天使降臨
それはある休日の昼時であった。
ドッカーン!
っと山奥から爆発音や、木々が倒れる音がする。
しかし、警察も来なければ、誰かに見られる事もない。
そもそもそんな事が起こっている事すら、まず知る者はいない。
理由は簡単である。
そこは、結界の中なのだから。
「ぎゃぁぁぁぁぁ!!」
爆発音と共に悲鳴もあった。
俺のである。
「ちょっ!無理!」
「この程度で弱音を吐くようじゃ、何も成し遂げられんぞ!」
俺は今、人より大きな剣を持った筋肉ムキムキのマッチョメンに追われていた。
「ぎぃやぁぁぁぁぁ!」
監督が剣を振り回しながら追いかけてくる。
それを必死で避けながら逃げていた。
(これぜってー1発もらうだけでまっぷたつだぁ〜!)
「死ぬぅぅぅぅぅ!」
「お前の覚悟はそんなものか!?」
何が怖いって、監督の形相である。
目をギラギラさせている。
それはまるで人参を見つけた馬のように。
必死で逃げながら前方を見た時、何かが光った。
「…?」
次の瞬間、1つの閃光が頬を掠めた。
「ッ!?」
頬に鈍い痛みと赤い液体が流れ落ちる感覚があった。
そして一瞬の恐怖のあと
(白井か…!)
そう確信した時だった。
「ぐぅぁッ!」
「…?」
後ろから聞き慣れた声が聞こえたので振り返ってみる。
そこにいたのは
「な、なんじゃごりゃぁぁぁぁ!」
右胸から出血している監督だった。
「おいバカ!味方撃ってんぞ味方!」
咄嗟に白井にツッコミを入れるが
「追いかけてる時の顔が気持ち悪くてつい、な」
だそうです監督。
「治癒能力がいるのを良い事に遊びすぎだろ!」
「違うな、指がトリガーを勝手に…」
「言い訳はいい!」
等と俺と白井が言い合っていると足音が聞こえた。
その方向を見る。
そこにいたのは
「…♪」
神楽である。
何かしら楽しそうに笑っているので、笑顔を返してみる。
次の瞬間
後ろからバキバキっと裂けるような音がした。
「へ…?」
振り返ってみると、いくつもの木が倒れていっている。
「………」
振り返る顔を元に戻す。
「…♪」
相変わらず笑顔の神楽。
(お前いつ斬った!?つーか刀抜いてなかったよな今!?)
一番危険なのは彼女かもしれない。
「ははは、やってるね〜」
少し離れた所から眺めていた唯依がそう言った。
側にはアリアもいた。
「まったく、また監督を怪我させて、誰が治すと思ってるのですか」
「そうだね♪」
「……」
「……?」
急に黙るアリアに唯依が疑問を抱く。
「何だか唯依、最近すごく楽しそうです」
「そう…かな?」
その理由もアリアは既に気づいていた。
その後もしばらく訓練は続いていた。
「……」
魂が抜けたかのように床に突っ伏していた。
何度死にかけただろうか…。
「大丈夫?」
そう言って唯依が心配しながら側に寄ってきてくれる。
「唯依、あまり甘やかすなよ〜。お前が甘やかすといつまで経っても強くなれん。」
監督が釘を刺す。
「そうかもしれないけど…」
唯依は納得がいかないようだった。
少しやりすぎではないかと。
「だ、大丈夫…俺は大丈夫だから。強くなるため、これぐらい」
唯依を心配させないため少し強がってみる。
「そう…?」
「おう」
笑顔でそう答える。
その顔を見て不安が和らいだのか、唯依の表情が元に戻る。
「そんな事より汗かいちゃった。唯依〜お風呂行こ〜?」
神楽だった。
「あ、うん。ごめん、また後でね」
「おう」
そう言って唯依が神楽とアリアについていく。
それからしばらくして、疲労も和らいできて、ふと立ち上がったとき
「ちょっと良いか?」
那央に肩を掴まれていた。
「お、おう」
