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作戦前夜

「………は?」


(今、この人はなんと言った?)

『殺る』

確かにそう言った。

紬が一瞬で血の気が引き、顔色が悪くなる。

俺は監督という人間を疑った。

その時、

パスコーン!


「いってぇ!」


神楽が監督の頭を思い切り叩いていた。

全く状況が理解できない。

(何がどうなって…)


「言い方ってもんがあるでしょうが!」


神楽が監督を叱っている。

アリアは顔に手を当て、呆れている。


『……?』


相変わらず俺と紬が理解できない。

すると唯依が紬の元へ寄ってくる。


「ごめんね!

監督の言い方が悪かっただけなの!

そんな気は全く無くて!」


唯依が必死になって紬の誤解を解こうとしている。

そんな中、


「要するにだな…」


那央が割って入ろうとする。

しかし、白井が那央を止めた。


「お前が説明すると余計に面倒になりそうだ」

「失礼だな!」


もう色々めちゃくちゃであった。


「もう私自身から説明します」


アリアがそう言い、呆れながら寄ってくる。


「紬さん、私達はあなたを呪縛から解き放ちます」

「死をもって…?」


紬が恐る恐るそう聞いた。

しかし、アリアは微笑み返す。


「いえ、あなたは生きます」


その言葉に俺と紬はホッとする。

しかし、それだと監督の言葉とは矛盾が生まれる。

そう気づいた時、


「しかし…」

「……?」

「その為には1度死んでいただきます」


またしてもである。

さっきから矛盾だらけである。

生きるはずなのに殺す。

訳がわからなかった。

しかし、即座にアリアが続けた。


「混乱しかねないでしょうから、ちゃんと説明させていただきます」


アリアの言葉に紬が頷く。


「私には死んだ人を生き返らせる力があります」

「はぁ!?」


アリアの言葉に思わず驚いてしまう。

俺のその反応を見たアリアは、


「落ち着いてください統夜さん、何も万能ってわけではありません。

条件はあります」

「条件?」


紬が聞き返す。


「可能なのは、死後間もない人だけです。

死後から長く経つと流石に不可能です」


万能ではないとはいえ、十分恐ろしい力だった。

俺はふと気になった事を聞いてみる。


「ちなみにどれくらいの時間が経つとダメなんだ?」

「正確にはわかりません。

その人の生命力にもよりますから。

でも、そうですね…30秒あたりが限界でしょうか」


普段生活していれば、30秒なんてあっという間に思えるかもしれない。

しかし、戦闘中など、意識が集中した中での30秒は十分に長いものである。


「心臓が止まった人間に電気ショックを行うだろ?

言うなればアリアの力は、どんな状況の死に方にも対応するそれだと思えば良い」


神楽に解放されたのか、監督がそう口にする。

続けて、


「お前達が身体に埋め込まれたもの、それがお前達の位置情報や一瞬に殺す事ができるものだとする。

向こうからそれを行わないのなら、こっちからその役目を終わらせる。

埋め込まれた人間の生命反応が無くなれば、その装置は役目を終え、停止する。

そう判断した」


そこで俺の中で全てが一致した。

俺は先日、紬を問い詰めた時のアリアの台詞を思い出していた。

紬が殺されても問題ない。

あれはこういう意味だったのだ。

その言葉に紬は俯いた。


「ホントお荷物だな」

「気にすんな」

「ッ?」


紬が監督へと顔を上げる。


「お前は俺達の仲間だからな。

そんな事は気にすんな。

仲間は助け合ってこそだ」


その言葉に紬は固まっていた。


「そうだよな?統夜」

「…あぁ!」


監督の言葉に俺は答える。


「ホントお人好しだな…お前達は」


紬は再び俯き、肩を震わせながら呟いた。










「俺がやる」


そう監督が言い、監督、紬、アリアを残して、俺達は部屋の外にいた。

中から鈍い音が聞こえた。

それからしばらく待っていると、ドアが開いた。


「終わりました」


アリアである。

その表情からは少しばかり疲れが見える。

やはり強力なだけあって、それなりに体力も消耗するようだ。

俺達が中に入るとそこには血溜まりが出来ていた。

そばに監督と紬が立っていた。


「ホントに生き返ったんだ…私…」


紬が信じられないという顔をしていた。

当然の反応だろう。


「どーせ監督の事だ。真っ二つだろ?」


聞いたのは那央だった。


「失礼だな!少しは考えたっつーの!」

「もう少し考えて欲しいです…」


監督はそう言うが、アリアは不満そうだった。

(一体何したんだ…)


