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必殺技

「必殺技だぁ?」

「…はい」


監督の言葉に俺はそう答えた。

「必殺技がほしい」

俺が監督にそう言ったのだ。

俺のその発言に監督が頭を悩ませた。


「お前なぁ〜…必殺技ってのはそんな簡単なものじゃないんだ。鍛錬を重ねに重ねてだなぁ〜…」

「時間ならあります」


そう、時間ならある。

先日俺達は夏休みに入った。

しばらくケネディさんのケバブは食えないが


「トウヤクン、カナシムコトナイヨ!シバラクタベラレナクテモ、ケバブハイツダッテ、キミノココロノナカニアルヨ!」


そうケネディさんは言っていた。

俺はケネディさんに、必ずまた食べに行く事を約束した。

………そんな話は今はどうでもいい。

つまり今は夏休みなのである。



「とは言ってもなぁ〜お前の篭手は色々謎だからな〜」


監督の言う通りである。

何だかんだ、俺自身もこの力の事をよくわかっていない。

ホントに殴ることしか能がないものなのだろうか。


「アリア〜」

「…何ですか?」


監督が呼んで、アリアがやってくる。


「お前、前に統夜の篭手はパワーがどうのこうの言ってたよな〜?」


監督のその言葉に俺はふと思い出した。

確かに言っていた。

確か巨大ロボットと戦った時である。


「はい。統夜さんの篭手は、発現時間が長ければ長いほど力を増してると思います」


監督の言葉にアリアはそう答えた。

しかし監督は


「それって気持ちの問題じゃないのか?」


以前監督は、能力は持ち主の感情に大きく左右される、そう言っていた。

おそらくそれだと監督は言いたいのだろう。


「なら、試してみるのが一番早いのでは?」


アリアはそう言った。




俺たちは外にいた。


「暑い〜」

「なら、家の中いれば良いだろ…」


嘆く神楽に監督が呆れてそう言う。

俺の前には唯依が作ってくれた岩の柱がある。

俺は篭手を発現する。


「あれ…?」


その時俺は気付いた。

篭手の甲の部分が展開したままなのである。


「何だ?あれ?」

「前の戦闘の時、篭手が形状を変えたんだよ」


監督の疑問に那央が答える。


「篭手が進化したのでしょう」


アリアがそう結論づけた。

俺は拳を握る。


「統夜さん、感情は高めないでください。ただ殴るつもりだけでお願いします」


アリアの言葉に俺は頷く。

そして


「ッ!」


岩の柱へ向けて拳を突き出した。

岩は呆気なく崩れた。


「それでは…しばらく待ちますか」


アリアがそう言った。



ガリガリガリガリガリガリガリガリ

ただ待ってても暇なので、唯依が作ってくれた氷でかき氷を作る。


「やっぱり夏はこれだよね〜」

「暑いもんね〜」


神楽と唯依が他愛もない会話をしている。

ふと隣を見ると白井がいた。

相変わらずフードとマフラーだった。


「お前大丈夫か?死ぬぞ?」

「問題ない」


俺の言葉に白井はそう答えた。

しかし、そんなはずはない。

滝の如く汗を流している。

(相変わらず謎だ…)

半分心配、半分呆れながら見ていた。




かき氷も食べ終え、時間的にもちょうどよかった。


「あれ、那央君は?」

「食い過ぎて腹壊したそうだ」


唯依の言葉に白井が答える。


「……黒貴君」

「何だ?」

「汗すごいけど…大丈夫?」


白井の服はもはや色が変わっていた。

こんな色ではなかったはずである。


「…………問題ない」


白井が唯依にそう答える。



目の前にはさっきよりも大きな柱がある。

アリアの予想通りなら、これが壊せても不思議じゃない。


「統夜さん、さっきと同じようにお願いします」

「はいよ」


アリアにそう返事し、拳を握る。


「ッ!」


さっきと同じように、ただ殴る事だけを考え、突き出した。

結果、柱はいとも簡単に崩れた。


「やはり、私の予想通り、あの篭手は常にパワーを上げてるようです。」


アリアが結論づける。


「じゃあつまり、時間をかけた状態で、更に感情を高めて攻撃したら、攻撃力が上乗せされるって事か」

「そうなりますね」


監督の言葉にアリアはそう答えた。


「先程から見ていましたが、ある一定のタイミングで、篭手の甲の部分が軽くが光ってました。おそらくあれが強化している事の証拠かと」


アリアはそう続けた。


「でもさ、パワーが上がるのはわかったけど、結局これ必殺技ではないよな」


俺はどこか納得がいかなくそう言う。


「じゃあさ、それっぽいことしてみたらどうかな?」


(えぇ〜…)

唯依がそんな事を言うが皆呆れていた。

ただ1人


「そっか、じゃああれやってみよう」


バカがいた。

普段なら呆れていたのかもしれないが、唯依が関わるとこれである。

唯依が再び柱を作る。

(そうだ…今ならあれができるかもしれない!)

俺は拳を握り、飛び上がった。


「ガン〇レット!」


そう言うと俺は腕を振り上げ、岩を切り裂くように振り下ろす。

岩がまっ二つになる。


『おぉ〜』


周りからそんな声が聞こえる。

しかしまだである。

腕を振り下ろした後、俺は身体を捻る。


「ハー〇ス!」


そう叫ぶと共に左足を振り上げた。

なぜ、この瞬間まで気づかなかったのだろうか。

俺の足に…装備など無い事を。

まっ二つになった岩の内の、上の部分に足は直撃した。

ゴキッ


「痛ッたぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」


(アホだ…………)

さっきまで良い感じだと思った自分が馬鹿らしく思えるほど、呆れるメンバー達だった。


「大丈夫、統夜君!?」


心配しながら寄ってくる唯依。

(この2人付き合わせて大丈夫だろうか…)

バカップルのような2人を見て頭を悩ませるメンバー達だった。


切﨑統夜の、必殺技習得への道は続く。

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