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過去と進展

「キョウハヨメサンイナイネ?」

「嫁じゃないですよケネディさん」


(できることならお嫁さんになってほしいけど)

今日もケバブである。


「ズッコンバッコンシタネ?」

「してないですよ」


(できることならズッコンバッコン…っていかんいかん)

この暑さのせいで思考がまともじゃない。

季節も夏本番に入ろうとしている。


「ズッコンバッコンシナイトキモチツタワラナイヨ?」

「順序ってものが…」


(いきなりしようものなら、そいつはただ、したいだけだ。)

それにしても暑い。

今日は何度だろう。

蝉もうるさいくらいに鳴いている。


「はい、500円」


500円玉を出す。


「ハイ、チョウド!マタヨロシクネ!」


ケバブを受け取っていつもの場所へ歩きだす。

その場所に着くと唯依がいた。


「別にわざわざ暑いところで食べる必要ないんだぞ?」


それに対して唯依は微笑みながら


「私がどこで食べようと私の勝手だもん」


まぁ、確かに。


「でも、俺とはいつでも食えるじゃん」


俺が基地に行けば良いだけである。

しかし


「2人っきりはここぐらいでしょ?」

「え……あ、あぁ…そうだな」


2人きりという言葉に少し戸惑った。


「俺といたら友達できねーよ?」


ふとそんな言葉が出ていた。


「…何で?」

「見たらわかるだろ?俺は相手されないの」

「何か理由があるの?」

「まぁ、ね」


今なら、大丈夫。

俺は1人じゃない。

そう思えたから、俺は語り始めた。









昔からヒーローに憧れていた。

ヒーローに憧れる少年だ。

そりゃ、活発に決まっている。

子供の頃なんて、皆ヒーロー役をしたがる。

故に敵役なんていない。

だから、よくそこの見えない敵を倒していた。




ある日、ある事故が起きた。

気がつけば、辺りは火の海だった。

誰もいない。ただ自分だけがいた。

その事故の前後は覚えていない。

気がつけば孤児院にいた。

孤児院の人からは両親は亡くなったと聞いた。

その時の友達の名前を出しても、誰一人生存を確認できなかった。

その事がトラウマとなり、すっかり口を開かない人間になった。





中学の時だった。

中学から一気に同じ学年の生徒が増えた。

未だ会ったことない人間は、俺という人間を知らないため、最初は声をかけてきてくれる。

だが、そんなものは時間の問題だ。

そんなやつもいた。

そう言われる存在となった。

それでも少なからず話相手はいた。

それだけで俺は十分だった。


しかし…。

ある日、変な噂が流れ始めた。

俺はそんなもの、一切見覚えがなかった。

しかし、噂は一気に拡散し、気がつけば俺を構う人間は誰一人いなかった。





「どんな噂だったの?」


唯依が聞いてくる。


「よくある話さ。エロゲーとかのやましい物を持ってるっていうね。」


俺は話を続けた。





別にクラスの人気者だったら笑いで済むだろう。

でも、普段全然喋らないやつがそんなレッテルを貼られたら笑い話じゃなくなる。

気持ち悪がられ、危険視される。


人間、特に学生なんてものは平気で噂を信じる。

誰かが「俺が見た」なんて言ったらそれで終わりである。

誰が弁解して信じるだろう。

実際、誰も信じなかった。

「俺が見た」なんて、あまりにいい加減な証拠を皆信じるのである。

人間なんてこんなものか…そう思った。


高校に入ったところで変わらない。

こんな田舎だ。

ほとんど知った顔が同じ高校に入る。

だから中学の時から何も変わらない。

俺は…人を信じなくなった。







「…………」


唯依の表情が暗くなる。


「ごめんな、暗くなっちゃって」

「ううん、聞いたのは私だから」


沈黙が流れる。

悪い空気を作ってしまった。

そう思ったとき


「良いよ…私は」

「……?」


唯依がそう言ったが、言葉の意味はわからなかった。

そして唯依は決心がついたように言った。


「ここで友達…できなくても良い…」

「え………」

「統夜君を裏切ってまで……今ある関係を壊してまで…私は新しい関係なんて欲しくない……」

「小鳥遊さん……」

「誰も…統夜君の良いところ…何にもわかってないんだもん…」


胸が熱くなるのを感じた。


「そ、それにね…例えばだよ?」

「………?」

「と、統夜君が…その…エッチなもの持ってたって私は構わないよ?だって男の子だもん」

「……うん」


少しの沈黙が流れ


「あと……」

「………?」

「そんな事がどーでもよくなるくらい、私は統夜君の良いところ知ってるよ?」

「…ッ!」


笑顔でそう言われた時


「ッ!?」


俺は咄嗟に彼女を抱きしめていた。


あまりに急なことに、ビクリと身体が反応した唯依だったが、ただ優しく受け止めてくれていた。

勝手に溢れてくる涙が止まるのは、少し時間がかかった。


涙が収まった頃には、ふと我に返り、ゆっくり離れる。


「ご、ごめん」

「う、ううん、大丈夫」


今となっては、さっきまでの状況が恥ずかしくなり、2人して赤くなっていた。


沈黙の中、今、唯依は何を考えているのか。

それが気になった。

そして、自分がより一層、彼女のことを好きになっていくことに気づく。

その心に近づきたくて、そして恩返しの気持ちも込め


「あのさ…」

「………?」

「唯依って……呼んで良い?」

「ッ!……うん♪」


この暑さがどうでもよくなるくらい、彼女の笑顔が愛しかった。





「げッ!」


そんなこんなしてるうちに、次の授業前の予鈴が鳴った。

ここから教室まで距離がある。

走って戻ろうとした時、その手は自然と彼女の手を引いていた。

その行動に本人は、一瞬戸惑うも、決して拒否する事もなく、その姿がたくましくすら思えた。

そして自分を引いてくれるその手を、少女はゆっくり握り返した。



廊下を駆け抜ける中、俺に怖いものはなかった。

手を握る2人を見て学校中大騒ぎ。

そんな事はどうでもいい。

例え学校中を敵にまわしても

(俺には…支えてくれる人がいる)






一方、食堂では


「キョウハヨリイッソウアツイキガスルヨ」

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