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1.6

「昨日最後に里絵に会ったのは誰?」

仕切りを名乗り出た里絵の一番の親友であった亜未が皆に問いかける。

「中崎さー、昨日自由時間の時里絵と何してたんだよ」

「なんの話だ」

山倉は、椅子に体を預け彼を挑発するようにそう告げた。

「俺見てたんだぜ? お前が昨日、自由時間の時に里絵に声をかけられてたの。しかも、お前と戻ってきた里絵は泣いてたんだぜ? なぁ、昨日何話してたか教えてもらおうか?」

口元を歪めながら、中崎を挑発する山倉。そんな彼を一瞥し、中崎はメガネを指で持ち上げ「……いいだろう。あれは、昨日亀野が永見先輩とこの辺りを散策しようと声をかける前に永見先輩は、神前に声をかけていた。そのことにひどくショックを受けた彼女は、俺の元へやってきた」



「ねぇ……中崎くん、少しいいかな」

自由時間になり、リビングで海を見ながら執筆作業をしようとしていた中崎に、彼女は俯きながら、相手の顔色を伺うような声で彼に尋ねた。

「いいけど、永見先輩は?」

「隼人くん、最近冷たくて……。さっきも、梓と話したいからって……」

「そう、俺は暇だから別にいいけど。どこで話す?」

執筆のために広げたノートパソコンを閉じながら、彼は言う。

「外に出てもいい?」

「了解、パソコン部屋に置いたら行くから少し待っててくれ」

「じゃあ、玄関で待ってるね」

「ああ」そう、中崎は返事をしてパソコンを部屋に置きに戻る途中。二つ隣の部屋から声が聞こえた。

『…………入学してからずっと好きなんでしょ?』『………一人を好きでいられる君が好きなんだけど』あの部屋にいるのは、部屋の主である永見と会話の内容からして梓だと悟った中崎。彼は知っていた。彼女が自分に好意を抱いていることを。ーー気づかないふりをして、彼女を傷つけていることを。

気に入らないーーふと、彼は我にかえる。気に入らない?なにが?ーーあいつが永見といることが? これが嫉妬だと認めたくない中崎は、永見の部屋から聞こえてくる会話など忘れるように里絵の元へ足を進めた。


「お待たせ」

「ううん、大丈夫。行こう?」

「ああ」

玄関の少し手前にある太い柱に彼女は寄りかかり、中崎を待っていた。彼女に声をかけ、別荘の周りを散歩するために外へ出る。

「ねぇ、前から気になってたんだけどさ。なんで梓にだけ下の名前で呼ばせてるの?」

中崎は人の好き嫌いも多ければ、彼の周りにいる人間は彼にとって有益であると判断された人物。また彼を中心に友人、知り合い、顔見知り、赤の他人と分かれておりその中でも何分割とランクがある。下の名前なんて彼女にしか呼ばせなさそうなのにと、里絵は疑問だった。

「あー……それはせめてもの償いっていうか免罪符、なんというかそんな感じ」

「……? 良く意味がわからないんだけど」

問いかけに返ってきた言葉はよく分からず、彼女は首を傾げる。

「あいつは俺のことが好きなのは知ってる。……けど、俺があいつの好意を知らないフリしてあいつを傷つけていることも重々承知だ。俺のせいで、体を壊したのにそれでも尚俺のことを好きいるあいつにせめてもの免罪符だよ」

そう、彼は先ほどまでの晴天とはうってかわり、淀んできた空を見上げながら呟いた。

「ふーん……中崎くんてさ」

「ん?」

「……あー、なんでもないや。それよりさ」

里絵は言いかけていた言葉を飲み込み、話題を変えることに。

「ながみんってさー、何考えてるのかたまにわからなくなる時があって」

「永見先輩が?」

「うん、たまに何か物思いに耽ってる時があってさ」

「浮気だったりして」

中崎は、半ば冗談のつもりだった。ーーが、里絵はこの時を待っていたとばかりに口元を歪める。


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