よくわからないがそう反応する。
そうすると俺は那央に外へ連れて行かれる。
「いや〜お前が来てくれて助かったよ兄弟!」
「……はい?」
何のことかさっぱりである。
「監督も白井もあんなのだからさ〜困ってたんだわ〜」
(全く話が読めない…)
ポカーンとしてる俺を見て
「あ〜わりぃわりぃ、1人盛り上がってた。実はな…」
「……?」
「ここの風呂…露天風呂なんだわ」
「へぇ〜」
だからどうしたのだと、言おうと思った瞬間、那央の思考が読めてしまった。
「という事で、覗きに行こうぜ兄弟!」
(やっぱりか…)
俺の呆れ顔を見た那央は
「おいどうした?男子の夢だろ!?麗しの唯依ちゃん見に行けるぞ?」
「なッ!俺は別にそんなんじゃッ!」
(すっげー分かりやすいやつ…)
那央はそう思った。
「とにかく、赤信号、皆で渡れば怖くないと一緒だ。女風呂、皆で除けば怖くない!」
「俺はいかねー」
唯依がいるなら、尚更こいつを行かせる訳にはいかない、そう思った。
「何だよ?お前ホモか?」
「ちげーよ…」
そう言った時にはもう遅かった。
一瞬にして視界が変わった。
(まさか、これが瞬間移動!?)
目の前には大きく立ちふさがる柵があった。
その柵の向こうからは女子達の声が聞こえる。
(まずい、これはまずい…すごくいけないことをしている…もしこれが小鳥遊さんにバレたら…)
「統夜君…そんな人だったんだ…」
(俺は何のためにここにいるぅぅぅ!)
「おい、マジでよそうぜ。俺の人生に関わる!」
「あぁ?たかが覗き、男の子なんだなって許してくれるってーの」
小さな声だが、確かに必死に抵抗していた。
「大丈夫だって、唯依は心広いから」
「いや、そういう問題じゃ…」
「じゃあ何だよ?胸か?安心しろ、お前が想像してる以上に、唯依は素晴らしいもの持ってっから」
「そんな話してねーよ!」
「じゃあお前は見たくねーの?」
「え…?」
思わず言葉に詰まる。
「お前は惚れた女の裸が見たくないのかと聞いている!」
「そ、それは…」
一瞬でも自分の欲につけこまれた、その隙を那央は見逃さなかった。
「やはりお前も男だ!行くぞ兄弟!」
「…へ!?ちょまッ!」
我に返った時には既に遅かった。
俺の腕を掴んで那央は柵の上へと瞬間移動した。
(さらば俺の人生…)
そう思いながら、目の前には露天風呂。
そこにあったのは____
凄まじい筋肉だった。
『………………………………………………』
俺たち二人に気づき
「お、どうした二人共そんなところで。お前らも一緒に入るか?」
監督はそう聞いてきたが、俺たちの耳には入らない。
幸か不幸か、抵抗している間に出てしまったようだ。
今日も退屈な1日。
今学校に来たばかりなのにもう帰りたい。
いくら危なっかしいとはいえ、救済騎士団の連中といるのは楽しい。
(放課後まであの笑顔はお預けか…ケネディさんのケバブで誤魔化そう)
「全員揃ってるか〜?」
担任の教師が入ってくる。
「喜べ男子、転校生だぞ、しかも女子だ」
それを聞いた瞬間
『うおぉぉぉぉぉぉぉぉ!!』
まぁ、お決まりだわな
例え美少女でも俺には関係ない。
美少女はイケメンの餌食なのだから。
「入りたまえ」
「失礼します」
そしてその転校生は入ってきた。
それと同時に男子だけでなく、女子までざわめき始める。
「嘘だろ、超可愛いじゃん!」
「まさかの学校の美少女NO.1交代じゃね!?」
そんな言葉が周りから聞こえてくる。
ただその中、俺は固まっていた。
当然だ、俺はその人物を知っている。
(何でここに!?)
「小鳥遊 唯依です。よろしくお願いします。」




