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ギルド到着→クエストだ!………クエストだよね?

ゲームってマジで凄い。

普段の速度よりちょっと速く歩くイメージで緊張しながら足を動かす。すると、ぎこちない動きながらも一般人の歩く速度程度に足を動かせたのだ!感動ものだ!嬉しさのあまりに泣きそうになるよ!!

私でこの喜びなら歩けない人や義足の人なんかはきっと泣いてしまうだろう。なんせゲームの中とはいえ、地面を力強く踏み締められる感覚が足の裏から感じられるのだからさ!うん、ちょっと涙が出てきて視界が歪んだけど普通に歩けるって素晴らしい!

ログアウトしたら両親とイリアに伝えよう。ゲームの中だけど普通に歩けたって。

ありがとうってお礼も言わないとね。


普通に歩ける感動を噛み締めながら両親&イリア(の両親も含め)への感謝の言葉を考えていると目の前に目的地のギルドが見えてきた。大きく冒険者ギルドと書かれた看板だから一目でわかった。何と言いますか…………自己主張の激しい看板だから初見だと確実に目に入る。寧ろ目に入らない方が難しい。

建物自体は石造りの立派な建物だけど…………看板の飾り付けの花で縁がカラフルにされてて、扉の上にはデカデカと♡welcome♡とか書かれてて一瞬入るのを躊躇する。コレって運営側のお遊びか趣味ですか?もっと厳ついイメージしてたのに驚愕からの放心だよ!

あと感動の涙が引っ込んだよ!



「成人した人が皆の前で小学校の新入生を歓迎する為に作られたカラフルなゲートを一人だけ潜らされる気分になるよコレ」



私と同じ新規プレイヤーと思われる人達も「嘘だろ?冒険者ギルドって此処だよな!?」「これは酷いwwwww」「入るの恥ずかしい!」「マジかよ運営wwww最初からクライマックスじゃんwwww」「ウホッ、良いギルド♪」等々の声を上げて足を止めてしまう。最後の奴は違う意味で止まったけどね。



「ようこそ冒険者ギルドへ」


「えっと、初めて来たのでギルド登録をしたいのですが」


「お主、此処は初めてじゃな?なら、此方の紙にお名前と職業を記入してくれ」


「はい…………………………………書けました」


「うむ、今ギルドカードを発行してやるから待っておれ」



プレイヤー用の施設を使える様にする為には入りたくなくても入らないと駄目なので恥ずかしくなる気持ちを抑え込んで扉を潜る。中には受付のカウンターにNPCの美女と美男が3人ずつ交互に並んで座って私達プレイヤーの相手をしている。美女なら男性プレイヤー、美男なら女性プレイヤーが殺到してます。

おや、良く見ると一番端にポツンとヨボヨボなお爺ちゃんNPCが誰にも並ばれる事なく座ってお客さん待ちをしているではないか。並ぶの面倒だし、ヨボヨボなお爺ちゃんが可哀想に見えてきたし、NPCだとしても私の中のお爺ちゃんとお婆ちゃんを大切にする心が彼処に並べと訴えてくるから私はお爺ちゃんNPCの所に並んだ。

フガフガと喋る見た目70代のお爺ちゃんかと思ってたけどハッキリと喋る人だった。それと、しゃべり方はまさに年寄りって感じだけど……………声が若過ぎる。声だけなら40代くらいのバリトンボイスのイケボです。マジで良い声です。



「コレがギルドカードじゃ。無くさん様にな?無くしたら再発行に50000Zrも払わんといかんから気を付けるのじゃぞ」


「気を付けます」


「それじゃあ、右の扉から各職業ごとのギルドルームへ行ってくれ。扉を開けた者の職業のギルドルームへ自動で繋いでくれるから迷う事は無かろう」


「説明ありがとうございます」



右を向けば歩いて数歩の所に扉が5つ見える。どの扉でも良いから開けて進めば職業ごとのギルドルームにワープ的な感じで行けるみたいです。

Zrってのはゲーム内のお金の単位である。インベントリに仕舞っておくから無くすことは多分無いと思う。

それよか、お爺ちゃんに声が若過ぎると質問してみたい。



「あの、1つ質問があるのですが宜しいですか?」


「何じゃ?次の冒険者が待っておるから手短に頼むぞい」


「私の後ろ誰も居ねぇし待ってねぇよ!じゃなくてですね…………声だけ随分若くありませんか?」


「えらいストレートなパンチを返すお嬢ちゃんじゃの…………………で、声が若いじゃと?不自然かえ?」


「めっちゃ不自然です」


「そりゃあ、変装しているからの」


「変装する気合いが中途半端、出直してきて下さい。場合によっては門前払いも良いところです」


「きっつい返しじゃわい」



わざとらしくヨヨヨッと泣き真似をされるけど無視をする。本物の年寄りなお爺ちゃんならノッてあげるがコイツは駄目だ。此方のペースを崩して楽しむタイプの爺さんだ。お爺さんなんて可愛らしい生き物じゃない、次からは爺さん呼ばわりにしよう。



