死線
(な、なんでここにいるの!?)
小鳥遊 唯依。
確かに本人はそう言った。
見間違えるはずがない。
確かにそこには唯依がいた。
『うおぉぉぉぉぉぉぉぉ!』
教室が騒がしい。
当然だ。
こんな天使が舞い降りてテンションが上がらないはずがない。
生徒達が口々に質問し始めた。
だが、
「こらお前ら、嬉しいのはわかるが授業があるんだぞ。休み時間にしろ」
先生の言葉に仕方なく皆静かになる。
「小鳥遊さん、君の席は窓側の一番前だ」
(へ……?)
「…はい!」
唯依は席を確認すると、急に嬉しそうにそう言った。
そう、唯依の席は
(俺の前!?)
唯依が席に向かう。
クラスの不満そうな雰囲気が一気に伝わってくる。
(まぁ、そうですよね)
「これにてホームルームを終わる。小鳥遊さんは知らない事ばかりだろうから、助けてやってくれ」
『はぁぁぁぁぁぁい!』
男子がうるさいくらいに返事をする。
「それでは解散」
そう言った瞬間、教室が一気にざわめき始める。
そして当然の如く、クラスの人間が唯依の席に集まろうとした。
しかし、唯依は後ろにいる俺の方を見て
「来ちゃった♪」
『……………………………………へ?』
そう言った途端、クラスが一気に無言になる。
返事に困っていると、背後からものすごい殺気を感じる。
「………………」
嫌な汗が流れ始める。
これほど人の殺気を感じたのは初めてだ。
「た、小鳥遊さ〜ん?切﨑とは一体どういう…?」
1人の男子がそう質問した。
声色は良いが、明らかに顔は笑っていない。
(頼む!旧友とか気の利いた事を)
「ん〜…運命共同隊?」
(ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!!)
それを聞いた瞬間、クラスの殺気が増した。
今にも「てめぇ、放課後、体育館裏来いや」って言われても不思議じゃない。
為す術もなくただ変な汗がダラダラ流れてる時、天からの救いが舞い降りた。
「♪」
(チャイムありがとう!)
何とか今は逃げ切る事ができ、授業が始まった。
午前の授業は終わり、昼休みに入った。
何が起こるかは大体想像がつく。
「小鳥遊さん!一緒に昼飯どう?」
「バカ、小鳥遊さんは俺と食うんだよ!」
「おバカな男子はほっといて私たちと♪」
クラス内だけかと思いきや、まさかの他のクラスから誘いに来る人間もいる。
(人気者は辛いね〜)
そう思っていると
「皆ごめんね、お昼は統夜君と」
『……………………………………』
(…お願い…そんな目で見ないで…)
てめぇ、殺す、と言わんばかりの視線が飛んでくる。
「そ、そうなんだ」
「な、なら…仕方ないな」
等と言っているが明らかに納得していない。
(そりゃ相手がよりによって俺だしね…)
あまりにも気まずくなって、2人で教室を出る。
「昼ごはん持ってきてんの?」
廊下でそう聞いた。
明らかに視線を感じるが無視である。
「うん、アリアちゃんがお弁当作ってくれたんだ〜♪」
唯依は楽しそうにそう言った。
アリアはそういうところしっかりしているように思える。
「統夜君は?」
「ん?あぁ〜俺は買いに行かなくちゃ」
「何食べるの?」
「ケバブ」
そう言ったところで、唯依の頭に?が浮かぶ。
「ケバブ?何それ?」
「美味いんだぞ〜、あ、でも女子にちょっときついかも」
「へぇ〜」
そんな会話をしながら学食へ行く。
学食に今日もケネディさんは元気そうにいた。
「イラッシャイ!イツモアリガト…ネ…」
いつものケネディさんとは少しテンションが違った。
何事かと思い、ケネディさんを見てると、その視線は唯依のほうに向かっていた。
「あぁ〜友達の…」
そう言おうとした途端
「トウヤクン!ツイニカノジョデキタネ!?」
「なッ!」
ケネディさんが大声でそう言った途端、唯依を知る生徒達の視線が一気に集まる。
それはもう今にも人を殺しそうな目だ。
「ち、違いますケネディさん…」
そう弁解しようとするも
「メデタイネ!オイワイニトマトオマケシチャウヨ!」
(人の話を聞けぇぇぇぇぇぇ!そして俺そこまでトマト好きじゃねぇよ!)
