第七話
街には柵があり、その中程に門がある。事務所を兼ねていて、そこで中に入る者を選別しているようだ。
彩斗は、自分の考えに忙しくて周りが見えていなかった。ぼーっとしながらタイグルオーガを門へと無意識に運んでいた。
門に近付くにつれ、周りがざわざわと騒がしくなってくる。それに一人だけ気付いてるイアンは軽く溜め息を吐いた。
この街でも何処でも、タイグルオーガは強大な脅威だ。襲われたら無事な街はほぼないだろう。
そんな化け物が死んだ姿で運ばれてきたのだ。そりゃ動揺するだろう。
「イアン! 無事だったか。そいつは!?」
「やあ、ベル。ありがとう。えっと、なんて説明すればいいかわからないんだけど」
知り合いの門番に話しかけられて、イアンは困ったように彩斗を盗み見た。考え込んでいる姿は無防備で、本当にタイグルオーガを倒すだけの力があるようには見えない。
全体的に彩斗は少年の域を出ておらず、非力な子供にしか見えなかった。
だが、この世界では成人は15歳だ。彩斗は大人の枠組みに入る。
イアンは林道での出来事を全て話した。所々嘘を交えてだったが。
「そんりゃ、イアンはそいつがタイグルオーガを倒したっていうのか? 嘘だろう」
「信じられないかもしれないけど事実だよ。アヤトが倒したのを俺はちゃんとみたし、真実だ。それよりこのことをギルドに早く知らせてくれないか? 俺たちはこいつを運ぶから」
「わ、わかった! 入れよ」
「ありがとう」
門を開けてくれた門番に会釈して彩斗を促す。生返事だが殆ど流れ作業的に歩き出す彩斗に、少し心配になった。
悩みがあるなら相談して欲しい。たった数時間前に会ったばかりの関係だが、イアンは彩斗のことを本当の友達だと思っていた。
全てを話せないだろう事情があるんだろうと漠然と予想していたが、それでも知りたいと思うのは本当に信じて欲しいから。
彩斗から感じる頼るものがなにもないという雰囲気が危うくて、見ていられないものを感じさせた。
「おい。なんだあれ!?」
「た、タイグルオーガ!?」
「なんで」
ざわざわと騒がしい街の中をギルドに向けて歩く。
彩斗は、結局一度も口を開かなかった。
ギルドに着かなかったよ(´・ω・`)
次はお待ちかねのギルドです(*´∀`)