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フードの少年とマフラーの少女

とある1つの研究所にその少年はいた。

いつもフードを被っており、あまり表情が見えない。

物心がついた頃には、既にこの研究所にいた。

少年の周りにも似たような境遇の少年少女達がいた。

活発な子やお喋りな子、いつも悲しい表情をしている子や、少し歳が離れた子。

姉妹でここにいたり、少年のようにあまり周りと関わろうとしない子。

一見すると孤児院に見えるかもしれない。

しかし、それはあくまで表向きの顔でしかなかった。

ここでの生活はほぼ固定されていた。

月曜日から土曜日、起床してから食事を取り、勉学を行う。

もっとも、あまり外に出る事はなかったため、曜日感覚など無いに等しかった。

ここまではどこにでもありがちな孤児院である。

しかし、問題は午後からであった。

各自個室に入り、ある特訓を行っていた。

先生達はイメージの練習だと言っていた。

昔から受けていた特訓の影響か、各々の中で既に『力』の形は完成されていた。

子供達はその『力』を形に変え、日々それを思い通りに扱えるように特訓していた。

外の世界を知らない少年は、人は皆こんなすごい力を持っているのだと、本気で思っていた。

少年の『力』は少し変わった銃の形をしていた。



日曜日は1日中自由な時間が与えられていた。

しかし、外は危険だと、柵の内側までしか出る事を許してくれなかった。

庭は子供達が鬼ごっこぐらいはできるであろう規模だった。

しかし少年は外には出なかった。

1日部屋の中で勉強か読書をしていた。

他の人との接し方を知らなかった。

ただそれだけだった。




その日の特訓はいつも以上に疲れていた。

足をふらつかせながら自室を目指す。

視界が歪んで見える。

同時に吐き気までもが襲っていた。

一歩一歩が酷く重い。

もう少しで自室である。

辿りつけば、後はゆっくりしていればいい。

もう少しの辛抱、そう思った時だった。

視界が大きく歪み、少年は廊下に崩れ落ちた。

立ち上がろうとした。

しかし、うまく力が入らない。

少しずつ意識が遠のいていくのがわかった。

薄れゆく意識の中で、


「大丈夫…?」


ふとそんな言葉を聞いた気がした。






「ん…」


瞼を開くと、そこには見慣れた天井があった。

自分の部屋である。


「目が覚めた?」


ふと隣から声がし、反射的にそちらを見る。

そこには1人の少女が椅子に座っていた。

髪はショートで、綺麗な顔立ちをした少女。

特徴的なのは、その身長に見合わない長いマフラーであった。

外見や口調から、おっとりとしていておとなしそうな子だった。

しかし少年は、今までその少女を見た覚えがなかった。


「びっくりしたんだよ?

廊下で倒れてたから」

「……」

「どこか具合悪い…?」


返事が返ってこない事を心配に思い、少女は少年に問いかける。

今まで他人とほとんど関わってこなかった少年はふと我に返る。


「き、君が…?」

「先生を呼んだだけなんだけどね」

「あ、ありが…とう…」

「…うん♪」


少女の笑顔に少し頬を赤くし、どういう反応をすれば良いのか、少年は焦った。

しかし、少年の焦りなど気にもとめないように、少年の顔色を見て少女は安堵の息を漏らす。


「大丈夫そうだね」

「う、うん…」

「あなた、名前は…?」

「え…」


少年にとっては初めてだったかもしれない。

同年代の子に名前を聞かれたのは。


「私、綾瀬沙耶」

「く、黒貴……白井黒貴」


それが10年前、少年と少女の出会いだった。










「クッ…」


死の恐怖を目の当たりにし、思わず統夜は息が上がっていた。

白井の放った一撃が直撃しかねた時、思わず手の甲を突き出した。

その反射的な防御体勢に反応してか、甲の結晶部分から光が放たれ、光は前方から統夜の身体を覆った。

光に直撃と同時に、白井の放った閃光は左右に受け流されたのだ。


「危ねぇ…本気で死ぬところだったぞ…」


先程の恐怖がまだ抜けないでいた。

しかし、統夜はこれで紬が言っていた光の力の意味を理解した気がした。


「ふぅ…」


一息つき、再び統夜は白井を見据え、地を蹴った。

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