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若様何を言っているのですか!!

作者: 雨野知晴

諏王一輝に仕える諏杜誠司は生徒会総会にて主である諏王一輝が婚約者である輝王美春との婚約破棄を告げ始めた。

「若様何を言っているのですか!!」

「美春、お前との婚約は破棄させてもらう」

「若様何を言っているのですか!!」

「わかりました」

いきなりどうしてこうなった!!!


時をさかのぼること半年前…

喜劇はここから始まっていたのかもしれない…

桜が咲き誇る4月、ここ諏王学園高等部にも新入生が入ってくる。

この学校は中高一貫校で基本的に教師、生徒ともにどこかしらの財閥、派閥、政治家等の関係者が多い。

悪く言えば中小企業の社長クラスの娘ではかすむほどに、そんなの中の一人で高等部からの入学で嵐を呼ぶ者がいた。

日崎優紀それが彼女の名前だ。

彼女は入学当初から庇護欲の誘われる言動等を駆使して瞬く間にこの学園の男子を虜にした…

それは、私、諏杜誠司の主である諏王一輝も例外ではなかった…

諏王家は古くを遡れば天皇家の宮様からの血筋で財界でも幅を利かせこの学園の経営者である。

そんな諏王家に古くから仕える諏杜家もまた古い血筋ではあるが。

諏王一輝は3年でこの学園の生徒会長でもある。

そんな彼が日崎女子が入学して一か月、彼女にに現を抜かすようになってこの生徒会室での仕事は若様の執事である私と若様の婚約者である輝王美春お嬢様の二人である。


「ふぅ…」

私は今の悲惨な生徒会室の現状を眺めため息が出た。

「あら、珍しいわね、諏杜

あなたの口からため息が出るなんて」

そう茶化すような、普段の彼女からは珍しい一言が出た。

「お戯れを輝王お嬢様…

しかし、若様や他の家のご子息様があまりのふがいなさに少々嘆いていたところです」

輝王美春お嬢様もまた古くから代々から続く血筋であり諏王家に並ぶ財力のお家で凛とした姿のお嬢様である。

「仕方がないわ、皆あの子にお熱ですもの」

そういって、彼女はどうでもよさそうに答えた。

そう、現在この生徒会室には二人しかいないのだ。

この生徒会には会長の若様、副会長の輝王お嬢様、書記の西ノ宮様、生徒会顧問の宮藤様、実行委員長の源様そして庶務の私6人が作業をしておらなければならず彼らの仕事もまた現を抜かしている代わりに二人で処理をしているのが現状で現在6時30分針が回ったところである。

