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作戦開始

「………」

「ナニタソガレテルネ?」

「え…そうですか?」


ケネディさんにそう聞かれた。

俺は今公園にいた。

今日は作戦の日、気合いを入れるためにケバブを食べたいと思った。

案の定、ケネディさんは今日も公園で店を出していた。

丁度注文して待っていた時だ。


「サテハ、ズッコンバッコンシテ、ケンジャモードネ?」

「どうしてそうなるんすか…」


ケネディさんはよほど俺と唯依の組み合わせを気に入ってるのか、いつもこうだ。

いい加減勘弁してほしいものだ。

特に本人の前では。


「フクザツナカオシテルヨ」

「そう…かもしれないですね」


ケネディさんからケバブを受け取り、お金を渡す。


「トマトオマケシトイタヨ」

「………………」


(この人は俺の好き嫌い理解していないのだろうか…まぁ、食えない事は無いが)


「ナニカアッタネ?」

「ちょっと…大事な日なんで」


ケバブにかぶりつく。

やはりうまい。


「サテハ、ケッコンシキネ?」

「ごふッ!ゴホゴホ!」


思わずむせてしまう。


「……?」

「違いますよ、つーか俺まだ結婚できる年齢じゃねーですし」

「ジャア、ナニヨ?」

「……ちょっと、失敗できない事があるんで」

「シッパイデキナイコト?」

「人生の分岐点みたいなもんです」


そう、死ぬかもしれない。

唯依には死なないと言ったが、可能性は0じゃない。

相手は化物だらけだ。

正直、何かで紛らわせなければ不安でしかない。


「ダイジョウブヨ」

「え…?」

「トウヤクンナラ、ヤレルネ!

シッパイヲ、オソレチャダメヨ!」


ケネディさんは笑いながらそう言ってくれる。


「そう…ですね」


迷ってたって仕方ない。

(俺は…俺にできる事をやる!)

ケバブを一気に頬張る。

あっという間に完食した。


「ごちそうさま!

ありがとケネディさん!」

「ガッツダヨ!」

「…また…食いに来ます」


そう言って俺は走り出す。


「マタヨロシクネー!」


後ろからケネディさんのいつもの言葉が聞こえていた。











「これより作戦を開始する」


監督がそう口にした。

時刻は午後10時。

これより作戦が行われる。


「偵察班だが、那央と統夜を含めた3人だ。

移動手段として那央。

伝達手段として統夜だ。

問題なければ統夜が俺のケータイに連絡を」

「あいよ」

「了解」


監督の言葉に那央と俺が答える。


「あと1人だが…」

「俺が行こう」


白井だった。

一瞬監督は考えたが、すぐに頷く。


「統夜は施設内を知らないから白井がリードしてやってくれ」

「心得た」

「入れそうな場所があれば、そこから侵入してくれ。

なければ能力者の部屋あたりからぶち抜いて豪快に行け。

それと同時にこちらも参戦する。

救出班は救出に専念。

戦闘班は敵が来たら他の場所へ無理矢理移動させて戦うように。

戦闘班がいない状態でさらに追加で敵が来るようなら唯依と紬で応戦」


全員が頷く。

そこで監督がアリアに1つの紙を渡す。


「これは…?」

「能力者のリストだ。

線が引かれているのはブラックリストだ。

ただでさえ過酷な中、敵が増えても困る。

助けなくて良い」


見ると何人か名前に線が引かれた人物がいる。


「了解」


準備は整った。

後は、できる事をやるだけ。

他の人間には考える事があるだろうが、俺には無い。

敵の事も、施設の事も知らない。

知っていた所で良い案が浮かぶ立派な脳も無い。

俺にできるのはただ1つ。

目の前の敵を倒す事。


「よし!」


監督が肩を組み始める。

それを見た全員が察して円陣を組む。


「脱走以来の一大イベントだ!

難易度はおそらくあの時以上だ!

だが、俺はお前達が強い事を知っている!

大丈夫だ、やれる!

他の奴ら助けて、全員でここに帰ってこようぜ!」

『おう!』

「いくぞ!」

『おう!』

「作戦開始!」










俺達は森の奥にいた。

数百メートル先に建物が見えている。


「あそこが…」

「あぁ、くそったれな実験施設だ」


俺の独り言を聞いていた那央が答える。


「監督達は?」


那央が聞いてくる。

それに対して俺は、


「まだ連絡は無い」


監督から連絡が来た時、それが準備OKの合図だ。

(そういえば…)

俺は行動を開始する前に紬からある一言を貰っていた事を思い出す。


「光だよ」

「光?」

「そう、統夜の篭手から発せられる光。

それは敵の攻撃を弾き返す事ができる。

もしかしたら、他にも使用方法があるかも。

発動条件はわからないけど、大きな力になるから覚えておいて」


篭手から放つ光が攻撃を弾く。

俺の中ではそんな事をした覚えは一切無い。

(そもそも何でそんな事知って…)

そう思っていた時、


「ッ!」


ポケットに入ったケータイが震えている。

ポケットから取り出すと、案の定、監督からだった。

どうやら準備が整ったようだ。

簡単に返事を返し、2人を見る。


「出番だな?」


那央の問いに頷く。


「行こう…!」


そう呟き、施設を見た時、


「……?」


背中に無機質のような硬い何かが当たった。


「悪く思うな」

「え…?」


その言葉に振り返ろうとしたが、


「ッ!」


遅かった。

胸を一筋の光が貫いた。

そして地面に崩れ落ちた。

服は真っ赤に染まっていた。

地面を赤く染めながら俺は振り返る。

その光を俺はよく知っている。


「何でだよ…」


そして俺の予想は当たってしまう。


「白井…ッ!」


白井はヘカトンケイルを握り、そこに立っていた。

後ろで那央が信じられない、そんな表情をして立っていた。


「お、お前…何してんだよ…!?」


声が震えながらも那央は問い詰める。

それに対して白井は、


「これが…俺の答えだ…」


俺と那央は全く理解できなかった。


「安心しろ、奴らにはお前達の作戦の事は言わない」


そう言って白井は施設の方へ歩き出す。


「お、おい…白井!」


那央の言葉に白井が振り返る事は無かった。


「くッ!」


那央が俺に寄り身体を抱え上げる。


「おい、しっかりしろ!」


鈍い痛みが走る中、まだかろうじて意識はあった。

那央が俺のポケットからケータイを取りあげた。










統夜に連絡してから少し時間が経っていた。

侵入口を探しているのか、そう思った時、


「ッ…」


ケータイが震える。

統夜からである。

ケータイに出た。

すると、


「監督!作戦は中止だ!」


聞こえてきたのは、統夜ではなく那央の声だった。


「どういう事だ!?」


思わず那央に問い詰める。


「白井が…統夜を撃ちやがった!」

「ッ!何言って…」

「裏切ったんだよ!すぐに合流する!」


そして通話が切れた。


「…………」


監督の思考が追いつかずにいた。










通話を切り、移動に専念する。

(急がねーと統夜が!)


「絶対に死ぬんじゃねーぞ!?統夜!」


全力で監督達がいる場所を探して、那央は飛んだ。

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