「声だけ若いっていう不自然さの理由がわかったので失礼します」


「えっ!ワシの正体知りたくないの!?」


「どうせ後で勝手にバラしてくると思うから」


「何故わかった!?」


「私もう移動しますね」



爺さんにもう用無いし、ギルドで必要な事を終わらせたら街の観光してみたいので行きますか。



「孫によろしくの~」


「…………はぁ?」



ギルドルームに続く扉を開けて入ると後ろから爺さんの声に思わず振り返ると、それはもう嬉しそうな表情で私に手を振って見送る。そして扉が閉まる。

あの爺さん今なんて言った?孫?まさか、あの爺さんと似たような性格の人じゃないよね?

爺さんの一言で不安になるが恐らくギルドの活用法のチュートリアル的な感じだし、進まないとギルドの使い方を知らんままだし、後で使うだろうプレイヤー用の施設も使えない縛りプレイとか無理です。


よし、爺さんの見送りの一言はひとまず置いといてテイマーのギルドルームを見渡してみる。室内には小さな受付カウンターと観葉植物、入り口付近の壁にはコルクボードに張り出されたクエストと思わしき紙、奥にはイスとテーブルのセットが2つ、奥の壁際に幾つかの本棚、カウンターの近くに扉が1つ。

簡単に室内を言葉にするのなら本棚から本を持ってきて読書しながらお茶が出来る喫茶店の店内だ。



「……………冒険者さん?テイマーの冒険者さん!?」


「え、あ、はい………テイマーの冒険者です」


「ぃよっしゃぁああああっ!漸くテイマーの冒険者さんが来たよーーーーっ!!!」



カウンターの近くにあったギルドの職員用と思われる扉が開いて出てきたのは20歳前後に見える綺麗な蒼目金髪のポニテロングのエルフのお姉さんでした。服装は淡い緑のチュートップ、同じ色のショートパンツ、白いニーハイと茶色の編み込みブーツ、金色のファーが付いたフード付き白いミリタリーコートを着てます。お胸が出てる高身長でスレンダーボディです。私の理想体型じゃないかよドチクショウ!

自分の大きくは無い胸と太ってはいないけどプニプニしてるお腹に手で触って落ち込んでいる私を発見して発狂した様な興奮状態で私の側に走ってきた。

これには落ち込んでいようとも思わず引いてしまう。



「今日から異世界の冒険者さんが沢山来るって神託あったみたいだから気合いを入れて待ってたのに誰も来なくて私淋しかったのーっ!」



神託=運営ですね。理解しました。

それより私以外に誰も来ないとかおかしくない?確かβテスターのプレイヤーと製品版の新規プレイヤーの総数が最大40000人だよ?少なくても30000人前後は入っていると思うけど………………え、誰もテイマー選んでないの?嘘でしょう?



「ま、まぁ、まだ初日ですし」


「誰も来なくて暇だから他の職業のギルドルームにこっそり覗きに行ったら冒険者さんがテイマー職をボロクソに言ってて……………グスン」


「あ~…………………私の世界だとテイマーは不人気No.1らしいです」


「不人気だとしてもここまでなんて……………………シクシク」



そりゃあねぇ、私だってまさか誰もテイマーをやってないとか思ってなかったよ。不人気でも二桁くらいはテイマーに就いていると思ってたよ?

だが、現実は非情の様です。あとテイマーを馬鹿にしたプレイヤーは盛大に死に戻れ!



ーピコーン!ー


《クエスト:ケイニーの話し相手になって!》


受けますか?  はい/いいえ



な に こ れ ?

いきなりメニュー画面と同じ画面が現れてクエスト受けろって?私まだクエストの受け方とか聞いてないよ!?ちょっ、潤んだ目で私を見ないでくれお姉さん!わかったよ!受けるから両肩に手を置いて力を込めないで!痛いから!!

