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作戦会議

部屋にはキーボードの音だけが鳴り響いていた。


「………」


刹那はパソコンとにらめっこをしていた。

能力者のデータである。

次の刺客を選んでいた。


「………」


ふと別のタブを見た。

あれから数日が経った今も、紬の生存反応がある。


「そろそろ廃棄ですかね…」


(身体は良かった…だが、それだけ)

そう思いながら、刹那は再び能力者のデータへ目を戻す。


「そろそろ遊びも終わりにしますかね〜…マナ因子の数にも限りはありますし…」












「あぁ〜楽しかった〜」


神楽はソファにもたれかかっていた。

俺達は昼の余韻に浸っていた。

全員、今日はよく眠れることであろう。

ふと外を見ると監督がいた。


「……?」


何をしているのかと思い、外に出てみる。

監督は空を見ていた。


「何してるんすか…?」


その言葉で監督がこちらに気づく。


「ん?あぁ…ちょっと身体動かしててな」


よく見ると、確かに服に汗が滲んでいた。


「昼にあれだけ騒いでおいて、よくやりますね…」

「鍛えてるからな!」

「ははは…」


決め顔だったので愛想笑いで返す。


「星が綺麗だな…」


監督がそんな事を口にする。

俺も見上げる。

星が綺麗に輝いていた。


「都会と違って…このあたりは廃棄ガスとかほぼ無いですからね」


2人して星を眺める。


「調子はどうだ…?」

「…?」


ふと監督がそんな事を聞いてきた。

俺には何の事だかさっぱりわからない。

だから聞き返した。


「何の話っすか…?」


その言葉に対し、監督は微笑みながら、


「唯依とだよ」

「なッ!」


いつもなら神楽や那央が聞いてきそうな事を監督が聞いてきて思わず焦った。


「べ、別にどうだって良いじゃないですか!」


少し動揺しながらそう返す。

監督までもおちょくりに来たのだと思った。

しかし、


「別にお前の恋路を笑いものにしてるわけじゃねーよ」

「え…?」

「ただお前らを見てるとな…すごく微笑ましいんだわ」


その言葉には、普段の監督とは違った大人な雰囲気があった。

まるで我が子を見守る父親のような、そんな雰囲気だ。


「な、何すか…急に…?」


普段とは違う監督に少し反応が困る。

しかし、監督は表情を変えず、


「1人になると…きっと唯依は妹の事で頭がいっぱいになるだろう」

「………」

「でも、その1人の時間をお前は塗り潰してくれている…おかげで唯依は以前より楽しそうだ、感謝している」

「何で監督が礼を言うんすか」


思わず笑みがこぼれる。


「やっぱりな…最年長ってだけあって…あいつらを見てたら、我が子のようにすら思えてくるんだわ…」

「まだまだ若いのに中身はもうおっさんですか?」

「ほっとけ」


2人で笑い合う。

皆が慕う理由が改めてわかった気がする。

この人は、本当に他の皆をよく見ているんだ。


「ありがとな…唯依を支えてくれて」

「俺は…ただ貰ったものを…返したいだけっすから」

「んな事言って〜好きなだけだろ?」

「なッ!」


間違っていない。

間違ってはいないのだが、すごく引っかかる言い方だった。

好きなのは事実だが、恩返しがしたいのも事実である。


「さっさとコクっちまえよ?」

「大きなお世話です!」


(結局こういうオチかよ…)

