第六話
お久しぶりです!
短いですがどうぞ。
それからは何事もなく風の谷“ミスティア”に着いた。
彩斗とイアンはますます仲良くなってこの世界の常識に関して知ることになった。
草原の先にはレンガ造りの家が立ち並んでいて、何となく昔みたジ○リの映画の風景を彷彿とさせた。
使い込まれた風車が所々に点在していたが、何かがおかしい。
何だろうと悩んでいたら、やっと気付いた。
回っていないのだ。風車が。
今も微風程度の風しかない。
「い、イアン! ここ風の谷だろ? 何で風が……!」
「そうなんだ。最近ずっとこんな調子でさ。風の大精霊が心配だって専らの噂だよ」
イアンが弱々しい風に驚愕している彩斗に、何でもないことみたいにあっさり説明する。
それに、彩斗は一瞬ドキリとした。
自分の正体がバレてしまったのではないかという不安。
それが、イアンの態度に醸す影響はどれほどあるのだろうか?
彩斗にはそれがわからなかった。
「アヤト? どうした」
「えっ、あ……」
ぼうっと考え事をしていたせいでイアンが話し掛けているのに気付かなかった彩斗は、心臓が全速力でバクバク鳴っているのに焦った。
「いや、何でもない」
「そうか。ならいいけど。それにしてもミスティの渓谷は大丈夫だろうか。最近突風で誰も近付けないらしいんだ」
「突風?」
イアンがタイグルオーガを担ぎなおしながら呟いた言葉に、彩斗はぴくりと反応した。
そこは、この世界での重要なスポット(大精霊の在処)である。
「ああ。風が荒れ狂ってて中に入れないらしいんだ。風の大精霊を崇めてる“ミスティア”は大騒ぎだよ」
「そうなんだ」
その話を聞いて、彩斗の気持ちは急いた。
早く大精霊を元の居場所に返さなければと。
「取り敢えずアヤトのギルド登録が先だな」
「……ああ」
彩斗はすっかり忘れていた。
自分の使命に捕らわれて、自分がこのあと巻き起こすであろう騒動のことをーー。