ギリギリというよりミシミシと音がしてそうな両肩の痛みを耐え、はいを二回タップしてクエストを受ける。



「ギルドの説明とか含めてのお話で良いから話し相手になってくれてアリガトー!」


「駄目だこの人、まだ初日なのに心が折れかかってるよ」


「だって、淋しかったんだもん」



つーか…………本当にNPC?このお姉さんといい、さっきの爺さんといい、やけにAIレベル高くないですか?人間と変わらん受け答えとか最近の技術って凄いね!これが現実だったらこのNPCが本物の人間ですって言っても怪しまれないレベルだよ。



「コホン、えっと…………ようそこ冒険者さん!私はエルフのケイニー、このテイマー職のギルドルームの担当をしてます。面倒なので以降は此処をテイマーズギルドと言って下さい」


「ぶっちゃけた」


「他も似たような言い方してるよ?」


「そっすか」


「取り敢えずギルドカードを出してもらって良い?一応、職業ごとのギルドルームでも初回は確認するって決まってるから」


「コレで良いですか?」


「良いよ良いよ。ユヅキちゃんね、今日からよろしくね後輩ちゃん♪」


「…………え」



なんと、このケイニーさんは私と同じテイマーだったみたいです。私を後輩呼ばわりするのは納得。

NPCだとしてもテイマー職の先輩ならギルドの説明を聞いた後でテイマーについて聞こう。



「ギルドでクエストを受ける場合はギルドルームでしか受けられません。ですがクエストをこなして達成報告するのであれば入り口の受付で済ませられます。勿論、ギルドルームの担当に報告しに来てくれても構いません。ユヅキちゃんなら私はいつでも両手を広げて待ってるよ!」


「続けて下さい」


「いやん、クール♪」


「(このNPCのキャラがブレ過ぎてどれが本来の性格かわからない!)」


「ギルドにはランクがありまして、一定数のクエストや貢献度でランクアップしますよ。このランクアップはギルドランクが5の倍数ごとにランクアップクエストが発生します。基本的にランクアップクエストはテイムしたモンスターや召喚モンスターを除いてソロでクリアしてもらいます。それ以外でパーティを組んでましたら強制的にパーティ解除されますので気を付けて下さい。また、自分の職業以外のギルドルームに入室が出来てもクエストは受けられません」



成る程、他にもアイテムとお金を預けるのはギルドルームだけで建物の入り口の受付では出来ない。ランクが上がると預けられる金額とアイテムの量が増える。職業によっては専用アイテムも買える様になる。このテイマーズギルドだとモンスターを預ける事も出来る……………等の事を説明してもらった。



「ところで、ユヅキちゃんは錬金術のスキル持ってる?」


「錬金術?錬金術スキルなら持ってますよ」


「うんうん、持ってるなら問題は無さそうね」


「錬金術が無いと何か問題が?」


「大抵のモンスターは普通の回復魔法やポーションで回復は出来るけど、一部の、アンデット系モンスターとかだと通常の回復は逆にダメージを与えてしまうから回復出来ないの」


「マジか」


「マジよ、自然回復以外でアンデット系モンスターの回復には逆に毒等の継続ダメージによる回復かアンデットヒールっていう闇魔法が必要だからアンデット系モンスターをテイムする時は気を付けて」


「はい、気を付けます」



これ知らなかったらアンデット系をテイムした後の戦闘でテンパってただろう。ありがとうケイニーさん。

はぇ?錬金術初心者セットを手に入れたらケイニーさん直伝の初級レシピをくれるって?嬉しいですけど売ってる場所を知りません。



「今すぐ欲しいなら私のお爺ちゃんが売ってくれるよ!」


「おじい………………………はっ!あ、あの爺さんかぁぁぁああああっ!!」


「ワシの事を呼んだか?」


「あ、お爺ちゃん!」


「爺さ……………いや、あんた誰!?」


「さっきの受付で応対したジジイじゃよ」


「どっからどう見ても30代のイケオジにしか見えないんですけど!?」



最初にケイニーさんが現れた職員用の扉から爺さん、いやイケメンなオヤジが現れた。声は爺さんだった時のままだけど姿がケイニーさんを男性にして30代後半になったイケメンオヤジにしか見えない爺さんに私は開いた口が塞がらない。爺さんとケイニーさんが並んだら親子に見える。とても祖父と孫には見えないぞ。長寿族って人間の老化速度と比較出来ないから外見で実年齢判断の難易度がルナティック過ぎる!


そういえば、話し相手するっていうクエストは相手が満足するまで?それとも一定時間が過ぎるまで?

どっちにしても私のメンタルライフが尽きそうです。主に爺さんのせいでな!

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