そう思いながら家に戻ろうとしたその時、


「2番目だ」

「へ……?」


ふと監督がそんな事を言った。

何の事かさっぱりわからない。


「2番目って…?」


思わず聞き返した。

しかし、監督に教えてくれる気配はなかった。

ただ、


「頭の隅に置いておけ、今はそれだけで良い」


それだけだった。

何かモヤモヤしたものを残しながら、俺は家へと戻った。


「…さて…動くとするか」


監督は静かに呟いた。









「ありがとうございます、またお越しくださいませ」


白井はスーパーでアルバイト中であった。

ムスッとしているが、その働きは立派なもので、ギャップが可愛いと主婦から人気があった。

今はレジを担当していた。


「22円のお返しとレシートになります」


今日もいつも通りであった。

あと数十分もすれば今日のバイトも終わりである。

そんな時、小柄な男子がレジに現れた。

歳は少し下ぐらいであろうか。

その男がレジにかごを置く。


「いらっしゃいませ」


かごに入った少ない商品のうちの一つを手に取った時、


「賢者の石って…知ってますよね…?」

「ッ!?」


ふとそんな事をその男は口にした。

その瞬間、白井の手が止まった。

『賢者の石』

確かにそう言った。

そして白井はすぐにその男が何者かを察した。


「貴様…何のつもりだ…?」


白井は男を睨みつける。

だが、男は全く怯む事なく口にする。


「もしそう呼ばれる存在が現れたと言ったら…君はどうします…?」


白井は怪しく思われないよう、手を動かした。


「信じると思っているのか…?」

「信じないのはあなたの勝手です…ただ…あなたには必要な物だと思いますが…?」


男はお金を置き、商品を入れた袋を受け取る。


「ま、後はあなた次第です」

「………」


去っていく男の背中を白井は睨んでいた。










「これより会議に入る」


監督がそう口にした。

全員リビングに揃っていた。

どうやら作戦が決まったようだ。


「作戦は至ってシンプルなものだ、よく聞いておいてくれ」


その言葉に全員が頷く。


「まずグループを戦闘班と救出班に分ける。

戦闘班は敵のお迎えさんと戦う。

倒す必要は無い、時間さえ稼げばOKだ。

その間に救出班には非好戦的能力者の救出を頼む。

ここまでで質問は?」


誰も口にする者はいない。

それを確認して監督が続ける。


「それじゃグループ分けを行う。

戦闘班に俺、神楽、白井、統夜。

救出班にアリア。

その援護として那央、唯依、紬を付ける。

アリアが救出において最重要だ、必ず守れ」


救出班が頷く。

しかし、


「でも大丈夫かよ…?

敵はまだそれなりにいるんだろ…?

たった4人で止めるなんて…」


那央がそう口にした。

確かに、これまで相手1人に苦しめられていた事もあった。

それを考えれば凄く辛い作戦である。

しかし監督は、


「確かに…これまでに無い過酷な作戦になるだろう…

しかし、紬の話を聞いたからには、これ以上仲間達が苦しんでいる中、指を咥えて敵を待っているわけにはいかない…」

『…………』


納得せざるを得なかった。


「それに」

『……?』

「まだまだ本気を出していない事は…お前達が一番分かっているはずだ」


その言葉に、全員が笑みを浮かべる。

だが、俺にはわからなかった。

まだまだ本気を出していない、確かにそう言った。

(皆…まだ何かとんでもない力を…?)

自分だけ取り残されてる、そんな気がした。


「作戦の順序だが、始めに偵察で数人出す。

侵入に問題が無さそうであれば他のメンバーに合図、一気に突入する。

混乱の中、戦闘班はいち早く救出ルートを避けた場所で敵を食い止める。

その間に救出作業を行う。

もしもの事を考え、アリアは必ず救出する人間のそばを離れない事。

救出完了後、しばらくしてから俺達も離脱する。

作戦概要は以上だ」


全員の張り詰めた空気が解ける。

そして最後に、


「作戦は明日の夜に行う」


その言葉で会議は終了した。

と思ったのだが、


「あ、そうそう」


監督が何かを思い出したかのようにそう口にする。

全員が監督の方を見る。


「作戦を始める前にお土産を取り除かないとな」


そう言って監督は紬の方を見る。

一瞬何の事かと思った紬だが、すぐにその言葉の意味を察し、表情が暗くなる。

研究施設の支配人がいつでも殺せるという件であろう。


「どうするの…?」


自分が障害になりかねない事を責めているのか、その手は衣服を強く握りしめていた。

紬のその言葉に監督は腕を組む。


「向こうから動かないなら仕方ない」


そして監督が言い放つ言葉に、俺は耳を疑った。


「とりあえず殺るしかないだろうな」

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