案内人と樹海の住人
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翌日、ユウリたちは少し遅くお昼前に起きた。昨日の疲れが溜まったのだろう。
「・・・んん」
ユウリは起きると、身体を伸ばした。
横を見ると、隣でフェルカがユウリに抱きつきながら気持ちよさそうに寝ていた。だが、そろそろ部屋を出る時間なので、ユウリはフェルカをゆすって起こした。
「おい、フェルカ。起きろ、そろそろ行くぞ」
「・・・んん~。おはよう、ユウリ」
「俺は先に下で待ってるぞ」
フェルカを起こしたユウリは、一階に下りてロビーでフェルカが来るのを待った。
それから少し経つと、着替え終えたフェルカが下りてきた。
「お待たせ、ユウリ」
「よし、行くか」
宿屋を出たユウリたちは、シュペルヘイムについて聞くためにギルドに向かった。そこで分かった。アルケイムは商業寄りの街だから、ギルドはリアルスよりも小さかった。
ユウリたちはギルドに入ると、受付嬢にシュペルヘイムについて聞いた。
「シュペルヘイムはアルケイムを北に進んでいくとあります。ですが、皆さんシュペルヘイムを避けて通りますね」
「他には何か情報は?」
「あとはダンジョンの一つがある事しか・・・・・・」
どうやらシュペルヘイムは魔物が多いらしく、あまり近づかないそうだ。
「もしシュペルヘイムに行くのでしたら、北門から帰る方に近くまで乗せて行ってもらってはいかがでしょうか?」
「・・・・・・確かにな」
受付嬢が言うには、北門には商人の馬車が集まっているので乗せて行ってもらえるかもしれないらしい。その事を聞いたユウリたちはギルドを出ると、北門を目指した。
~~~~~~~~~~~~~~~~~
ユウリたちが北門に着くと、馬車が数台あった。ユウリたちが帰る馬車を探しに行こうとすると、一人の商人が声をかけてきた。
それは、昨日ユウリが助けた商人の男性だった。
「いや~、昨日は本当にありがとうございました。私の名前はビーダといいます」
「俺はユウリだ。久世ユウリ」
「私はフェルカです」
「ん?ユウリさんはもしや貴族の方ですか?それとも、どこかの宗教を?」
ビーダの質問にユウリは首を傾げた。
「ビーダさん、ユウリは貴族じゃないし宗教はしてないけど姓持ちなんですよ」
「ほう、なんと珍しい」
やはり疑問に思い首を傾げていると、フェルカが説明をしてくれた。
この世界では大体の人は名前だけで、姓を持つ人は貴族か宗教団体の幹部だけらしい。
「なるほど。といか何でビーダさんはここに?」
「・・・・・・そうです!ユウリさん、私は昨日のお礼をしに来たんですよ!」
「お礼?」
「はい!」
ユウリは「お礼はいらない」と言おうと思ったが、ある事を思い出した。
「なあ、ビーダさんって馬車持ってるよな?」
「はい、もちろん。私は商人ですから」
「なら、今から俺たちをシュペルヘイムの近くまで乗せて行ってほしいんだ」
「・・・・・・シュペルヘイムですか?」
ビーダは少し悩む様子を見せたが、どうやら決心がついたようだ。
「分かりました。受けた恩は必ず返す。それが商人というものですしね」
「ありがとう、ビーダさん」
そう言うと、ビーダはすぐに馬車を出す準備を始めてくれた。そして、ビーダの準備が終わるとユウリたちは馬車に乗り込んだ。
ビーダはユウリたちが乗り込んだ事を確認すると、馬車を出してアルケイムを出発した。
ユウリは馬車に乗っている間に、ビーダにシュペルヘイムの事を聞いていた。
「なあ、シュペルヘイムってどんなところなんだ?」
「シュペルヘイムは木々に覆われていて、周りの森には魔物が多く住み着いていると聞きます。まあ、そのせいで皆そこを避けて通っているのですがね」
シュペルヘイムは危険が多いので、誰も寄り付かない。そのせいで、シュペルヘイムの情報はなかなか入らなかった。
ユウリたちがアルケイムを出発してから一時間ほど経つと、前方に不自然に大きい森が見えてきた。
「あれがシュペルヘイム?」
「いえ、シュペルヘイムはあの森の中です」
フェルカの質問に答えたビーダは、馬車を森の目の前で止めた。
「これ以上はさすがに私も通れません」
「・・・・・・分かった。ここまでありがとうな」
「いえいえ。ユウリさんたちもお気をつけて」
ユウリたちは馬車から下り、ここまで連れてきてくれたビーダにお礼を言った。
ビーダは仕事があるので、別の街に馬車を走らせた。ユウリたちはそれを見送ると、シュペルヘイムに向かうため森の中に入っていった。
~~~~~~~~~~~~~~~~~
「・・・・・・迷った」
「シュペルヘイムってどっちなんだろうね?」
ユウリたちが森に入って数十分。見事に迷っていた。
森の中を進んでも進んでも、シュペルヘイムに着く気がしなかった。
「ねえ、この森なんかおかしくない?」
ある異変に気が付き、切り出したのはフェルカだった。
「やっぱりフェルカもそう思うか?」
ユウリも薄々とは気付いていた。先程から同じ場所に行き来している気がしたのだ。そして、ユウリはもう一つ気付いた事があった。それは、この森に入ってから薄くだが森全体に魔力を感じている事だ。
ユウリが「もうこの木々を切り倒していけば早くね?」と思い始めると、どこからか木々がミシミシと折れていく音が聞こえた。
「なあ、フェルカ。俺嫌な予感がするんだけど」
「私も」
音はすぐ近くまできていて、ユウリたちの真横の木々からその主が出てきた。
「ユウリ、これって・・・・・・」
「く、熊ッ!?」
「グオオォォォォッ!」
熊はユウリたちを見ると、咆哮をあげて襲い掛かってきた。ユウリたちも避けてお互いの顔を見た。
「フェルカ」
「うん」
「「逃げろッ!!」」
さすがにこの狭い中では避けきる自身がないので、ユウリたちは逃げる事にした。
ユウリたちは一目散に森の中を走ったが、やはり同じ場所に戻ってきてしまった。そして、追いかけてきた熊も戻ってくると、もう逃げ場がないことにユウリたちは諦めて腰から剣を抜いた。
「もう死ぬ気でやるしかないか」
「そうだね」
そしてお互い動き始めた瞬間、熊の頭に矢が飛んできた。矢が熊の頭に刺さると、声が聞こえてきた。
「《ノイズ・エコー》」
「グ、オオ、オオォォォォッ!」
声が聞こえると、熊は苦しそうに声を荒げて森の中に走っていった。取り残されたユウリたちは何が起きたのか分からず、呆然としていた。
「何が起きたんだ?」
「あれは《ノイズ・エコー》といって、相手が嫌いな音を聞かせる干渉系魔法よ」
また声が聞こえてくると、何かが木の上から落ちてきた。その何かは上手く着地すると、頭から布のフードを取った。そして、ユウリたちが見たのは、黄色に近い緑色のミディアムヘアと特徴のある長い耳。
そう熊を追い払ったのは、樹海村シュペルヘイムの住人、エルフの少女だった。
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