第46話 現地解散
どうやら宝箱は、
アイテムを使った本人じゃないと開けられないらしい。
俺は一歩引いた位置で、
アリスさんが宝箱を開けるのを見守る。
心臓が、少しうるさい。
「俺さん、開けるよ?」
「は、はい!」
「しつこいようだけど、
ちゃんとサイコロ振ってね?w」
「だ、大丈夫です。
ちゃんと振らせてもらいます」
「よーし。
じゃあ――オープン!」
どこかで聞いたことのあるフレーズと一緒に、
宝箱が開いた。
画面右下に、ドロップアイテムの表示。
俺はそれをクリックして確認する。
……見たことがない。
「初めて見るアイテムすぎて、
何に使うかも分からないですね……」
「俺さん! やったよ! 当たり!
ほら、サイコロ振って振って!」
「え? あ、はい!」
言われるがまま、サイコロを振る。
数秒後。
システム音。
システムメッセージ。
《○○アイテムを手に入れました》
……あ。
どうやら、俺が勝ってしまったらしい。
ちらっと、アリスさんを見る。
「俺さん、やったね!おめでとう!」
本気で喜んでくれている。
良い人すぎるだろ……。
「でも、これ……
当たりのアイテムなんですよね……?」
「俺さん?
最初に言ったでしょ、
サイコロは恨みっこなしって」
「それに――次は、
私が絶対勝つから!w」
……なんだこの人。
凄いな。
本当に。
そうだ。
宝の地図は、これで終わりじゃない。
確か、俺でも一日一枚は取れるって言ってた。
後で教えてもらって、またやればいい。
それだけの話だ。
「アリスさん。
当たりアイテムって言われても、
これ何に使うんですか?」
「ふふ。気になるよね?
それね、おしゃれ装備を作る素材なんだけど……」
少し間を置いて。
「マーケットで売ると、50万マネになるの」
「……えええ」
50万。
俺の全財産の、五倍。
一瞬で。
これが……金策?
みんな、こんなことやってるのか……?
そりゃ、マーケットのアイテムが高いわけだ。
「どう? 俺さん。
凄いでしょ?
これが表ルート王道の金策よ!」
ドヤ顔してる……気がする。
「……本当に凄いです。
アリスさん、ありがとうございます」
「うんうん。よかったよ。
しかも一発目で当たりなんてね!」
そして、間髪入れず。
「でもね? ここからよ?」
「なんと……『二枚目の宝の地図』!」
アリスさんは、
某・猫型ロボットみたいな動きで、
二枚目の宝の地図を取り出した。
「行くよ、俺さん。乗って!」
「は、はい!」
――どれくらい、一緒に回っただろう。
宝箱。
ダンジョン。
気づけば、切り上げる理由を探す側になっていた。
楽しい時間って、
どうしてこんなに早いんだろう。
……もう、こんな時間か。
アリスさんも、
他にやることがあるかもしれない。
そろそろ、解散した方がいい。
まだ一緒にいたい気もするけど、
それは、たぶん良くない。
「アリスさん。
結構、時間も経ちましたし……」
俺は、少し申し訳なさそうに言った。
「ああ、ほんとだね。
もう、こんな時間だったんだ……」
「そうなんですよ……」
「うん。
じゃあ、今日はこれくらいにしよっか。
俺さん、初めてだったし、疲れてるでしょ?」
「いえ、そういう訳じゃ……
でも、そうですね。
ここらで、一旦終わりましょうか」
俺はアリスさんをタゲる。
お辞儀エモート。
「アリスさん。
今日は、本当にありがとうございました」
「うんうん。
俺さん、また一緒に遊ぼうね!」
「はい!」
PT画面を開く。
《PTを抜けますか?》
→ はい / いいえ
名残惜しいけど――はい。
テレポート。
町へ。
その時の俺は、
ちゃんとした別れ方があるなんて、
知らなかった。
まして――
誰かの気持ちを、
一人、置いてきたなんて。




