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少年期 この世界の事 其の2

 「さて、何から話そうか。うん、ここは東の果てとも呼ばれる所だと聞く。この世界の事を簡単に話そうか。大人には面白くないかも知れないが」と話を始める。



 この世界には大きく三つの大陸が存在する。海を渡れば他にも存在するのかも知れないが、全ての海岸線から見て、島は在れど大陸は確認されて居ない。

 例えるなら歪な三つ葉の様に、北にロペ、西にレカ、東にラシアと存在し、三つの大陸は中央で繋がっている。


 この集落はラシア大陸の東の端に位置しアイゼン王国の版図である。東の海には火を吹く山を持つ島が見え、海を挟んだこの集落の近くでも温泉が涌き出る。

 

 南西に数日馬を走らせればアイゼン王都、王都から南に広大な穀倉地域が拡がり世界で一番高くドラゴンが住まうと言われるマラヤ山脈がレカ大陸境迄延びている。

 そして此処から少し北に王国から自治を認められた東部諸侯国家群、ジルの出身はこの地方で、更に北にから大陸西部にかけて大森林地域が在り獣人族の勢力圏である。


 因みに東部諸侯の一つで大森林に接するゼピュロス候が四年前獣人との争いで敗北し廃された。ここでジルとローゼに救われたのがエータである。


 ロペ大陸は大陸境の3分の1大の真円状のクレーター湖と北東、南西にそれぞれ流れ出る大河で仕切られている。耳長のエルフが多く住む肥沃な大陸で北部には氷河、中央部に幾つかの峰を持つ高地、西部には古代遺跡が多数発見されたケルト諸島群が浮かぶ。

 

 レカ大陸はマラヤ山脈西端から荒れた高地と北部砂漠を越えれば草原地帯が拡がり、西から南部に掛けて温暖な地域で魔人族の小国家群が点在する。



 この世界で人と呼ばれるのは大きく5つ。人間族、魔人族、獣人族、耳長(エルフ)族、小人(ドワーフ)族。

 魔物と違うのは大きく2つ、知恵を持ち会話が出来ると言う事と、この5族間では異種交配、つまり子供を成す事が出来る点。

 人間族は全ての大陸何処にでも生活しており、小人族は高地や山地など人口密度の少ない所に好んで生活しているが、冒険者にも小人族は多く居るので都市に出れば探さなくても目に入る程度には珍しくもない。北の森の木こりも小人族だ。

 

 今のところ、人の間では大きな戦争は起きて居ない、精々領地争いの小競り合いと言ったものだ。それよりも、活性化している魔物への対応が問題視されている。

各国のギルド間の連携は密で冒険者の育成を最優先事項とし対応に追われているのが現状だ。

 しかしながら、盗賊や奴隷狩が魔物の襲撃を隠れ蓑にして横行する事態を招いてもいる。当然、冒険者ギルドへの討伐依頼は後を絶たないのだが、実証する術がなく泣き寝入りするものも多く、正式に受注されたとしても、哀しいかな成功報酬に旨味のある件はほとんどといって無い。精々商人が金を出し合い盗賊討伐を依頼する案件ぐらいのもので、奴隷狩討伐は生き残った者が領主へ直訴し依頼が出る程度なので報酬が出ないのが実情なのだ。


 人々は生き残る為に各々が力を尽くさねばならない世界。

 力無き者は群れを形成し冒険者を歓待し集団として生き残れる環境造りに重きを置く。 

 熱心に話を聞き、観察し、出来る最大を尽くさねば「死」が側に在る。

 辺境の者は幼少の頃より良く学び、良く働く、そうして早く独り立ちせねばならぬ事を知っているから。 


 ひとしきり付いたところで、「そろそろ午後の仕事に掛かるかね」と大人達は仕事に戻る。


 子供たちは世界の広さや怖さの一端を聞き、それぞれ期待や不安を感じているようだ。

 「もっと聞きたい!」と言う子供たちに、「じゃあ、俺が冒険者をしてた若い頃の話をしてやるか」と次は昔話を始める。


 ロペ大陸のとある村で育ち、エルフに魔法を教えてもらい冒険者として旅立った事、「魔法と言うものの本質は決まった呪文を唱えて出すってもんじゃねぇ、確かに呪文を覚えて詠唱すれば唱えたモノは出せる、だが、魔法として起こす事象を理解し再現することでより強く発現出来る。水は氷になり湯にもなる。火は燃やす事を越えて鉄をも溶かす」

 「千切れた腕をくっつけたり、無くなった部位を再生したりする高位の回復魔法使いは、長ったらしい呪文詠唱より戦いの場や教会で多くの場数を経て傷口や、場合によっては死体を観察し確たる再生のイメージを経験として得た結果自分のモノにしている」

 「そういった経験を集めるのが魔法を増やすのに肝要だ、しかし、それを再現するための器は日々鍛えねば直ぐに錆び付き使い物にならなくなる」と魔法使いとしての心得を言ったかと思えば、「一番長くパーティーを組んだ時はダンジョンに……」と子供たちが好む冒険譚を披露し始める。

 ミザールは攻撃が得意な魔法使い、前衛に女エルフの魔法戦士と獣人の戦士、魔人とのハーフエルフが回復や支援を得意とする魔法使い、手先の器用なドワーフと五人を中心に臨時メンバーを招いたり、他のパーティーと連隊を組んだりして各地を転々と冒険して、時にはドラゴンと遭遇し命からがら逃走した、とか迷宮で罠に嵌められた先にお宝が有ったとか。

 子供たちは前のめりで話を聞く。

 「注意しないとならないのは呪いの魔道具だな、隷属の腕輪は本来の力の十分の一しか出せなくなる、噂じゃ奴隷狩の奴等が邪魔する遣り手に無理やり装備させた隙に仕事をするとか、あんな奴等はぶち殺してやらねぇと……おめぇらも気を付けろよ、こんな道具だけじゃなくて、もっと怖いのも在るからな。見て聞いて覚えて行け!」と釘を刺すように怖がらせたり。

 「そういや、転生者ってのもざらに居るんだぞ、大概は転生前の記憶は忘れてるんだが、たまに記憶を思い出したり、最初から覚えてたりな」

 「みざーるさま、てんせいしゃってみてわかるんですか?」

 「おぅ、能力の高い奴や突拍子もねぇ事をやる奴に多いんだが、普通は見ても判らねぇ。転生者っても何ら害は無いからな、寧ろ役に立つ事のほうが多いんだが……と、見た目での見分け方は無い。……ってのは建前で看破の魔法を使えて転生者がどういう存在なのかを知れば見分けが付くようになる。俺の場合は一緒にパーティーを組んでた獣人がそうだったからな」と。


 そう言いながらミザールが子供たちを見渡す。




「ん、8人しか子供居ねぇのに3人も居るじゃねぇか」

 

 


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