1.2
リビングにある、大きな丸いテーブルに八人で囲い座っている。入り口に一番近いところから時計周りに梓、綾菜、亜未、永見、里絵、山倉、大田、中崎の順で座っている。
「食料は一週間分亜未の使用人さんが持って来てくれたからなんとかなるけど、それを作る人がいないので当番制にしたいと思います。料理が苦手なのは綾ねぇと……」
「待って」
綾菜の制止など聞きもせず、梓は苦手な人いる?と続けた。
「待って」
「もう、何綾ねぇが料理苦手なのはここにいる皆知ってるけど」
彼女の言葉に頼むから大人しくしててくれという視線を送ってくる6人。そんな彼らに苛立ちを覚えながらも「わかったわよ、大人しくしてればいいんでしょ」と、口を尖らせる。
「すまんが、俺も料理はちょっと苦手でな」
大田が手を挙げると、他の男子三人が「でしょうね」と声を揃える。大いに頷かれたことが不満だったのか「何故、小生が料理下手だというのじゃ」と三人を問いただす。
「いや、だって……塩おにぎりに羊羹さしてコーラ注いだり……」
「チンごはんに、惣菜のごはん、塩おにぎりでお昼にしてたり」
「そんな人が料理上手だとはとても思えない……」
大田の食事情を知らない女子達は、羊羹の下で既に引いていたので、丁重に大田には調理係から外れてもらうことにした。
「あとは、料理苦手な人いる?」
「俺、パス」
「あ、俺もパス」
山倉と永見も手を挙げたので、男子には何か別なことを頼もうかと思ったが、中崎が徐に席を立ち部屋から出て、食料庫から材料を何個か持ってくると、キッチンに立ち調理を始めた。10分足らずで出来上がったのは、きのことほうれん草の和風パスタだった。
それをお皿に盛り、配膳すれば皆恐る恐るそれを口にする。
「あ、おいしい……」
「これは、いける……」
「中崎くん、料理出来たんだね」
里絵がそう言うと、中崎は「まぁ家、親いないようなもんだから」とだけ言ってパスタを口に運んだ。
「じゃあ、当番は今日の夜は私と綾ねぇで、明日の朝は里絵と亜未、昼は私と春真くんってかんじの順番でいいかな?」
彼女がそう問えば、「異議なーし」と全員分の答えが返って来たので梓は、じゃあ今から夕飯まで自由時間と言い手を叩く。
各々がそれぞれの行動に移すため立ち上がると、里絵が肩を落としその肩を亜未に抱えられながら部屋を出て行った。里絵が肩を落とした原因は、梓に「時間あるかな……?」と、声をかけたこの男にあるのだろう。
「大丈夫だけど、里絵は? あの子と遊ばなくていいの?」
「その里絵ちゃんのことでさ……」
永見は周囲を気にするように内緒話のような小さな声でそう言った。
「……どこで話すの?」
「僕の部屋でいいかい?」
「わかった、ここを片付けたら行くよ」