頭上注意
「ぐッ……!」
那央は腹部に違和感を感じた。
「な………」
見下ろして腹部を見た時、光り輝く物が刺さっていた。
持ち主の手が離れ、その光は消滅した。
「ごめんなさいね…こうするしか無いの…」
紬が自分を刺した。
未だ那央は信じられなかった。
再び紬は光の刃を作りだす。
「これで……………ッ!?」
トドメをさそうとした時、右から気配を感じ、咄嗟に那央から距離をとった。
「テメェ!」
俺が紬に殴りかかっていた。
気づくのが早かった紬は、拳をかわし、当たらずに済んだ。
「まさか…こんな近距離に他の能力者が!?」
紬にとってはあまりに想定外だった。
「おい那央!大丈夫か!?」
俺が那央の安否を確かめる。
当の那央は
「な、なんじゃごりゃぁぁぁぁぁぁぁ!」
「…………………」
腹部の血を見て叫んでいた。
(あー…生きてんな)
一瞬、放って帰ろうとすら思った。
紬の方へと向き直る。
「アンタ…何のつもりだよ?」
俺は睨みつけながら投げかけた。
「何が…?
私は殺そうとした…それで全て察しがつくでしょ?」
確かにそうだ。
考えられる事はただ1つ。
新たな刺客。
「騙してたのか……?」
那央が震え声でそう問いかけた。
「…そう、全ては芝居。
あなた達裏切り者を殺すためのね…!」
紬のその瞳には怒り、恨み…そんな負の感情があった。
那央は未だ信じられないような表情をして固まっていた。
俺はただそれを見ていた。
「………那央、基地まで戻れるか?」
「……………あぁ」
那央は微かな声で返事をした。
「行かせない!」
阻止しようとする紬の前に俺が立つ。
「相手を間違えたな、あいつはテレポーターだ」
「へぇ〜」
「………?」
あまりにも余裕そうな態度に俺は疑問を持つ。
その時
「何で…!?」
那央が呟いた。
「どうした…!?」
「………全然飛べねー」
「はぁ!?」
俺が聞いた時、那央はそう答えた。
確かに、那央は先程よりほとんど移動していない。
「そりゃそうよ」
紬の言葉に再び紬の方へ向く。
「私の光の刃を受けた者は、その人間の能力効果を著しく低下させる」
「な!?」
(能力の効力を下げるだと!?)
「今の彼が飛ぼうものなら、せいぜいほんの数メートル。
基地にたどり着くまでに出血多量で死ぬんじゃない?」
「くッ!」
(ここで那央を抱えて走っても丸腰だ!)
「那央、気合いで飛べ!
ここは俺が何とかする!」
(絶対に那央には当てさせねぇ!)
「させない!」
紬は刃を形成し、こちらに投げてくる。
それを俺は篭手で弾く。
「やらせねぇよ!」
(飛ばすこともできるのかよ、あれ)
ただ救いは、それほどの攻撃力を持たないこと。
篭手でも難なく弾くことができた。
那央は少しずつ先へと進む。
「逃がさない!」
「させねぇって言ってんだろ!」
「フッ…」
「…?」
ふと紬が鼻で笑った。
その時
紬の周辺に大量の刃が形成された。
「な!?」
「誰も1つしか作れないなんて言ってないよ!」
「しまったッ!」
刃が一度上昇し、一斉に那央の元へ向かう。
「那央!上田!」
そう叫んだが、今は身体が判断できる状態ではなかった。
幾つもの刃が刺さると思ったその時
「なッ!」
突如現れた岩の壁により阻止された。
それに紬は驚きを隠せない。
その岩を見て俺は察した。
「ふぅ〜ギリギリセーフ」
聞きなれた声が聞こえ、岩の壁の横から那央を抱え、姿を見せる。
唯依である。
「那央君は無事だよ、統夜君!」
そう言いながらピースしていた。
助かった、だが
「何でここに!?」
「い、今はそれどころじゃないでしょ!?」
疑問ではあったが確かにそれどころではない。
「唯依、那央を頼む」
「うん」
そう告げると、唯依は那央を連れて風の力で基地へ向かう。
「させるか!」
紬が刃を形成する。
だが
「ッ!」
すぐそこまで俺は接近していた。
「なッ!?」
「くらえ!」
拳を握り締め、右ストレートのように突き出す。
「くッ!」
紬が避けに入る。
こちらの攻撃が一瞬遅かった。
確かに当たりはした。
だが、右肩をかすった程度だ。
紬が距離をとる。
「クソ、かすった程度か」
かすった程度ではあるが、紬の右肩は若干麻痺していた。
「なるほど…恐ろしい攻撃力だ」
肩を一目し、再びこちらへと視線を向けてくる。
「那央の気持ちをよくも…!」
「だったら何だ?」
「今度こそぶつける!」
俺は強く拳を握った。
「カンです」
「おう…」
アリアの言葉に監督が返す。
「もう一度カンです」
「あぁ」
アリアの言葉に白井が返す。
「嶺上開花です」
『……………』
懲りない2人だった。
そして無理矢理参加させられた神楽は
(何が楽しいの…これ…?)
全く理解できてなかった。
とあるネタを入れるため、一部わざと誤字になっております。