6/9
追憶1
「洋介君どうかしたの?」
彼女の鳶色の瞳に惚けた顔が映っていた。
「いやなんでもないよ」
ずっと彼女の目を盗み見ていた所為で疑問に思われたようだ。彼女はこちらに向けていた目をテレビに戻した。
くだらない番組を見るより、彼女の目を横からでも見ていたい。それを抑えて彼女にならいテレビを見る。でもすぐにどうでもよくなってしまう。
「面白い?」
彼女の邪魔をするとは思ったがそう聞いた。
うーん、と彼女は唸った。それから目をテレビに向けたまま答えた。
「面白くはないかなぁ。でも、変な感じ」
「変?」
「うん。見えるって変な感じ」
彼女は淡々とそういった。
彼女が眺めるテレビにはどこかの森が映し出されていた。