出発と巻き込まれ
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宿屋で一夜を過ごしたユウリたちはロビーへ下りた。
受付をしていると、宿屋の親父がニヤついていた。
「坊主、昨夜はお楽しみだったな~」
(うわ~、マジのテンプレだよ)
ユウリは宿屋の親父の言葉に内心そう思いながらも、一応否定はしておいた。
「あのな、俺たちは昨日二つ部屋を借りただろ」
昨夜、ユウリたちは部屋を二つ借りたのだったが、そうしたらなぜかフェルカに少し不満そうな顔をされた。
フェルカとしては、一緒の部屋の方が良かったらしい。
「それじゃあ、行くか」
「うん」
宿屋を出たユウリたちは次の街を目指して、リアルスを出発した。
~~~~~~~~~~~~~~~~~
ユウリたちがリアルスを出てから二時間ほど経った。ユウリたちは少し休憩をしながら、ミーナから貰った地図で次の街の方向を調べていた。
「ねえ、ユウリ。次の街ってどこ?」
「次はアルケイムだな」
ユウリたちは一度アルケイムに寄り、シュペルヘイムまでの道を聞く事にした。
ユウリたちは休憩を終えると、アルケイムを目指し歩き出した。
休憩を終えてから二時間半、ようやくアルケイムに着いた。
「日が暮れる前に着いたな」
「早めに出てよかったね」
ユウリたちはアルケイムに入ると、リアルスと違った賑わいがあった。リアルスはどちらかといえば冒険者寄りな街だったが、アルケイムは商業寄りな街だった。
「とりあえず、今日はアルケイムに泊まろう」
「そうしよっか」
と言っても、ユウリもフェルカもこの街の事はよく分からないので、街の人に色々聞く事にした。
ユウリたちは果物の屋台を出していた女性に宿屋の事を聞いてみた。
「すみません、この辺に宿屋ってあったりしますか?」
「宿屋?・・・・・・それなら、そこの通りを左に曲がるとあるわよ」
「ありがとうございます」
ユウリがお礼を言うと、女性はユウリとフェルカを交互に見ていた。
「もしかして、貴方たち恋人同士かしら?」
「いや、違ーー」
「はい!そうです!」
女性の質問にユウリが否定しようとすると、フェルカがユウリの腕に抱きつきながら言葉を遮った。
フェルカは女性の象徴である部分がそこそこあるので、抱きつかれているユウリは腕にかなり当たっているそれに困惑していた。
「おい、フェルカ・・・・・・」
「いいじゃん、別に。それに私はそれでもいいし」
「あらあら、初々しいわね」
女性はユウリたちのやりとりを見て、ほっこりしていた。すると、女性は紙袋に屋台の果物をいくつか入れてフェルカに渡した。
「はい、これあげる。久しぶりに初々しいものを見せてもらったお礼よ」
「いいんですか?」
「ええ、特別よ。貴女も頑張ってね!」
「はい!」
その後、ユウリたちは女性にお礼を言って宿屋に向かった。
ユウリたちは女性に教えてもらった通りに進んでいくと、左に曲がったところに宿屋があった。ユウリたちは宿屋に入ると受付をした。
「すみません、部屋って空いてますか?」
「はい、一部屋なら空いております」
「一部屋?」
ユウリは思わずフェルカを見てしまった。それを疑問に思ったフェルカはユウリに事情を聴いた。
すると、フェルカは「私は別に大丈夫」の一点張りだったので、ユウリは仕方なく二人で一部屋を借りる事にした。
最初は不安だったが、ユウリは思いのほかくつろいでいた。
「ユウリ、この後どうする?」
「そうだな。街を回ってみるか」
ユウリたちは部屋を出て、街を見て回った。特にフェルカは、食材などを見ていた。
旅での料理はフェルカが担当する事になっているからだ。ユウリも料理はできるが、フェルカが料理だけは譲る気がないらしく料理担当になった。
「どうだった?」
「買えたよ~。この街色々売ってるから迷っちゃったよ」
買い物から戻ってきたフェルカは、そう言いながら買った食材の袋を《アイテム・ボックス》に仕舞った。
その後も街を見て回っていると、前方から誰かが大声を上げている事に気が付いた。声はだんだんとこちらへ近づいてきた。
「誰かその男を捕まえてくれッ!」
大声で叫んでいたのは商人の男性だった。どうやら、商品の確認中に泥棒にあったらしい。
その男はナイフを振り回しながら、盗んだ商品を抱えて走っていた。
「おいッ!そこのガキッ!退きやがれ、ぶっ殺すぞっ!」
「フェルカ、ちょっと下がってて」
男はユウリが退かないと分かると、勢いよくナイフで切りかかってきた。だが、ナイフはユウリには当たらなかった。
「がはッ!」
男は自分が何をされたのか分からなかった。気が付いたら地面に倒れていた。そして、地面に倒れた時の衝撃で、背中には激痛が走った。
ナイフで切りかかられたユウリはというと、無傷で少しやり切った感を出していた。
「・・・・・・ふう。意外と綺麗に決まったな」
ユウリの世界である地球では、ナイフに対する対処法はいくらでもあった。その中でユウリが選んだのは、地球ではほとんどの人が知っている柔道技。背負い投げだった。
しかし、この世界の人たちは背負い投げとういものは知らない。そんな人たちが背負い投げをされれば、自分が何をされたか分かるはずもない。
「はあ、はあ・・・・・・」
ユウリが男を捕まえているうちに、商人の男性が追いついたようだ。
フェルカは盗まれた商品を拾い、商人の男性に渡した。
「おお、ありがとう。そこの君も泥棒を捕まえてくれてありがとう」
「まあ、急に来たからついな」
商人の男性はその後もユウリにお礼を言っていると、街の警備兵が来たので男を引き渡してその場を離れた。
ユウリたちはその場を少し離れると、落ち着くために喫茶店に入った。
「ふう、疲れた」
「災難だったね。・・・・・・そういえば、さっきユウリがしたのって何?」
「ん?ああ、あれは俺の世界の武術だな。まあ、実際に使うなんて思わなかったけど・・・・・・」
実際、ユウリが暮らしていた日本では、日常で使う事はない。
「もう今日は疲れた。宿屋に帰って、風呂に入って寝よう」
「うん、そうだね。今日はいっぱい歩いたから私も疲れちゃった」
その後ユウリたちは喫茶店で夕食を取り、宿屋に戻って疲れを取る事にしたのだった。
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