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フレンド0から始めるMMO ―俺のMMO生活はまだ終わっていない―  作者: 御門


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第39話 はじめての距離

.…えっと。


いま、俺は――

アリスさんと、普通に話している。


普通、という言葉が正しいかは分からない。

心臓は落ち着いていないし、

指も、ずっと落ち着きがない。


でも、

会話自体は、ちゃんと続いている。


「さっきさ、入口でちょっと固まってたよね?」


「あ、はい……すみません……」


「ふふ。無理しなくて大丈夫だよ?」


……この人。

本当に、優しい。


緊張しているのがバレているのに、

それを面白がる感じが、一切ない。


むしろ、

「あ、そうなんだ」

くらいの温度で、受け取ってくれる。


それが逆に、

余計に緊張するんだけど。


「俺さん、あんまりこういう場所、慣れてない感じ?」


「え、あ……はい……」


「だよね。分かるよ~」


……分かる、って言われた。


理由は聞かれなかった。

説明もしなくていい。


それだけで、

ちょっと息がしやすくなる。


しばらく、他愛もない話をした。

どれくらい経ったのかは分からない。


時間感覚が、少しだけ曖昧になっていた。


そのとき――


「ねえ、俺さん」


「は、はい!」


「ここ、人多いでしょ?」


「そ、そうですね……」


「実はさ、私のPC、あんまり性能よくなくて」


「……え?」


「画面、ちょっとカクカクしてるんだよね」


……あ。

そういう理由?


「もしよかったらなんだけど……」


来る。

これは、来る。


「どこか、二人でお話しできる場所に行かない?」


――――――――


……え。


ちょっと待って。


二人で?

俺と?

今?

ここを出て?


頭の中で、

一気に情報が渋滞する。


嬉しい。

めちゃくちゃ嬉しい。


でも、

本当に俺でいいのか?


これ、

何かの罠じゃないよな?


いや、

罠だったとして、

俺から何を得るものがある?


……ないな。


「ど、どこか……って……」


「うん。私、好きな場所があってね」


あ。

もう、行き先が決まってる。


考えなくていいやつだ。


……正直、助かる。


「……い、行きます」


「よかった!」


その一言が、

やけにまっすぐで。


俺はもう、

流されることを選んだ。


二人で店を出る。


外は、相変わらず夜だ。

でも、さっきより少しだけ、

暗さが気にならない。


その直後。


ピロリン


……ん?


画面の端に、見慣れない表示。


アリスさんから、PT招待が届きました。


……PT?


あ。


よく考えたら――

俺、PT組むの、初めてかもしれない。


今まで、

個別チャットか、一般チャットだけだった。


指が、止まる。


承諾。

拒否。


いや、拒否はないだろ。

ないけど……。


「俺さん?」


「す、すみません……ちょっと……」


「もしかして、PT初めて?」


「……はい」


「あはは」


でも、その笑い方は、

馬鹿にした感じじゃなかった。


「あ、大丈夫大丈夫。すぐ慣れるよ」


……暖かい。


承諾を押す。


画面のチャット欄が、

色を変える。


「……あ」


「ん?」


「PTチャットって……こんな色なんですね」


一瞬、沈黙。


……言わなくてよかったやつか?


「ふふ」


あ、笑った。


「本当に初めてなんだね」


「……はい」


「なんか、いいなぁ」


……え?


「そういうの、私好きだよ」


理由は、聞かなかった。

聞けなかった。


「じゃ、行こっか」


「は、はい!」


行き先は分からない。

目的も、よく分からない。


でも――

今は、それでいい気がした。


二人は、そのまま歩き出す。


夜の街の中へ。


闇に消える、というより――

静かに、溶けていくみたいに。

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