第50話 ウザMAX
ログインした瞬間、
俺はもうダメだった。
「おはよー!」
……無理。
いきなり無理。
たったそれだけの挨拶なのに、
昨日と意味が違いすぎる。
「お、おはよー!」
少し浮かれてる。
自覚あり。
修正不可。
アリスさんは当たり前みたいに横に立つ。
距離、近い。
いや、ゲーム内だ。
距離感なんて存在しないはずなのに。
「今日は何する?」
重い。
質問が重いんじゃない、俺の受け止め方が重い。
「ど、どこでも……」
「じゃあ一緒にクエスト行こ!」
一緒。
この単語、禁止ワードにしないとダメだろ。
並んで歩き出す。
完全に横並び。
……あ。
これ、周りから見たら終わってるやつだ。
でもアリスは気にしない。
「ね、昨日さ」
「相方になってよかった?」
直球。
心臓がログアウトした。
「よ、よかったに決まってるじゃん!」
即答。
考える前に口が動いた。
「ほんと?」
「ほ、ほんと!」
必死すぎる。
「よかった~」
その一言で、
全てがどうでもよくなる。
クエスト開始。
戦闘中。
なのにチャットが止まらない。
「ナイス!」
「そっちも!」
「今の連携よくなかった?」
よかったしか言ってない。
語彙力、死亡。
周囲のプレイヤーが横切る。
絶対ウザい。
でも止まらない。
……と、
ここで。
アリスが少し間を置いた。
「ねえ、相方になったことだし……」
なに。
なにを言う。
「お互い、特別な呼び方しない?」
照れてる。
明らかに照れてる。
何この可愛い生物。
「い、いいね!アリスさんは――」
「アリス!」
「え?」
「アリスさん、じゃなくて……アリスって呼んでほしいかも……」
……は?
え、
ちょっと待って。
それ、
そんな軽いテンションで投げていいやつ?
全世界の王になった気分なんだが?
いいのかこれ?
俺が?
アリスさんを?
呼び捨て?
「呼んでみて?」
ダメだ。
これは逆らえない!そして逆らう気も無い!
「……ア、アリス」
文字打つ指、震えてる。
「うん……凄くいい……」
その反応、反則だろ。
「じゃあこれからよろしくね、俺りん!」
……俺りん?
俺りん?
一瞬、
理解が追いつかない。
「俺りん、どうしたの?」
どうしたも何も、
人生が一段階進んだ。
俺、
今「俺りん」なんだ。
周囲のプレイヤーが視界に入る。
……あ、
これはもう完全に公害だ。
でも止まらない。
「ね、俺りん!」
呼ばれた。
「な、なに!?ア、アリス!」
呼び返した。
終わりだ。
完全に終わってる。
効率?
知らない。
最適ルート?
どうでもいい。
今この瞬間、
俺たちは多分、
一番ウザい。
でも――
やっぱり相方最高や!




