炎天下パラダイス(前編)
「どうしてこうなった…」
俺の視線に映るもの…
海。砂浜。水着。
「うひょぉーーーーッ!」
那央は1人テンションが上がっていた。
俺達は今、何故か海にいた。
そして俺達も水着だった。
俺は思わず聞いた。
「……どういう事だよ、監督?
急に水着に着替えろとか言うから何事かと思えば…」
それに対して監督は、
「戦士たるもの、休息も必要だ」
決め顔でこちらを見てくる。
眩しい…太陽が。
「どーせ作戦が思いつかないとかじゃねーの?」
「…………」
「図星かよ!」
しかしまぁ、監督の意見も確かだ。
ずっとこれからの事を考えていると気が滅入る。
「やべーよ!あれきっとFぐらいあるよ!」
何より那央が楽しそうだ。
「暑い…」
白井は相変わらずである。
「取らねーのか?それ」
マフラーとフードを見ながら聞いてみる。
「どうって事はない…」
(こいつは何と戦ってるんだ…)
汗ダラダラでも取らないらしい。
「おい統夜見ろよ!あのボッ、キュ、ボンを!」
那央が肩を組んでくる。
「はいはい…」
俺は呆れていた。
この間まで凹んでたのは誰だか。
「おまたせ〜」
後方から聞き慣れた声が聞こえた。
おそらく神楽だろう。
「おぉ!?」
那央が待ってましたと言わんばかりに振り向く。
反射的に俺も振り向いた。
そこにあったのは、未だかつて見た事がない彼女達の姿だった。
「イェイ!」
神楽がピースをしながら他のメンバーを引き連れて立っている。
神楽は縞模様のビキニで堂々と立っていた。
初めて見たが、本当にスタイルが良い。
どうしてあれだけグータラしててこの体型なのか謎である。
「ふん♪」
隣の紬は黒のパレオだった。
なかなか様になっている。
ホントに一歳差なのだろうか。
「うぅ……」
唯依は水玉模様のビキニの上からパーカーを羽織っていた。
よくある海水浴用の濡れても大丈夫なものだろう。
(可愛い……)
恥ずかしそうにしている唯依を見て、そう思いながらつい視線を逸らしてしまう。
直視できなかった。
「おぉ〜!」
那央が目を輝かせながら見ている。
完全に危ない人間になっている。
だが、そこで違和感に気づく。
「あれ、アリアは?」
那央が聞いた。
その言葉に神楽が、
「ほら、出てきなよアリア?」
どうやら後ろに隠れているようだ。
「何で…私だけ…」
嫌そうにアリアが出てきた。
「なッ!!」
それを見た那央が衝撃を受けていた。
「そ、それは…!」
そう、それは、
「伝説のスクール水着じゃないかッ!!」
那央が叫んでいた。
確かにスクール水着である。
胸元に『ありあ』と書かれていた。
「まさか…こんなところでスク水女子に出会えるとは…!」
那央が拝んでいた。
「あまりジロジロ見ないでください…」
どうやらアリアはあまり気に入ってないようだ。
そして言うなれば、俺にはスク水の良さがわからない。
「よし、全員揃ったな」
そんなこんなしていると監督が全員に声をかけてくる。
「今日は日頃の苦を忘れ、パァーッと遊ぶぞ!」
『おぉー!』
監督の言葉に神楽と那央が反応していた。
(お前らいつもグータラしてんだろ…)
心の中でツッコミを入れる俺だった。
そんな時、
「ねぇ〜統夜君、似合ってるぅ〜?」
紬がすがり付いてきた。
「なッ!」
それを見てそんな声を出す唯依。
「はいはい、似合ってます似合ってます。だから離れてください」
「ぶ〜何よその言い方〜」
俺は軽く流す。
「神楽!勝負だ!」
「良いよ!私の実力を今こそ見せてあげる!」
那央と神楽は海へと向かって走っていく。
「張り切るのは良いが気をつけろよ〜」
準備運動をしながら監督が言う。
改めて見るとホントにマッチョメンだ。
「と、統夜君」
「ん?」
ふと前を見ると唯依が上目遣いでこちらを見ていた。
「ッ!」
あまりの破壊力に心臓が跳ねた。
「な、何?」
ぎこちなく聞いてみる。
すると、
「水着、変…じゃないかな?」
(ぐはッ!)
危うく俺も那央みたいに変な人間になるところだった。
この破壊力は卑怯である。
「に、似合ってると思う」
きっと今俺は顔が赤いに違いない。
目を合わせるのが辛かった。
「もぉ〜!私と反応が違〜う!」
俺と唯依を見て紬が不機嫌になっていた。
俺、唯依、白井、アリア、紬はパラソルの下にいた。
それを傍から見ていた監督が、
「何だ〜お前ら?草食系か?」
「別にそういう訳じゃ…」
監督の言葉にそう返す。
別に退屈なわけではない。
ただ何をすればいいのかわからないのである。
同年代の人間達と海に来た事なんて未だなかったからである。
すると急に、
「ねぇ、統夜君、遊びに行こ?」
再び紬がくっついてきた。
(この人ホントこんなキャラだったっけ…?)
正直キャラの変わりように反応が困る。
「ダ、ダメ…」
「へ…?」
後ろからふとそんな声が聞こえた。
何事かと思っていると、
「統夜君は…私と…!」
そう言いながら唯依が反応側の腕にくっついてきた。
「はい!?」
思わず変な声が出る。
そして心拍数が上がる。
「ハッハッハ、両手に花か統夜?」
それを見ていた監督が笑いながらそう言う。
こっちとしてはそれどころじゃない。
「私よね?」
「私…だよね!?」
色っぽく言い寄ってくる紬と、顔を真っ赤にして言い寄ってくる唯依。
『むぅ〜!』
そして2人の間に火花が散っていた。
俺の気持ちとしては決まっているが、それでも、
(どうしよう…)
片方だけを選ぶことへの罪悪感にかられる俺であった。
-公園-
「コンナアツイヒハ、ウミニイキタイネ…」
猛暑で客が少ない今日、海を恋しく思うケネディさんだった。




