奇跡の使者
これはシロン 悪の作戦始めましたの外伝です。本漫画はhttps://mangag.com/products/detail.php?product_id=29763
漫画ごっちゃ
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シロン外伝
第一章 奇跡のメイド
とある星の屋敷にメイドがやってきた
名前はジェミニ
ジェミニがお世話するのはその屋敷の歩けないお嬢様だった。
「メイドなんかいらない」
とお嬢様はジェミニに向かって枕を殴りつける。
枕が顔にあたったジェミニ、
だがニコニコしていた。
「何を怒ってらっしゃるのですかお嬢様?」
ジェミニが聞くとお嬢様は答えた。
「…外」
「外?」
「同じ景色なんだもん」
そうお嬢様は窓からの景色見ながらいった。
「外ですね」
ジェミニがそういうと目が光り、ベッドの天井に山や湖の景色が映された。
「ど、どうなってるの?」
お嬢様は驚いた。
「私はそういうことが出来るんです」
そうジェミニは答えた
「…でもいい」
そっぽ向くお嬢様
「何故です?」
ジェミニはお嬢様に近づく
「…足が動かないもん」
布団に隠れた足を見ながらお嬢様は言った。
「それはお嬢様が歩こうとしないだけですよ」
「違うもん。お医者さんが言ってたもん。私の足は動かないって!」
お嬢様は反発する。
「いいえ、お嬢様が歩こうとしないだけです」
とジェミニは言う。
「もういい、寝る」
お嬢様は布団をかぶる。
「はい、おやすみなさいお嬢様」
ジェミニはにこやかに笑った。
夜
「寝ないの?」
とベッドの横に立っているジェミニに言う。
「お嬢様が寝ましたら、私も寝させてもらいます」
と返答した。
「…じゃあ、歌を歌って」
そうお嬢様がいうと
「わかりました」
ジェミニは歌いだした
ジェミニの歌はお嬢様をすぐに眠らせるような心地の良い歌だった。
寝息をたてるお嬢様。
「おやすみなさいお嬢様」
ジェミニはお嬢様に対してお辞儀した。
ジェミニは顔を上げると、目が限界以上に開いた。
その目に様々な言葉や数字が並ぶ。
するとジェミニの髪が一本一本まるで蛇のように動き、宙を舞った。
「手術開始」
機械のようにしゃべるジェミニであった。
翌日
「さあ、お嬢様!歩きましょ」
満面の笑顔でお嬢様に迫るジェミニ
「だから、歩けないって」
あきれるお嬢様。
「そんなことはないです…、よっと」
ジェミニはお嬢様を掲げる
「きゃっ!」
「大丈夫ですよ!」
と満面の笑みで答えるジェミニ。
「さあ、お嬢様」
ジェミニは絨毯の床にお嬢様を下ろす
「歩き方わかんない」
「では、私が誘導しますから目を閉じてください」
「なんで?」
「そのほうが怖くないからです」
「ふーん」
お嬢様は目を閉じた
足の感触がわからず、自分が動いてるのかさえわからなかった。
「お嬢様。今、歩いてますよ」
「わからないよ」
「いいえ、歩いてますよ。目をお開きください」
お嬢様が目を開けると、そこには満面のジェミニの顔があった。
「お嬢様後ろを見てください」
満面の笑みのジェミニ。
「後ろ?後ろを見たって…」
振り返るお嬢様。
見ると自分が立っていた場所よりも遠い場所にいた。
「え?え?」
困惑するお嬢様。
「見てくださいお嬢様」
ジェミニの目が光ると部屋の空間にお嬢様が歩く姿が映し出された。
あんぐりと口を開け、自分の歩く姿を見るお嬢様。
そのままジェミニに顔を向けた。
「さあ、歩きましょ、お嬢様」
満面の笑みのジェミニ
お嬢様は片方の足を恐る恐る上げ、足を伸ばし一歩を踏みこんだ。
痛みも、違和感もなく、
足は地面の感触を脳に伝えた。
いつもは動かすことの出来ない足が、まるで魔法のように自由に動く。
お嬢様は混乱するばかり。
一歩、二歩、三歩と歩き出し、ジェミニはそれに続いて後退する。
「ほら、歩けるじゃないですか?」
とパンと両手を合わせるジェミニ。
お嬢様はただ、ただ困惑するばかり。
するとバランスを崩してじゅうたんの上に倒れてしまった。
「あらあら、どうやらまだお足がおねむだったようですね」
あわててお嬢様に駆け寄るジェミニ。
「マッサージ、しましょうね」
とお嬢様の足をもみ始めるジェミニ。
心地よいもみがお嬢様に伝わる。
「ねえ、歩けたの私?」
確認するお嬢様。
「はい、自分の足で歩けたんですよお嬢様」
満面の笑みで答える。
お嬢様は呆気顔になったが、やがてその顔は泣きべそへと変わった。
「歩ける!歩けるんだ!」
ジェミニに大喜びで飛びつくお嬢様。
「歩けるんだ。どこにでもいけて、どこでも遊べる足になったんだ!」
大はしゃぎするお嬢様
「そうですねお嬢様」
と優しい言葉で答えるジェミニ。
喜びの涙をなき散らすお嬢様を聖母のように抱くジェミニであった。
お嬢様に奇跡が起きた日から数日後の夕方。
ひさしぶりに夫婦そろって、屋敷に帰ってきたお嬢様のご両親。
屋敷の入り口に立つ二人、するとそこにお嬢様を抱きかかえたジェミニが現れた。
「さあ、お嬢様」
「うん」
不安げな顔をするお嬢様だが、ジェミニの声に勇気をもらった。
お嬢様はジェミニから飛び降り両足で絨毯の上に立った。
その姿にお嬢様の両親は驚いた。
足が動けないはずの娘がそんなことをする。
誰もが驚く光景だが、さらに驚く事がおきた。
「パパ、ママ」
なんとお嬢様が走って、両親に駆け寄っていく。
ジェミニとお嬢様以外、誰もが口をあけて驚く光景だったと後に使用人たちに語られる。
「どう?私、歩けるようになったでしょ?」
「ええっ、…すごいわねえ」
驚きを隠せないお嬢様の母親がそういった。
「全部ジェミニのおかげなんだよ」
と自慢するお嬢様。
するとその場にいた全ての者がジェミニに注目した。
だが、ジェミニは
「いえ、お嬢様の足がおねぼうだっただけです」
満面の笑みで答えた。
後日、
かかりつけの医者にお嬢様の体を調べてもらうと。
医者は奇跡が起きたと驚き説明する。
お嬢様の足を動かなくしていた原因が、
きれいさっぱりなくなっているのだ。
医者はまだ娘の足に混乱している母親に、
興奮して説明を繰り返す。
お嬢様は医者が何を言ってるわからず。
ジェミニのほうに顔を向けると笑顔になり、ジェミニもお返しとばかりに、満面の笑みになった。
これはお嬢様とジェミニの短い幸せの物語の始まりである。
読んでいただきありがとうございます。
次の更新は6月中旬ころになると思います。
それまで、皆様お待ちください