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それから、三人で電車に乗ったのだがボックス席しか空いておらず、梓と中崎が隣に座り綾菜が梓の前に座るという位置で納得したものの、梓と綾菜が話に花を咲かせていれば、窓に寄りかかり寝ている彼にうるさいと一喝され、たまたま彼の頭が梓の肩に乗るようなものなら、綾菜が彼の鼻をつまみ、中々不穏な車内であった。途中の駅で大田、山倉、永見、里絵の順番で乗って来て最終的には永見が持っていたトランプで大盛り上がり。
二時間ほど電車を乗り継ぎ、目的の駅へと到着した。
改札から一歩出れば、都会の夏とはかけ離れた気持ちの良い風が吹き、太陽も穏やかに木々や草花を照らしている。森から聞こえる蝉の声、田園から聞こえる蛙の声がハーモニーを奏で市民会館で行われる学生の合唱コンクールのよう。都会がブラック企業ならば、ここはホワイト企業と言ったところか。
ここからは、亜未の車で送ってくれる予定になっている。改札を出ればリムジンの前に立ちスマホでゲームをしている亜未が立っていた。
「亜未おはよ〜」
「おはよ〜。みんな一緒だったの?」
「うん、電車の中でひと遊びしてきたよ。写真見る?」
「見る見る!」
里絵が車内で撮った写真を見せると、亜未は「私も電車で行けば良かった〜」と少しがっかりしていた。
「まぁまぁ、これからいっぱい写真撮ればいいことじゃん」
「隼人くんいいこと言うね〜」
「でしょー」
永見と里絵がいちゃつき始めたので「はいはい、その辺にして車に乗って」と亜未が促し、車に乗り込んでいく。駅から港まで10分、そして港から小島家が所有している無人島までは三時間ほどかかる。丁度着いたらお昼という頃合いだ。
船の中ではそれぞれ思い思いに過ごし、八人は無人島へと足を踏み入れた。
無人島は広くもなく狭くもなくといった感じで、ビーチの目の前に別荘があり、その奥には山がある。
「着いたー!」
「別荘、思ってたのよりも大きい!」
「こんなお家にすんでみたーい」
「ビーチもいい感じじゃんね」
足を踏み入れた無人島に思い思いの感想を述べながら彼らが一週間生活する屋敷へと足を進めていく。
「ナンバープレートが貼ってある部屋は客室になってるから好きに使っていいよ」
玄関を入ると目の前に二階へと通ずる階段があって、それを上がると円を描くように八つの客室がある。一階は玄関を入って右手にリビングとキッチン、食料庫があり、左手には浴室やトイレなどがある。
「じゃあ、俺1で」
「あたし8がいいなー。隼人くんは7ね」
「うん、いいよ」
「じゃあ小生は5といきますかな」
「俺6で」
「梓、どこがいい?」
「うーん3かな」
「じゃあ私4ね」
「あ、じゃあ私2か。おっけー。じゃあ鍵渡すね。中崎が1で、私が2、梓が3で綾菜先輩が4、大田先輩が5で、山倉が6、ながみんと、里絵が7、8ね」
「各自部屋に荷物を置いたら、リビングに集まって一週間の係りを決めるね」
梓の言葉にそれぞれ返事をし、各々の部屋へと入っていった。