第9話 初対面と、個別チャットの洗礼
ふふふ……。
俺は今、最高に爽快な気持ちだ。
むしろ興奮していると言ってもいい!
ようやくゲーム内で、
実際に会える人とコンタクト取れるとは……。
長かった。
マジで長かった。
これはもう試練だ。
フレンド0の呪いを解くための試金石だ。
さて、久しぶりのログインだぜ……。
待ち合わせ場所は……ああ、最初の町か。
そうか、俺が初心者だから気を遣ってくれたんだな。
この、きめ細やかな配慮……。
実際、1通目のメールで
「どこで会うか」まで考えてなかったもんな、俺。
なるほど。
これが経験ってやつか。
今、確実に『掲示板LV』上がった気がする。
町の隅、と……。
人も少なくて丁度いい。
ここもまた、気遣いポイント高い。
……お?
いたいた。
多分、あの人だよな?
種族も同じだし……。
どうする?
いきなり声かけるか?
いや、個別チャットの方がいいのか?
え、どっちが正解なん?
そもそもフレンドいたことないから、
正解ルートが分からねぇええええええ!
……待て、落ち着け。
基本は挨拶だ。
それだけやっとけば、あとは流れ。
じっちゃんも言ってた気がする(幻覚)。
よし……いくぞ。
一般チャットでいくか。
いきなり個別チャットは失礼かもしれんし……。
「こんにちは~」
……あれ?
返事ないな?
おかしいな?
ちょっと時間早かったか?
焦りすぎたかな、俺としたことが……。
まだ約束の時間まで10分あるしな。
そもそも、
この人、種族同じなだけの別人だったらどうしよ……。
関係ない人に挨拶して
スルーされてるパターンある?
……いや、あるな。
こんな町の隅だし、
放置勢の可能性も全然ある。
俺もたまに放置するし……。
10分前は、さすがに早すぎたか。
……デートじゃないんだからな俺。
アホすぎる。
仕方ない。
この人が放置勢であることを祈りながら待つ。
――と、その時。
ピロリン♪
……!?
な、何か音鳴った!?
個別チャット:A
「すみません!
ちょっと飲み物とってきてました!
掲示板の○○です!
こんにちは!」
びっくりした……。
個別チャット、
音鳴るんかよ……。
心臓に悪いわ。
いかん、返信だ。
……あれ?
個別チャットの打ち方分からん。
これか?
これか?
焦って変なメニュー出てくる……。
やばい。
これだ!
「こんにちは!
全然大丈夫です!
俺も今きたところです」
Aさん
「良かったw
ああ、種族○○って聞いてましたけど、
あまり皆してないキャラクリしてますね?
良いと思います!」
俺
「ありがとう!
キャラクリはなんとなくで作ったのですが、
Aさんに気に入って貰えてよかったです!」
Aさん
「初心者さんて聞いてたけど、
ちょっと色々見てもいい?」
俺
「え?
あ、はい、全然どうぞ!」
Aさん
「ふんふん……。
LVは○○で、その職はメインなの?
うんうん……ああ、メインなのね。
じゃあ今ってメインストーリーここくらいかな?
丁度面白いとこだよね!」
俺
「そうなんですよ!
(やばい、物語スキップしてるとは言えない雰囲気出てる)
今ちょうど面白くて、はははは!」
Aさん
「うんうん、そうだよね!
物語的に丁度いいとこだと思う!
ところで俺さんの装備なんだけど……
こんなアイテム持ってる?」
……ん?
突然の、初トレード画面。
しかも。
99個のアイテムが、
3種類くらいドーンと並んでる。
俺
「このアイテムは……?
こんなに大量に?
何をするものなんですか……?
すみません、見たことなくて……」
Aさん
「それはね、
おしゃれするときに使うアイテムなんだよ!」
……おしゃれ、だと?
リアルで避け続けてきた
“おしゃれ”という概念を、
まさかゲーム内で突きつけられるとは……。
いや、待て。
なんで今、おしゃれ?
初心者がまずやること、
そこじゃなくない?
……この人、
思ったよりガチ勢なのでは?
俺のフレンド0人生、
ここから別ベクトルで試されてる気がする。
――続く。