「輝王お嬢様、ある程度のところで切り上げてご帰宅を

お嬢様のお帰りが遅くなったとなれば輝王家のご頭首様がご心配になるかと」

そういって、日暮れの遅い5月といえど彼女に帰宅を勧めた。

「ねえ、誠司

昔みたいに名前で呼んでくれないのね」

お嬢様の顔は少し寂しそうに問いかけてきた。

そう、お嬢様と若様と私は幼馴染だ。

昔は子供だったこともあり父は良い顔をしていなかったが輝王のご頭首様と諏王のご頭首様の寛大な扱いによりよくしてくださっていた。

しかし今は諏王家の執事として教育を受けその立場がある。

「お嬢様は若様の婚約者でございます。

のちの、諏王家の奥様となられる立場でございます。

その方を名前で呼ぶとあれば諏杜家の者として許されるものではございません」

「…そう、悪かったわね。

意地悪を言ってしまって」

そういって、お嬢様はいつも道理の凛とした佇まいに戻った。

「それよりも、諏杜

諏王のご頭首様は現状のことをどのようにお考えで」

そういって、お嬢様は生徒会の副会長としての考えを聞いてきた。

「現状をご頭首様にご報告したところ

『しばらくは好きにさせおけ、輝王家のご令嬢が聞きたい事があるのであればこちらから行こう』

とのご報告を受けたまっております。

いかがいたしましょうか。

明日から連休でございます。

こちらからご報告も受けたわまりますが」

「いいわ、こちらから連絡をするから。

諏杜、うちに連絡をして。

そろそろ、お父様も心配するから帰ります」

「畏まりました」

時計を見たら7時を回ろうとしている。

すぐさま、私はお嬢様の帰宅の準備に取り掛かった。

お嬢様もまた帰宅の準備をしようとしてふと何を思ったのか変なことを問いかけてきた。

「あ、そうだ。

諏杜、あなたはどうして彼女に誘惑されても大丈夫なのかしら?」

と、問いかけてきて私は

「さぁ」

と曖昧に返しておいた。


あの後、私の権限の中でできる限りの仕事をこなし帰宅の一路についたのは10時を回る前だった。

帰ったらご頭首様から普段離れることのない父が珍しく家におり、玄関で私を呼び止めた。

「誠司、ご頭首様がお呼びだ。

そのままでいいからすぐさまご頭首様の部屋に来るように」

「わかりました。父上」

そう父に言われ本邸に移動した。

そして、本邸で出迎えてくれたのは

「「誠司だ~」」

と若様の8つ下である双子の椛お嬢様と駿坊ちゃまが飛び込んできた。

「椛様、駿様、人にいきなり飛びついてきてはなりませんよ」

と私は軽くたしなめておいた。

「「は~い」」

と二人は元気な声で返してくれた。

「こら!誠司」

父はその言葉に私をたしなめようとしたところで

「はっはっは、誠司は間違った事は言ってない。

守よ、叱ることもあるまい」

とご頭首様が現れた。

「椛、駿、よいこは寝る時間だ。

そろそろ寝なさい」

「「え~、誠司ともっと話したい~」」

「誠司とは少し話したいことがあるからね。

また今度、ゆっくりと話しなさい」

「「は~い」」

と双子はしぶしぶながら私から手を放し離れていった。

「「誠司~、今度は遊んでね~」」

と言って部屋に戻っていった。

「さて、守。

誠司を呼んできてくれてありがとう。

守は部屋の外で待っていてくれ、誠司は私の部屋に来なさい」

「「は、ご頭首様」」

そういって父は部屋の前に立ち

私は部屋の中に入っていった。


「さて、誠司

事態は悪い方向に向かっている。

お前はこのままどんなふうになると思う」

と鋭い視線で私に問いかけてきた。

「私は学園では基本的に若様から世話を焼かないように離れて過ごせてと若様から指示を受けているために現在の若様の細かい交友関係まではわかりません。

しかし、現在生徒会の職務を放棄し現を抜かしている現状どのような事態が起こる可能性は否定できないのが現状です」

その言葉を聞いてご頭首様は「ふぅ」とため息を漏らし

「一輝が今日、彼女を家に連れてきたよ。

椛と駿の反応はひどいものだったよ。

あの二人はああ見えて人を見る目はあるからね。

視界に入ることも嫌がったよ。

そして、一輝は私に彼女と婚約をしたいと輝王のご令嬢と婚約破棄をしたいともね。

まあ、認めるはずもないがね」

その言葉を聞いて

「それは、本当ですか」

と言ってしまった。

「ああ、しかしこれは輝王とも話し合わなくてはならないな。

誠司、しばらくは大変だろうけど生徒会の仕事はお前に任す。

一輝からはしばらく離れてくれ、そして一切手を出さないように。

今夜は以上だ。

一輝の尻拭いをさせて悪いがよろしく頼むぞ」

と頭を下げようとしたご頭首様を慌てて止めて

「ご頭首様おやめください。

諏王のご頭首様に頭を下げるようなことがあったとなれば私は父に殴られてしまいます」

ご頭首様は少し寂しそうな顔になって

「誠司君、今は一輝の父親としてその友である君に頭を下げているんだ。

私は一輝の教育を間違ってしまった。

双子が生まれてから母親が死んであの子を君にばかり任せすぎてしまった。

そこを彼女に付け込まれたのだろう。

私は家を守るために決断をしなくてはいけない。

それが、どのような決断であれ。

今日は帰りなさい、輝王からも話がしたいと言ってたからそれについて話し合わないといけないからね」

そういわれ、「失礼しました」と言って私は部屋を出るしかなかった。


今だから言うが私には前世の記憶がある。

そして、この世界が乙女ゲームに類似した世界であると思っている。

このゲームはファンの妹が私を沼にはめ込もうと半場強制的にやらせたものに起因する。

私からしたらヒロインには嫌悪感しか湧かなかった事を覚えている。

しかし、嫌々やっていたこともあり余り覚えていないのが現状だ。

10歳の頃にこのことを思い出し

こうならないように色々と手は打ってみたものの子供にできることといえば限られていた。

父上に怒られるのを分かったうえで色々とやってきた。

ライバルのヒロインである輝王お嬢様とも仲良くして性格が歪まないようにした。

モブキャラで立ち絵もない上にそこまで目立つわけでもなかったし若様に苦言をしすぎて執事から降ろされる役だから記憶が戻った頃は自分がどのような事態になってるのか混乱もした。

