表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
15/28

それぞれの恋

「春が来〜た〜春が来〜た〜

ど〜こ〜に〜来た〜

統夜に来た

唯依に来た

那央に〜も〜来た〜」

「何だそれ?」


急に神楽が歌い出すので監督が何事かと思った。


「何って、そのままの意味だよ」

「那央もか?」

「うん、女の勘だよ」


2人でそんな会話をしていた。





「頼むよ統夜!ケータイ貸してくれ!」

「嫌だ、貸すのは構わないが、どーせしばらく返さねーだろ」


すがりよってくる那央に俺は困っていた。

返ってきた時の通話料金が怖い。


「テメェ、さてはエロ画像入ってんな!?」

「入ってねーよ…」


貸さなかったらこれである。


「唯依、統夜がケータイにエロ画像入れてんぞ」

「バカ!入ってねーよ!」


唯依の顔色を伺う。


「別に少しくらい良いんじゃないかな?男の子だし」


とても寛大だった。

唯依を使った作戦が効かずに不機嫌になる那央。


「監督に言えよ」


俺がそう提案するが


「そんなもの買えるかアホ、そんなに欲しけりゃ自分で働いて買え、このニートが!って言われた」


(返す言葉もない…)


「まぁ、そういうことなら、そうするしかないだろ」


そう伝え、部屋から出ようとする。

すると


「統夜君」

「ん?」


唯依に声をかけられる。


「………」


何か申し訳なさそうな表情をする唯依。

大体言いたいことは察した。

唯依からもお願いしてるのだろう。

(流石にそんな顔をされると辛い…)


「はぁ〜…10分だ、それ以上は罰として有り金全部もらう」


ケータイを放り渡す。


「ありがとう!心の友よ!」


那央は泣きながら言う。

(なんて安い心の友だろう…)

もはや都合の良い人である。

邪魔になると思って、俺と唯依は部屋から出た。


「これで連絡をとれる!」


那央は嬉しくてたまらなかった。





「ありがとね」


唯依が微笑みながら礼を言う。


「何で唯依が礼言うのさ。まぁ、これを期に働いてくれたら良いけどな」

「そうだね」


そこで俺は疑問をぶつける。


「つーか何なんだ?

いきなりケータイ貸せだなんて」

「ん〜好きな人ができたとか?」


(やっぱりそうなるのだろうか…)


「好きな人か…」

「ん?」


俺が呟いた言葉に唯依が反応する。


「い、いや、何でも」

「変なの♪」


そう言って唯依はリビングへと向かう。

(唯依にはいるのだろうか…)

最近はそんな事ばかり考えている。

他人の恋路の心配なんてしてる場合じゃない。













刹那は頭を悩ませていた。

脱走した連中に次から次へと能力者を減らされる。


「まぁ、失敗作に終わる彼らが悪いんですけどね」


次もおそらく失敗であろう。

その時の事も考えて、『あるもの』を用意してある。


「男はどーでもいいけど、あまり女は減らして欲しくないですね〜。

私の快楽のためのおもちゃが減っては困る」


あまりにも減らされるようならば、対処も考えなければならない。

刹那は能力者をランク分けしたページを開く。

(場合によっては出さなくてはいけませんか…)


--------------------


Sランク


•裕木カズマ

•月読まどか


Aランク


•小鳥遊唯依

•エディ中山

•宮城神楽

•パタ•ロー

•柊アリア

--------------------












「Oh!ヒサシブリネートウヤクン!」

「まだ一週間ぶりぐらいですよ」


昼に俺は散歩をしていた。

すると、公園でケバブ屋があったので、もしやと思って行ってみると、案の定ケネディさんの店だった。


「店出してたんですね」

「ソウダヨ!イツカ、トウヤクンガケバブノニオイニツラレテヤッテクルッテシンジテタヨ!」


(別に匂いに釣られて来たわけじゃ…)


「ン?トウヤクン、ナニカナヤミゴトガアルネ?」

「え…?」

「ムズカシイカオシテルネ、ケバブタベル?トマトオマケシチャウヨ?」

「あ、いや、今日はもう昼食べたんで」

「Oh…スコシザンネンネ、ツギハタベテネ?」

「約束します」


(トマトおまけされても困るんだが…)

少しの間、沈黙が流れる。


「………ケネディさん」

「ン?」

「どうやったら…相手の気持ちわかるんですかね…?」

「…ソンナノカンタンダヨ」


ケネディさんが笑顔でそう答える。


「ジブンノキモチヲツタエレバイインダヨ」

「自分の…気持ち?」

「ソウダヨ…ジブンノキモチヲツタエナイデ、アイテノキモチヲシリタイノハゼイタクダヨ」

「ッ……」

「オシショーサンイッテタヨ、ジブンノショウジキナキモチヲツタエレバ、キットアイテモコタエテクレルト」

「なるほど…」


(師匠なんていたんだ…)

とても簡単な事だった。

とても簡単だけど、とても大事な事を教わった。


「アイテガヨメサンナラモットカンタンネ」

「え…?」

「ズッコンバッコンサソウネ!キョヒラレタラオワリネ」

「結局そうなるんですね…」


良い感じだったのに、最後の最後でぶち壊しである。


「ん…?」


ふと、公園内に見慣れた顔を見つける。

那央である。

(何やってんだあいつ…)

那央は時計台の下で立ち止まった。

(誰かと待ち合わせか?)





(やったぜ!)

那央は心の中でガッツポーズをしていた。

今日連絡をとったところ、どうしてもお礼がしたい、そう言われ、紬に誘われた。

行き先はまだ聞いていない。

(これ…デートだよな!)

完全に浮かれていた。





しばらくして、1人の女性が現れ、那央の元へ行く。

(連絡取ってた人か?)

そう思いながら見ていた。

2人を見ていると、まだ知り合って間もない雰囲気が出ていた。

(まぁ、頑張れよ)

そう心で応援し、振り返った時

ケネディさんがいなかった。


「え…?」


店は確かにそこにある。

だが、ケネディさんがいない。

ふと、嫌な予感がして周りを見たが、さっきまで少なからずいた人が誰もいない。

(まさか…!)





「すみません、こんな暑い日に誘っちゃって、どうしてもお礼がしたくて」

「いえいえ、紬さんの頼みなら何でも」


那央は胸を張っていた。


「じゃあ…」

「ん?」

「私のために…死んでくれます?」


その瞬間、那央は腹部に何かが刺さったのを感じた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