第42話 マネの匂い
次の日。
……なんか。
世界が、やけに綺麗に見える。
光がどうとか、
影の描写がどうとか、
そういう理屈じゃない。
単純に――
全部が、少しだけ良く見える。
……フレンドが一人できただけで、
こんなに違うもんなのか。
運営がグラフィックアップデートした?
いやいや。
そんな告知、見てない。
そんなことよりも。
俺は一度、深呼吸してから、
フレンド欄を開いた。
「……アリスさんと、フレンドになったんだよなぁ」
ニヤニヤ。
……。
いや、気持ち悪いな俺。
自重しろ。
そもそも、
まだアリスさんはログインしていない。
いつ頃インするのかも、
俺は知らない。
……昨日、なんて言ってたっけ。
「私から、俺さんに個別チャット送るね!」
……。
……はっ。
もしかして、これって。
「私からチャットするまで、
そっちから話しかけるな」
っていう、高度な話術シールド……?
なるほど。
流石だな、アリスさん。
……って。
そんなわけ、あるか!
だったら、
フレンド登録なんてするわけないだろ。
……ない、よな?
……え?
どっち?
こんなとき、
流石のGoogle先生も、
役に立たない。
ピロリン
――うひゃぁあああ。
「こんばんは!俺さん!」
……来た。
心臓に悪い。
このシステム、本当に心臓に悪い。
「アリスさん、こんばんは。
すみません、昨日は遅くまで
付き合わせてしまって……」
「いいのいいの!
それより、今から俺さんのサーバーに行くね!」
「え、あ……
悪いので、俺から行きますよ」
「もう来ちゃったw」
……はやっ。
行動、早すぎない?
「ところで俺さん、
私が今どこにいるか、分かる?」
「え?
同じサーバーに来てくれた、
ってことしか分かりませんけど……」
「フレンドリスト、開いてみて!」
言われるままに、
フレンドリストを開く。
「あ……」
「そうなの。
同じサーバーって条件はあるんだけどね?
フレンドの位置、
ある程度分かるようになってるのよ」
……そうだったのか。
本当に、
俺は何も知らないな。
「なので!」
一拍。
「今から、
私のいる場所まで来てみて!」
「あ、はい」
どれどれ……。
アリスさんは、
○○の町か。
よし。
○○の町へ、テレポート。
――画面反転。
さて。
ここ、いつも人が多いんだよな……。
アリスさんは――
……あれ?
こんなに人がいるのに。
一人だけ、
名前の色が違う。
……あ。
アリスさんだ。
しかも、
ずっと手を振ってる。
……めっちゃ、かわい(やめておけ)
「アリスさん、
お待たせしました」
「ふふふ。
全然待ってないよ!」
「名前の色、違ったから
すぐ分かったでしょ?」
「はい。
これって、もしかして……」
「うんうん。
フレンド同士だとね?
人混みでも分かりやすいように、
色が違うんだよ」
「やっぱり、そうなんですね」
その瞬間。
ピロリン
アリスさんから、PT招待が届きました。
→ はい / いいえ
……。
考えるまでもない。
はい。
「さて、俺さん」
アリスさんが、
少しだけ楽しそうに、ニヤリと笑う。
「ひと山、当てにいこうか!」
――なんか。
よく分からないけど。
また、
話が動き始めた気がした。