できたことといえば輝王お嬢様の性格が歪まないようにできたくらいか。

しかし、動きが速すぎる。

本来はヒロインは半年くらいの時間をかけて物語を進めていったような気がする。

おそらく彼女も…

想像で物事を考えるわけにはいかない。

今は生徒会の業務を滞らせないようにしよう。

そう、思って5ヶ月

生徒会の業務を必死に処理をし次の生徒会のための引き継ぎ業務をほぼ輝王お嬢様とほぼ二人で終わらせようやく引き継ぎ式の日を迎えたのだが…


「美春、お前が優紀に嫌がらせをして追い出そうとしているのはわかっている。

お前のことは見損なった。

美春、お前との婚約は破棄させてもらう。」

「若様何を言っているのですか!!」

「わかりました」

「輝王お嬢様!!!」

どうしてこうなった。

「ちなみに、一輝様にうかがわせていただきたいのですが。

私がいつ日崎様に嫌がらせを行ったのですか?」

「白々しい、始まりは5月の連休前

あの日、6時30分頃彼女は階段で突き落とされた。

あの日から彼女の周りで不審なことが起き始め

家の経営状態も急に悪化した。

証拠もある、言い逃れはできないぞ!」

あれ?

「その日はわたくしは諏王家の執事である諏杜と生徒会室にて仕事をしておりました。

彼に確認を取ってもらえればはっきりします」

そうなんだけど!

「しかし、優紀はお前を見たと言っている。

諏杜とは昔からお前は仲が良かったな。

諏杜と結託して嫌がらせをやったのだな。

諏杜、お前はクビだ。

お前は今日から俺付きから外れてもらう後は父上からの沙汰を待て」

え!

「その必要はないよ」

混乱している私を背にご頭首様が壇上に上がってこられる。

「父上!(ご頭首様!)」

「一輝、お前には失望したよ」

「父上、何を!」

「誠司には生徒会の業務を任せていた。

そして、彼女の嫌がらせに関してはすべて自作自演。

この学園には生徒の安全を守るためにわからないように防犯カメラが設置してある。

彼女の家の経営が悪くなったのは彼女の家の不正疑惑がかかっているからだ。

もう少ししたら彼女の父親は捕まるだろう。

一輝、お前とは離縁だ。

もう二度とうちの敷居を跨ぐことは許さない。

輝王のご令嬢、誠司すまなかった。

これだけ一輝を支えてくれていたのにこの馬鹿は気が付きもしなかった。

輝王のご令嬢、この馬鹿が何かした時の対価は事前に話していた通りでいいだろうか?」

ちょっと待て展開が早くて何が起きている。

対価って何?ご頭首様私何も聞いていないのだが!

「はい喜んで。

それでは、ここにて発表します。

私、輝王美春と諏王一輝はこの場で婚約破棄をいたしまして、輝王美春は諏杜誠司とこの場にて婚約をいたしたいと思います。」

は?

はーーーーー!!!!

流行りものの婚約破棄を書いてみたかった突っ込みどころは多いだろうが後悔はしてないwww

2017/10/24時点で異世界転生恋愛日刊ランキング50位に入りました。皆さんのおかげです。ありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 脇役・サブキャラの用い方が素晴らしい。一歩間違えればどろどろとした人間関係でサスペンス劇場な展開になりそうなタイミングで双子の癒しが入り、しかも彼らの性格診断ネタにより主人公の人間性が高く…
[気になる点] 諏杜誠司は諏王家の養子になってから婚約するのかな?
[気になる点] ライバルのヒロインである輝王お嬢様→ヒロインのライバルである輝王お嬢様 の間違いじゃないですかね?
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