「これで解放されたのかな…?」


唯依が不安そうに口にする。


「だと良いんだけどね…」


それに答える神楽。

今はただ信じるしかなかった。


「とりあえず今は掃除してください」

『…はい』


アリアに雑巾を渡されるメンバーであった。

掃除を終えた後、明日の作戦に向けて、その日は解散となった。











「ふぅ〜すっきりした…」


女子部屋方面から自室へ戻ってくる刹那。


「次は誰とヤろうかな〜」


椅子に座り、机の上のパソコンへと目を向ける。


「今度はこのデスク下に忍び込ませてさせるのもありだな〜」


そこで刹那はある事に気づく。


「ん?…これは…」


マップからある印が消えている。


「………」


タブを切り替え、能力者一覧を見る。


「紬が死にましたか…」


そして紬に✕印を付けた。

死の意味である。


「………ま、いっか、十分遊んだし」










「………………」


俺は眠る事ができなかった。

緊張からなのは確かであろう。

自信が無いせいなのか、恐怖からなのか。


「……………」


俺の部屋は那央と相部屋である。

起こさないように、静かに立ち上がり、部屋を出る。

階段を降りた所で足が止まった。


「………?」


リビングに明かりがついていたのである。

堂々と入れば良いものを、何故かこっそり覗く。

一見誰もいないように思えた。

誰かの消し忘れかと思い、中に入る。

すると、


「統夜君…?」

「……?」


ふと呼ばれた方へ向く。

冷蔵庫の前に唯依が立っていた。


「どうしたの…こんな時間に?」

「ちょっと眠れなくて…」


何故だろう。

この歳になると、眠れないという発言がすごく恥ずかしく感じる。


「唯依は…?」

「私も…そんなところかな」


妹の事で眠れないのであろう。

今までの戦いが、この日のためにあったのだから。


「何か飲む?」

「いや…別にいいや」


椅子に座る。

すると唯依が向かい側に座ってきた。


『…………』


正直何を話して良いのかがわからない。

いつもなら何気ない会話をしていた。

だが今はそういうわけにはいかない。

悩んだ結果出たものは、


「あまり思い詰めないほうが良いぞ」

「え…?」

「いざ作戦になって身体が疲れてたら元もこうも無いからな」

「…うん」


相変わらず難しい顔をしていた。

それを見ているのが辛かった。

だから、


「唯依なら作戦中に寝てそうだがな」

「そ、そんな事しないよ!」

「はは、冗談だって」

「もぉ〜」


そこでようやく唯依が笑ってくれた。

しかし、それでもやはり心のモヤモヤは無くなってはいないだろう。


「統夜君は…」

「ん…?」

「怖くないの…?」

「……怖いよ」


隠す必要なんて無いと思った。


「じゃあ…何で?

統夜君は十分に頑張ってくれた…今ならまだ…」

「俺…監督と約束したから…」

「約束…?」

「うん…守りたいものができたって…そのために戦うって」

「………」

「だから俺は逃げない…男として、誓いを貫き通す…それに」

「……?」

「ここまで来て逃げるなんてかっこ悪いじゃん?」


唯依が小さく微笑む。


「強いんだね…」

「強くないさ…ただ俺をそうさせるものがあるだけ」

「そっか」


少しの沈黙が流れる中、唯依が気づいたように、


「そういえば…」

「……?」

「初めてだよね…統夜君がここに入った理由教えてもらったの」

「…確かに」

「詳しく聞いちゃ…ダメ…?」


その言葉に俺は焦る。

よりによって理由となる本人に聞かれてしまった。

少し言い方を変えれば良かったと後悔する。

しかし、大事な作戦前である。

ここで言わなければ死亡フラグが立つ。

そんな気がしたから、


「理由はいくつかあるんだ」

「そうなの?」

「うん…やっぱ男たるもの、ヒーローに憧れてたってのもある。

この力を、誰かのために使えればかっこいいんじゃないかって。

それに知った以上、放っておけなかったってのもある」

「優しいね」

「でも…」

「……?」

「一番は…」

「一番…?」


そう、俺がここに来た一番の理由。

ヒーローなら皆を守るためだとか言えるのだろう。

しかし、あまりにヒーローらしくない。

すごく自分勝手な理由。

しかし


「それは…」

「それは…?」


すごく


「それは…」

「……」


人間らしい理由


「助けてくれた人がいるんだ…」

「え…?」

「死ぬかもしれないのに…自分の身を張って守ってくれたお人好しが…」

「それって…」

「俺…その子の力になりたいって思ったんだ…」

「………」

「いざ入ってみたら、その子はいつも笑顔で…それに…」

「………」

「学校の全員を敵にまわそうとも、俺の味方でいるって…言ってくれたんだ…」

「………」

「俺…その子に恩返しがしたい…それが…俺がここにいる理由で、俺が戦う一番の理由」


言い終えた時、唯依が急に立ち上がった。


「……?」


何事かと思った。

唯依は俺の隣に来て、俺の手を両手で握りしめる。


「唯依…?」

「お願い統夜君…」


唯依は涙を流していた。

泣かせる気は全くなかった。

何か気に触ったのかとすら思った。

だが、すぐにその涙の意味を知る。


「死なないで…生きて…帰ってきて…」

「………」

「これ以上私…」

「大丈夫」


気がつけば、その小さな手を握り返していた。


「俺は必ず生きて帰る」

「うん…」

「妹さんも皆も…全員で生きて帰ろ?」

「…うん……」


現実は非情だ。

人生、そう上手くはいかない。

どうしたって不可能はある。

そんな事は分かっている。

所詮は口約束かもしれない。

しかし、その約束が人を動かす力になる。

不可能を可能に変える力になるかもしれない。

『約束』

それだけで、人は強くなれる気がする。

たとえ、その先が絶望ばかりだとしても…

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