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現代山賊。  作者: 山狩楚歌
3/12

第ニ話「照覧する事」

校正は暇な時見つけてちょこちょこすることにしました。

1話分を毎日投稿は厳しいと思いましたので基本2日に1本更新する形を取りたいと思います。

ご負担お掛けしますが今後ともよろしくお願いします。


「~~じゃないかな?それでさ、明日追試起きられっかなぁ。起こしてよ浩ちゃん。浩市?」


 BANDITSの認知度に驚いた。

事件の被害をBANDITSに相談した人だけで46人ってことは、

平田さんの説明で計算すると届け者数の1000倍に、

事件パターンが5通りだからざっと9200人の同一被害者は居るということになる。

その多くはWEBMoneyの被害でスマホ決算も学生を中心に多いと言う。


宮越駅の近くに拠点らしき動きがあるらしいが、ビルなど立ち並んでないただの団地の集合地域。

なのに回りの目はザルということなのか疑問である。


 例えば、地域の回覧板や集会があったり、

失礼だが、ゴミ捨てにウルサイおばさんだって居るだろうに。

中年や学生からのユーザーをチャットだけでひたすら効率良く捌くグループが居て

その稼ぎを資金に、海外のネットカジノに投資してるなんて誰が想像出来るだろう。


「生きてますか~?浩ちゃんやめようぜ?考えるの。」


「あぁ、すまん淳二。聞いてなかったもう一回言って。」


「もう良いよ。腹減った。マック行こう。」


「すまん。」


 俺たちは陸橋をくぐり抜けマックの二階席についた。

淳二がビックマックのレタスをソファにボロボロこぼす。

マックに来るといつもそう。ソファに片足立てて食べるのを何回注意してもやめない。

それだけがこいつの欠点。


「おい淳二、足。ん?どうした?」


 何やら横目で遠くを見つめている。

まるで犬がお座りの姿勢で壁の隅を見つめいているような感じだ。

少し立つと、コーラでバーガーを流して耳打ちするかの様にこういった。


「入ってくる時、ちらっと見えたんだけど階段すぐのカウンター席のあの女。

平田さんが言ってた出会い系サイト使ってなんかチャットしてる。」


 こんなに近くに業者が居たなんて。何の業者かは知らないが、この近さに驚愕した。

もっと隠れてするのが普通じゃないのか?もう女は信用できなくなった。

向こうのJD3人組もスマホを弄ってるし出会い系サイトをやっているのかとか、

反対のテーブルのタブレットのサラリーマンも出会い系サイトをやっているのかと

疑心暗鬼するようになってしまった。



「ちょっと、浩ちゃんペンある?早くメモって!やたしはあおていましやまつに……」


淳二の目つきが鋭くカラスのような眼差しである。僕は急いでボールペンを取り出し、

ポテトの油が少し染み込んだ口拭きを広げてそのまま平仮名で書いた。


「ん?やたしはあおていましやまつに……?」



________________________________


やたしはあおていま、しやまつに、しまーはみやたまよ、あなたはら


これからふしまさんのとまうそまうてま、まちあやせてまきるら


しまよまうけんは、いちこまね………‥‥うゆこうえゆ


________________________________


「どう浩ちゃん?出来た?見せて。

これ以上は彼女が座り直して見えなくなったから読み取れなかった。」


「あの出会い系サイトやってる彼女?何が見えたの?」


「浩ちゃんはやらないもんな。フリック入力。

まが多いから間違えたかも浩ちゃんdococoのエクステリアだったよね?貸して。」


 淳二はやっぱり凄かった。何やら彼女のチャットを打つ指を凝視していたと言う。

僕はスマホを淳二に差し出し、「どうやって区別するの?指をだよ?」と繋ぎ、その後の話を聞いた。

彼女は指を打つ文字によって使い分けるそうで、上段は右手で下段は左手親指であることが見えたらしい。

打つ場所は指が伸びたり、窮屈そうになったりするので分かるという。


 淳二から前にも聞いた。

大学の講義中に斜め後ろの女の子達がヒソヒソ話をしており、

誰かの嫌みを言いながらその子にLINEしているその構図が理解出来たから、

胸の大きい子のフリック入力を盗めたそうだ。

その時は指の窮屈さと胸の付近のYシャツが歪む度合いで分かったそうだ。

結局のところ、全く陰口とは別の家族か誰かに、帰る時間や買い物とかの内容だったみたいだけど。

僕は淳二の観察眼というか、いい目を持っているというか、その技術に脱帽した。

言われればなんとなく分かっては来るけれど、

言われるまで見ようとも思わない部分を読み取る技術は僕にはなかった。


 女が動く。俺たちはコーラとバッグを持って後を追い飛び出したが、

マックを出た頃には、彼女は何処かに消え去った。


「あー。ここがわからんなぁ。”ふじさんのどうぞう”ってどこ?

