第43話 表のルート
「……ひと山、ですか?」
「うん!」
即答だった。
あまりにも軽くて、
一瞬、聞き間違いかと思う。
ひと山。
……山?
いや。
別に、嫌とかじゃない。
ただ。
何故に、ひと山。
そもそも、
ひと山って何だ。
考えても分からない。
ここで黙るのは違う。
「えっと……
ひと山っていうと……?」
「うんうん。
急に言われても、分からないよね?」
少し間があって、
アリスさんは続けた。
「私ね。
昨日、あれからずっと考えてたの。
俺さんから聞いた話」
「俺さんのことを
全部理解したわけじゃないのだけど……」
「俺さんがフレンドを作りたくて
辿ってきた行動ルートって、
裏ルートみたいなものだと思ったの」
裏。
「BARもそうだし、
私と出会ったあのお店もそう」
「ある程度、
ゲームをやり尽くした人が
行き着く場所なのよね」
「もちろん、
そうじゃない人もいるけど」
「でも……
俺さんの目標とは、
ちょっと違うかなって」
……。
言われてみれば、そうだ。
BARも。
あの店も。
鎧で行く場所じゃなかった。
あの店なんて、
鎧で入ってたら
普通に注意されてたかもしれない。
「だからね?」
声が少し弾む。
「今日から、
私と一緒に
表ルートを歩いてみない?」
……。
普通に。
この人、すごいなと思った。
初対面で、
俺のなんだかよく分からない話を
嫌な顔ひとつせず聞いて。
それで終わらせずに、
ちゃんと考えて。
「……表ルート」
口に出す。
「アリスさんと、
一緒に歩いてみたいです」
考えるより先に、
言葉が出ていた。
「よかった!」
「ありがとう!」
満面の笑み。
……たぶん。
「でも……」
現実が戻る。
「具体的に、
どうすれば……?」
「そこは大丈夫!」
即答。
「だって表ルートなんだから、
普通の人がやってることを
すればいいだけだよ?」
……普通。
「俺さんはね、
きっとそういうことを
してこなかっただけ」
……図星。
「なので!」
「私からの提案は、これ!」
「ジャジャーン!」
チャット欄に、
アイテムが貼られる。
……。
こんなこと、できるんだ。
チャット欄。
お前、そんな機能あったのか。
「えっと……
このアイテムは……?」
「これこそ、
表ルートの王道」
「金策アイテムよ!」
……。
金策。
どうりで。
マネが貯まらないわけだ。
貯まってはいる。
でも、
マーケットのアイテムには届かない。
「このアイテムを
通常マップの特定の場所で使うと、
モンスターが出るの」
「それを倒すと宝箱が出て……」
「一定確率で、
隠しダンジョンにも入れるのよ」
……隠し。
「このアイテム、
俺さんのレベルなら
毎日一個は取れるようになってる」
「これを毎日やるのが、
金策の王道ね」
「でも、
一人だとちょっと難しいから」
「普通は、
マーケットで売っちゃう人も多いんだけど……」
「俺さん」
「私と一緒に、
このアイテム使って
金策から始めない?」
……。
ひと山。
なるほど。
裏じゃなくて、
回り道でもなくて。
ちゃんと、
みんなが通る道。
表のルート。
気づいたら、
俺は頷いていた。




