーゼに言われた通りに跪いた。


「国王様、この者たちが召喚者たちでございます」

「・・・・・・ほお?お主たちが召喚者であるか。話はクエーゼから聞いている通りである。すまぬがお主たちの力を借りたい。返事を聞かせてもらえるか?」

「はい!俺たちの力でこの世界が救えるのであるのならば、お貸し致します!」


 国王の問いかけに、和人がきっちりと答えた。そして、その返事を聞いて、国王も満足気だった。


「うむ、よい返事だ。……では、堅苦しいのはこれくらいにしようぞ。どれ、お主たち。今日はだいぶ疲れたであろう。部屋はこちらで用意する。今日はゆっくりと休むがよい」

「お気遣いありがとうございます、陛下」

「よいよい」


 国王への挨拶が終わった後、ユウリたちは食事を済ませ、用意された部屋に行った。部屋は二人一組でユウリは慶太と一緒の部屋で、雅は皐月と一緒の部屋だ。


 ユウリと慶太はお互いベッドに腰を掛けて、明日のことについて話していた。


「ねえ、ユウリ。明日からの訓練、大丈夫かな?」

「お前は気を張りすぎなんだよ。もっと楽にいこうぜ」

「まったく、ユウリはマイペースだな」

「ははは。……ただ」

「ただ?」

「ただ、明日から俺たちは、重荷を背負うんだなって……」


 ユウリの言葉に、慶太は少し表情が硬くなる。


 そう、明日から武器を持ち、魔法を使い、世界を救う為の訓練が始まるのだ。それで、プレッシャーを感じない方がおかしいのだ。


 ユウリはそんな慶太の様子を見て、頭を掻いた。


「……ああ、もう!こういう暗いのは無しだ!俺はもう寝るわ」

「ユウリ……。うん、そうだね。おやすみ」

「おう」


 ユウリたちはお互い挨拶を済ませると、疲れていたのかすぐに眠りについた。こうして異世界に召喚されての一日目が終わった。

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