第五話
道中暇だったので、冒険者ギルドと魔獣に関して詳しく聞いてみた。
イアンは面倒くさがらず、詳しく教えてくれた。
「冒険者ギルドってどんなところなの」
「登録自体は難しくない。登録は無料だし、最初はFランクの依頼から始めていくのが主流だな。Dランクから討伐系の依頼も増えてくる。ただ低ランクの依頼は報酬が少ないから高レベルの依頼を受けて死ぬケースも多々ある。要は自己責任ってことだ」
「そっかあ。あまりランクは上げたくないな」
素直な感想を漏らしたら、イアンが驚いて訊ねてきた。
「えっ!? 何でだ? お前ならランクSになれるぞ」
「いや、だって面倒くさいし」
「いやいや。隠し通すのは無理だからな? タイグルオーガ運んでるだろ? コイツこうみえてランクBの魔獣なんだよ。だから、ギルドに報告して登録したら確実にランクアップさせられるぞ」
なんだそれ面倒くさいと思いながら、彩斗は魔獣のランクも聞いた。
「ちっ。それより魔獣のランクってどうなってんの? 人と同じ?」
「いや、魔獣にはD~Aと災厄級のSだけだ。DランクはCくらいの奴らでも狩れる。CランクになるとBランクなら一人で狩れて、BランクはAランクかBランク以上の奴がパーティーを組んで倒すくらいだ。AランクはSランクの奴らくらいしか狩れない。Sランクの魔獣になると単体撃破はまず無理だ。出来るとしたら幻のZWランクくらいかな」
「そっかあ。じゃあつまりコイツを消し炭にして証拠隠滅したら、ランクアップしなくて済むね」
ややこしい解説で、ヤバいのを余裕で倒してしまったことを知って、彩斗は証拠隠滅を謀ろうとした。
それを察知したイアンに止められてしまったが。
「おい、アヤト。さっきからなんか黒くないか?」
「気のせいだよ! それよりこんな危険な魔獣が出るってあそこら辺って危ないの?」
さり気なくタイグルオーガを回収されてしまった彩斗はふてくされた。
できるだけ目立たずに活動したいのだ。
彩斗には使命がある。大精霊を各地に戻すという役割が。
各地を転々とするのに、情報が集まりやすそうで因みに働きやすい冒険者ギルドを選んだのは間違いだっただろうか?
考え込んでいると、イアンの溜息が聞こえた。
「それだよ。あそこら辺は普段魔獣なんて出ないんだ。出ても野獣くらいで。だから驚いていた。だが、彩斗は地図は持っているのに、その周辺の治安とかを知らなすぎる。正直心配だよ」
「うーん、そうなんだよなあ。まだまだ知らなきゃならないことがありそうだし」
「教えられるところはオレが教えるし、取り敢えず精霊術の無詠唱だけは止めとけ」
そうアドバイスしてくれたイアンに、ふと気付いてしまった。
彩斗はこれから、危険な旅に出なければならない。
そのとき、果たしてイアンを巻き込んでいいのだろうか?
イアンには家族がいるかもしれないのに……。
そう考えたら、すっと胸が冷えた。
「おーい、アヤト!」
笑顔で呼ばれて、彩斗は駆け出した。
思いを振り切るように、ぐっと--。
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