第54話 笑い
次の日、アリスはログインしなかった。
その次の日も。
また、その次の日も。
ははは。
もう、笑うしかなかった。
笑えている時点で、
もう俺はズレている。
あの楽しかった日々を思い出す。
そんな資格もないのに。
アリスとの出会い。
アリスが初めて俺に怒ったこと。
相方になりたいって言ってくれたこと。
表ルートを、一緒に歩いてくれたこと。
そんな人を――
ログインさせなくした。
ははは。
笑うしかなかった。
一週間が経った。
アリスは、まだログインしていない。
何も手につかず、
ただいつもの時間にログインしては、
フレンドリストを確認する。
今日も、インしてないか……。
もう、ログインしないかもしれないな……。
ピロリン
「俺さん、こんばんは」
……!
心臓が止まるかと思った。
アリスからだ。
謝らないと――。
「この一週間、ずっと考えていました」
「私は、私なりに頑張っていました」
「リアルが忙しくて、本当はイン出来る状態じゃなかったの」
「それでも、俺さんに会いたくて、話したくてインしていました」
「それが楽しくて……でも、インしたらログアウトしたくなくて、時間だけが削られて……」
「リアルに影響が出てきて……私、何やってるんだろう……ちゃんとしなきゃ、って思う自分がいて」
「俺さんにペアリングのことを言われた時も、ログインしてすぐだったから、変更する時間が無かっただけなの」
「でも、結果的に俺さんを傷つけてしまって。ごめんなさい」
「でも……もう、元には戻れません。張りつめていた糸が切れちゃって……」
「リアルを優先したいので、しばらくログインはしなくなります。だから……」
「私との相方を、解消してください」
「俺さんは、今きっと『なんで?』と思ってると思います。でも、もうそれを私は受け止められない」
「ごめんなさい。今まで、ありがとう」
そう言って、アリスはログアウトした。
ははは。
謝ることさえ、許されてなかった。
謝れると思ってたのか、俺。
バカだ。
アリスの状況も理解してなかったのに、
勝手に「自分のせいだ」と思い込んで。
ははは。
笑っているのは、ズレているからじゃない。
ズレている自分を、
ずっと、笑っていただけなんだ。