「あ、いやね、ケネディさん…」
粘ろうとするも、ケネディさんの猛攻は止まらない。
「イイカイ?トウヤクン、オトコハネ、オンナヲイチドキメタラ、イッショウアイスルコトヲチカッテ、マヨワズサッサト、ズッコンバッコンシナキャダメヨ!」
(何言ってんだこの人ッ!?)
「ズッコンバッコンエブリデイダヨ!」
(小鳥遊さんのいる前でなんて事を!)
そう思いながら唯依を見てみた。
「???」
ポカーンとしていた。
(良かった!理解できてなくて!)
とは思ったものの、そろそろホントに殺されそうなので、さっさとお金を払い、ケバブを受け取ってその場を去る。
「マタヨロシクネ!スエナガクネ!」
後ろからケネディさんの声が聞こえていた。
2人でいつも俺がぼっち飯している階段にいた。
唯依は弁当を広げて食べていた。
「まったく…」
そう言いながら飲み物を飲んでいると
「ねぇ、統夜君」
「ん?」
「ズッコンバッコンって…何?」
「ぶふぅッ!!」
豪快に飲み物を吹き出した。
「……?」
唯依が不思議そうに見ている。
「べ、別に知らなくて良いことだよ、うん」
「ふ〜ん」
適当に取り繕った結果、何か納得しない感じがしながらも、唯依はそう答えた。
いよいよケバブを食べ始めようとした時
「じ〜…」
「………」
隣から視線を感じる。
よほど気になっているのか。
流石に放っておけず
「…食べてみる?」
「良いの!?」
「うん」
ケバブを唯依に渡す。
そしてその小さな口で一口食べる。
「…どう?」
若干不安になりながら聞いてみる。
「うん!美味しい!」
「そりゃ良かった」
「でも、確かに女の子に全部はきついかな」
そう言ってケバブを返してくる。
そして俺も食べようとした。
(………あれ?)
そう思いケバブを見た。
「……………」
(これって…か、間接キスじゃないか!?)
何故もっと早くに気づかなかったのか。
いつも何かしら気づくのが遅い。
「…どしたの?」
いつまで経っても食べない俺を見て唯依が聞いてくる。
「い、いや…何でもない!」
そう言い、意を決して頬張った。
(やっちまった…間接とはいえ…)
嬉しさと少し罪悪感を抱きながらケバブを食べた。
ケバブのお礼にタコさんウインナーをもらった。
放課後、俺は決心した。
(もう視線なんか知るかぁぁぁぁ!)
そう心の中で吹っ切れながら、2人で帰路についた。
当然後ろからの視線がすごかったが…。
「つーか聞き忘れてたけど、どうやって入ったの?」
朝からすっかり聞くのを忘れていた。
「アリアちゃんがね、パソコンで何かカタカタ〜って」
「そ、そっか」
(犯罪じゃね?)
そう思いながら口には出さない。
「授業ボロボロだったな」
人の事言えないが、当てられても全然答えられてなかったのだ。
「仕方ないじゃ〜ん、学校なんて行ってなかったんだもん」
そこもアリアが何かしら細工したのだろう。
「物覚えは良いほうだから大丈夫だよ、きっと」
「そっか」
そんなこんなで救済騎士団の基地に着く。
「ただいま〜」
『おかえり〜』
唯依の言葉に全員がそう答えた。
(ホントに…仲良いな)
そう思っていると、後ろからふと声が聞こえた。
「へぇ〜、ここが〜」
「ッ!?」
咄嗟に距離を取る。
「誰だてめぇ!」
「そうですね、同類って言えばわかります?」
那央の質問に少年と思しき人物はそう答えた。
「はじめまして、裏切り者の皆さん」
今回のケネディさんの台詞の一部
トマトオマケシチャウヨ
は、さなねあ先生のアイディアです。
さなねあ先生、ありがとうございます!