お前地元なんだから分かるだろ?”ふじさんのどうぞう”で待ち合わせだとさ。」


 訂正された文を見せられ僕はピーンと思いついた。

ふじさんは昔使ったっきりだが、ふじご、ふじろくは、未だに良く使う。


「ん?商店街の不治通り3号道路だ。そこに銅像がある。

結構地元の人ではデートの待ち合わせに使ったりする。そこかな?」


「良いぞ浩ちゃん。行こう。」


 21:45俺たちはタクシーを拾ってナケナシの小銭でそこに向かった。

 タクシーの運転手は嫌な顔をしたがお構いなし。


 21:52不治通り3号道路に到着した。

 辺りを見回して銅像が見えるスターズコーヒーに入り窓際の席に座った。




「この”じょうけんはいちごね”ってなんだろう。」


「淳二が読み間違えたんじゃないか?遠目でフリックを見たんだし。そんな呼び方この地域に無いし。」




 その会話から沈黙が続いた。

女が来るまでに10分ぐらいだったが、この10分がとてつもなく緊迫感ある沈黙の10分だった。

しかし、淳二は依然としてダラケている。

クーラーが効いていないだとかブツブツ言ったり、ストローの包み紙に水を垂らして芋虫をやったりだとか。

ここ禁煙だというのにライターをカチカチ弄ってたりとか。


 今思えば、あの時淳二もこの状況に緊張していたのかもしれない。

お互いこの時だけは4次元に迷い込み、時間が少しは遅くなっていたのかもしれない。

昔の自衛団もこんな気持ちだったのだろうか。

平田さんが言うように末期の自衛団の気持ちが少しだけ分かった気がした。


「あ、来た。」


 俺たちの口が揃った。足並も揃ったかの様に二人して立ち上がってしまった。

女はあたりを見回して近くに止まっていた白のクラウンの助手席に乗り込んだ。

追わなきゃ。という気持ちとは裏腹にお互い金も無く相手は車。

追う先を見失った俺たちは、この淳二の作ったメモを握り締め帰る事にした。


 帰りに油の着いたメモをどっちが管理するかで少し揉めた。平田さんに見せるだけで見せたらただのゴミ。

ゴミを持つのがお互い嫌だったから、

初めに書いたのお前だとか、後から手直ししたのはお前だとか、本当にどうでも良いことだった。

このどうでも良い事で揉めることで物理的に女を追えなかった憤りを晴らして居たのかもしれない。


この時、俺達は自衛団から山賊に変わったかもしれないたった1ページのゴミだった。




















<淳二が訂正した文章>


_____________________

_____________________


 わ       ティ   シャツ    

(や)たしはあお(ていま)(しやまつ)に


 ジーパン    だ         ?

(しまーはみや)(たま)よ、あなたは(ら)


      じ       どうぞう  

これからふ(しま)さんの(とまうそまう)


 で       わ   で     ?

(てま)、まちあ(や)せ(てま)きる(ら)


 じょうけん      いちご

(しまよまうけん)は、(いちこま)ね


      うん

………‥‥(うゆ)こうえゆ

_____________________

_____________________

<解読文章>

私は青ティーシャツにジーパンだよ、あなたは?

これから不治3の銅像で待ち合わせ出来る?

条件は、いちごね………‥‥うん公園


最新校正:H29.07.31

サブタイトル数字表記を訂正しました。

ケータイ版だと解読メモが改行されて見にくかったのでメモの解読文章追記しました。

メモの解読書き文章もケータイ版に合わせて体裁を整えました。07.29

読みやすいように同じ話の文頭に段を付けました。07.31

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