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巨人

学校では常に一緒にいると言われても過言ではないくらい俺と唯依は一緒にいた。

その光景を見て諦めたのか、唯依に言い寄ってくる人間は減った。

それでもやはり、唯依を狙う人間はいなくならない。

もうすぐ夏休みである。

(しばらくの間、ケネディさんのケバブ食えなくなるなー…)

そんなことを基地の前のベンチに座って考えていた。

今日も月が綺麗である。


「隣良いかな?」


ふと振り向けば、そこには唯依がいた。

横に寄ると、隣にひょいと座る。


「何か考えてた?」


唯依がそう聞いてくる。


「唯依はモテモテだと思って」


まぁ、間違った事は言っていない。

事実、何回告白を断ってる事やら。


「いや〜照れますな〜」


ノリで唯依がそんなことを言ってみせる。


「でもイケメンとかもいただろ?」


あえてそんなことを聞いてみた。


「だってそういう人たち皆…私の事を全然知らないもん。いきなり告白なんてされても…私の何を知ってるのやら」

「…………………」


(最初は一目惚れでごめんなさい)

そう心の中で呟いた。





リビングから眺めていた神楽がふと口に出した。


「あの2人、前より近くなってない?」

「ベンチなんて2人しか座れないんだからあんなもんだろ?」


それに大して那央はそう言うが


「違〜う!実際の距離じゃなくて心だよ…何かあったのかな…?」


言葉の意味を理解した那央。

そして那央はハッと思いつく。


「まさか…大人の階段を登ったのか!?」

「何…だと……」


那央と神楽は今日も懲りずにそんな馬鹿な事を言っていた。

それを見ていた(心が)大人の3人は、黙って見守っているのだった。





「あ、そうそう」

「…?」


唯依が話を切り出してくる。


「統夜君一人暮らしだったよね…?」

「あぁ…」

「あのね…」


唯依がモジモジしてる。

どうしたのかと思った。その時


「一緒に暮らさない?」

「ッ!!」


(ま、まさか!我が家が二人の愛の巣に!?)


「皆とここで」


(ですよねー……)

色々期待しすぎた自分が馬鹿みたいだ。


「急にどうして?」


気を取直して聞いてみる。


「統夜君が一人暮らしだって聞いた時からね…考えてはいたの。その…」

「………?」

「やっぱり、一緒にいた方が私も楽しいから」


少し照れながらそんな事を言われた。


「あ、でも無理にとは…」


唯依が言い終わる前に、俺は走り出し、基地のドアを開ける。


「監督!俺はここに住むぞ!」

「はぁ!?」


そう叫ぶ俺に、監督は無意識にそう答えていた。

俺の後ろから唯依は笑いながら着いてきていた。







翌日。

監督は唯依が頼むと呆気なく折れた。

結果、今日から俺はここで暮らすのである。


「お前ら〜買い出し行くぞ〜」


監督がそう言った。

本来、買い出しなんてアリアだけで十分である。

つまり…荷物持ちである。


「行こ〜行こ〜」

「はいはい」


唯依が俺の背中を押してくる。

そして全員が外に出た。

その時


「待てい!」


上からそんな声が聞こえた。

全員が見上げてみると、基地の上に誰かいる。

だが逆光で顔が見えない。

すると男は言った。


「戦いの空しさを知らぬ愚かな者たちよ


戦いは愛する者を助けるためにのみ許される


その勝利の為にわが身を捨てる勇気を持つ者


…人それを「英雄」という」


全員ポカーンとしている。

だが、監督は


「テメェ人様の家で何してんだ!」


怒りながらそう言う。

しかし、その男は


「貴様らに名乗る名前はない!」

『…………………………………』


(いや、聞いてねーよ(ないよ))

全員がそう思った。

急に男が叫び出す。


「来い!クラウダーマシーン!」


すると、手に着けた時計らしき物のスイッチを押す。

急にBGMが流れ始めた。

(セルフBGMかよ…)

