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大精霊に愛された少年の異世界放浪記  作者: 桜 花美
第一章 風の谷“ミスティア”
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第四話

強化月間で、できれば毎日更新したいと思います。

よろしくお願いします。


 暫く反応を伺っていたのだが、いつまでも返事がないのに流石の彩斗も心配になってきた。


 襲われていたのは、まず馬車に乗った男の人と小さな女の子だ。意外に綺麗な身形をしているから、身分が高いか裕福な家系なのだろう。

 彼らが乗っていた馬車は魔獣モンスターに突撃されたらしく、激しく大破している。唯一の救いは馬が生きていたことだろうか。

 兎に角そんな大破した馬車をみて、本当に間に合ってよかったと思った。


 そして、もう一人は冒険者風の青年。茶髪は短く切られており、癖毛なのか髪があちこちに跳ねている。顔は精悍で責任感が強そうで瞳は碧眼。ぼろぼろになっているが、鎧の下に怪我があちこち見える。

 ずっと魔獣相手に耐えていたのだろう。今すぐ怪我をみた方がいいかもしれない。倒れているし。


 声をかけようとそっと近付くと、まず最初に冒険者風の少年が我に返ったように飛び起きた。


「あ、あんたは……」

「俺は彩斗。神代彩斗。あんたは?」


 なんとか口を開いた少年だったが、飛び起きた途端に倒れそうにふらついていた。それを慌てて支えながら彩斗が答えると、自分がまだ名乗っていなかったことを恥ずかしく思ったのか、慌てて名を名乗った。


「オレはイアン・キース。イアンと呼んでくれ、カミシロ」

「ちょっと待て。悪い。こっちではアヤト・カミシロが正しい。ファーストネームはアヤトだ」

「そうか。アヤト、助かった。ありがとう」


 友好的なイアンに好感を持って彩斗は起き上がろうとしていたイアンを寝かした。怪我の状態を見ようとしたのだ。声をかけようとしたら機先を制されたが。


「君たち、大丈夫かい!」

「お兄ちゃん大丈夫!?」


 今まですっかり忘れていた。怪我がなさそうだからとほったらかすなんて全く何をしてるんだか。


「すみません。彼は大丈夫ですよ。ただ怪我の状態を見たいので少し待って頂けますか?」

「ああ、そうだな。大丈夫かい、君?」

「お兄ちゃん大丈夫? お兄さんありがとね。お兄ちゃん助けてくれて」

「どういたしまして。困ったときはお互い様さ」


 イアンに確認して怪我の状態を診た彩斗は、これは酷いと思った。爪に抉られたのか血が生々しい傷痕に焼き付いている。

 雷系統の魔法を使っていたのかと漠然と考えながら、精霊術の光系統初級“ヒーリング”を傷にかける。

 あっという間に綺麗な状態に戻った腕を矯めつ眇めつ観察していると、彩斗が無詠唱で精霊術を使ったことに、イアンたちが茫然と彩斗を見た。


「…………っな!? 無詠唱!? 精霊術だよな、今の……」

「君は一体何者だい? タイグルオーガも一人で倒すし!」

「お兄さんスゴい! まるで御伽噺に出てくる魔術師みたい」


 一気に質問責めにあった彩斗は、漸く自分の力の異常さに気づき始めた。

 何故今まで気付かなかったのだろう。知識が偏りすぎていることに、彩斗は初めて焦りを覚えた。


「俺は精霊の加護が強くて。だからですよ」

「そうなのかい?」

「はい」


 親子が納得したようでほっとしていたから気付かなかった。

 イアンが興味深そうな視線を彩斗に向けてることに。


 親子の馬車も直してあげたら、深く感謝された。それに喜びも一押しだ。

 この付近には街があるらしく、イアンが案内してくれることになった。タイグルオーガも始末をしなければならないし。

 本当はその場で焼き払おうとしていたのだが、イアンに「ギルドに報告しなければならない。でも信じて貰えないかもしれないから証拠に提出したいんだ」と言われ思いとどまった。

 これ以上目立っても困る。それならギルドに提出するのも悪くない。

 親子と別れてイアンのことを聞く。


「そうなんだ。やっぱり冒険者なんだね」

「ああ。アヤトは精霊術士か?」

「うん。でも、冒険者にも興味あって。そういえばイアンって何歳? 同い年くらいに見えるけど」


 彩斗の問いに、イアンは笑って答える。


「18だよ。アヤトは?」

「え、うそ、年上? 俺17だ」

「あはは。アヤトは何だか綺麗な顔してるし、若く見える」


 道を歩きながら話していると、コンプレックスを指摘されてふてくされた。


「褒めてねえだろ」

「そんなことねえよ」


 ふてくされた彩斗を宥めるイアン。それに、二人して顔を見合わせてプッと吹き出した。


「なあ、気のせいだったら悪いけど。アヤトってちょっと一般常識抜けてないか?」

「あー……まあな。ちょっと事情があって」


 さり気なく誤魔化すと、イアンが真剣な表情で頼んできた。


「わかった。いつか話せるときが来たら教えてくれ。だからさ、よかったら仲間にならないか?」


 いきなりの誘いに、彩斗は硬直した。けれど、段々喜びが勝ってくる。

 本当は寂しかったのだ。知っている人は誰もいなくて、たった独りきりで。

 だから、こんな得体のしれない奴に『仲間になろう』と言ってくれたのが嬉しかった。


 だから、答えはもう決まってる。


「俺でよかったら」


 楽しくなりそうだ。






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