第41話 なんだかよくわからないフレンド
……どれくらい、話していただろう。
正直、分からない。
このゲームで、
フレンドを作るのがどれだけ難しかったか。
掲示板で、
どんな空気に当てられてきたか。
A姉さんのこと。
ギルドのこと。
気づいたら、
堰が切れたみたいに、
言葉が止まらなくなっていた。
……俺。
こんなに、喋る人間だったっけ。
自分でも、驚く。
アリスさんは、
ずっと聞いてくれていた。
最初は、
「うん」とか
「そっか」とか、
相槌もあった。
でも、途中から――
それも、なくなった。
ただ、
黙って。
それが、余計に怖い。
……ああ。
これ、もうダメかもしれない。
初対面で。
ちょっと疑われただけで。
自分の歴史、全部語る男。
誰だよ。
そんなやつ。
……俺か。
話し終わるころには、
さすがに冷静さが戻ってきていた。
そして、
同時に理解する。
やっちまったなぁああああああああ!
アホか、俺?
本当にバカなのか?
こんなに、
自分語りする人間、
存在する?
……しない。
しかも内容、
ほぼ黒歴史。
このまま、
消えて(やめておけ)
そうだ。
アリスさんは、
まだ、そこにいる。
黙って。
聞いてくれている。
消える選択肢は、ない。
とりあえず――
声を、かけないと。
「……あの、アリスさ――」
「俺さん」
……ダメだ。
この呼び方。
このトーン。
絶対、
良くない流れだ。
「私ね」
続く言葉を、
待つしかない。
「今日は、
普段ログアウトしてる時間より、
結構オーバーしてるの」
……あ。
もう……。
誰か、俺を処 (やめておけ)
そうだ。
俺が、話しすぎたせいだ。
完全に。
どうしたら……。
「……すみません」
声が、少し掠れる。
「アリスさんの時間、
考えずに……
話してしまって……」
そのとき。
隣に座っていたアリスさんが、
すっと立ち上がった。
「俺さん」
「は、はい……」
もう、
何を言われても仕方ない。
そう、思った。
「俺さんの、
なんだかよく分からない話を聞いて」
……。
「私もね」
少し、間があって。
「なんだかよく分からないけど、
もっと俺さんと話してみたくなったの」
……え?
今、
なんて言った?
「だからね」
アリスさんが、
立ったまま、くるっと振り返る。
その瞬間。
ピロリン
視界の中央に、
見覚えのある表示が出た。
『アリスから
フレンド申請が届いています』
はい / いいえ
……見るまでも、なかった。
指が、勝手に動く。
はい。
「明日ログインしたら、
私から俺さんに個別チャット送るね!」
軽いトーンで。
でも、
逃げる感じじゃない。
「だから今日は、
おやすみなさい!」
そう言って。
アリスさんは、
ログアウトしていった。
……静かになった。
夜の都市に、
俺一人。
画面には、
フレンドリスト。
そこに、
新しい名前が増えている。
ナンダカヨクワカラナイ。