全員がそう思っただろう。


「あれを見ろ!」


那央が上空を見上げて叫んだ。


『ん?』


全員が見たその先には、なんと巨大なマシーンが3機いた。


『何じゃありゃぁぁぁ!(何あれぇぇぇぇ!)』


全員驚愕である。


「とうッ!」


すると男はジャンプしてリーダー的な機体に乗り込む。


「いくぞ!クラウダーフォーメーション!」


男のその言葉と同時に、機体は変形し、合体する。


「完成!愛と勇気の使者!クラウダーロボ!Z!!」


決めポーズと共にそんな事を言っていた。

勇〇シリーズに出てきそうなロボットだ。

全員驚きを隠せない。

刺客なのだろうけど。

結界は前もってやつが張っていたようだ。


「な、何だかやりづれーな…」


ふとそんな言葉が口から出た。

まぁ、それでも構えるのだが…。

そんな中、さっさと終わらせようとした人間が1人。


「壱ノ型 空! 」


気がつけば神楽の速攻の斬撃が放たれていた。

斬撃がロボットの下半身に当たる。

……………呆気なく真っ二つになった。


「うわぁぁぁぁぁぁぁ!」

『………………………』


男の悲鳴と共に、ロボットは大地に落ちた。

呆気ない、未だかつて無いほど呆気なかった。

トドメをさそうとした時


「こうなったら奥の手だ!」


男はそう言った。

すると男はロボットを光に変え、再度各マシーンに形成した。


「来い!クラウダーマシーン!」

『そこから!?』




早送り




「完成!愛と勇気の使者!クラウダーロボ!Z!!」

『…………………………』


完全に呆れ返っていた。

しかし、男は先程とは違う行動に出る。


「見せてやる!本当の勇気の力を!」


そう叫んだ時、機体は金色の姿へと変わった。


「壱ノ型 空!」


再び斬撃が放たれた。

斬撃がロボットの下半身に当たる。

…びくともしなかった。


「こうも違うものなの…」


神楽が呆れ半分、無念半分だった。


「さぁ、本番はここからだ!まずはやっぱりこれ!ロケットパーンチ!」


男の掛け声と共に金色の拳が飛んでくる。


「くッ!」


唯依が岩の柱を作り出すも、呆気なく貫いてくる。

(あんなデカ物どうやって避けるんだよ!)

俺がそう思った時


「なら、これで!」


唯依が再び動く。

今度は自分たちの足元に嵐を巻き起こした。

すると全員が散り散りに吹き飛ばされる。

その直後、拳はさっきまでいた大地に大穴を開けた。


『っつ〜…』


あんなものに潰されるよりはマシである。

那央が3人までしか運べない以上、こうするしかない。

腕がロボットの元へ戻る。


「撃ち抜く…!」


反撃に白井がヘカトンケイルを放つ。

しかし、


「Iフ〇ールド全開!」


そう男が叫んだ。

ヘカトンケイルの射撃は機体に直撃すると思いきや、呆気なく消滅した。

対ビーム用防御兵器である。


『な!?』


(神楽と白井にとっては相性が悪い)

監督はそう判断した。

その時、男は突然


「お姉様、あれを使うわ。」

『…………………?』

「えぇ、よくってよ」

『……………………』


(何か1人芝居始まったぁぁぁぁぁ!)

全員が心の中で叫んだ。

だが、男は止まらない。


「スゥゥパァァァァァ!イナズマァァァァ!キィィィィィィ〇ィィィック!!」


その掛け声と共に、ロボットは足に稲妻を纏いながら落下してくる。


「ちょっ!どうすんだよ!」


俺の口から思わず出た。

そこに


「俺にまかせろ!」


監督の声が割って入る。

すると監督の大剣、ブリュンヒルデが輝き始める。


「いくぜ…!」


監督の表情が変わる。


「バニシングッ!カリバァァァァァァ!!」


その掛け声と共にブリュンヒルデから発した光がロボットへ向かう。

そう、リーチを延長する巨大で強力な刀身である。

その剣とロボットの足が激突……すると誰もが思ったであろう。

しかし、違った。

剣は敵の足ではなく、股に直撃した。


「あうぅ!♡♂まだまだぁぁぁ!」


一瞬、男から変な声が出たが、落下スピードは落ちても止まりはしない。


「俺のバニシングカリバーを股で押し返すだと!?」


ご自慢の技が効かない。

監督は相当なショックを受けていた。

このままでは落ちてくる。


「那央!あそこまで飛ぶぞ!」

「あんなところまで!?」


俺がそう叫んだ時、那央は情けない声を出す。


「そうしねーと全滅だ!唯依、いくぞ!」

「うん!」


監督が止めてくれてる間に攻撃するため、唯依を呼ぶ。

そして2人は那央を掴む。


「あぁ、もう!わかったよ!飛ぶよ!」


覚悟を決め、那央は飛んだ。

敵上空。


「唯依!風のサポート頼んだぜ!?」

「了解!」


その言葉と共に、俺は那央を離す。それと同時に唯依の風が俺を纏う。

まるで飛んでるみたいだ。


「いくぞ!」


俺は拳を握り、唯依の風に誘導してもらい、敵の頭部に接近する。


「くらえぇぇぇぇぇ!」


力いっぱいに右腕を叩き込む。


「ぐっ!!」


手応えはあった。

しかし、相手が悪かった。

そのあまりの硬さに、右肩が外れた。

攻撃を与えた事を確認した唯依は、俺を一度自分たちの元へ戻す。


「大丈夫?」

「肩をやっちまった」


心配する唯依に俺はそう答える。

(こいつバカだが…強い!)

俺たちは未だかつて無い程のピンチに陥っていた。

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