第38話 ファーストコンタクト
よし……。
話しかけてみよう。
このまま立ってるだけじゃ、
本当に何も起こらない気がする。
とはいえ……。
まずは挨拶だ。
あとはもう、なるようになるしかない。
――面白くないって思われたら、どうしよう。
……いや、よくないな。
まだ何も決まってない。
もしダメだったら、
またソロに戻るだけだ。
うん。
失うものは、何もない。
椅子に座ってる人に声をかけるのは、
ちょっとハードルが高い。
隣に座っていいのかも分からないし、
どの距離感が正解なのかも分からない。
……壁際はどうだ?
うん。
見事に、全員張り付いてる。
というか。
ここから出たら、戻ってこれない気がする。
この“居場所”を失うのは、さすがに怖い。
となると――
入口だな。
次に入ってきた人に、声をかけてみよう。
「いらっしゃいませ、○○さん。ごゆっくりどうぞ~」
……来た。
よし。
いくぞ。
……遅かった。
もう行っちゃった。
次だ。
よし、今度こそ。
……あ。
また、遅い。
タイミングが……難しすぎる。
勇気がないわけじゃ、ない。
……たぶん。
よし。
次こそ、本当に――
あ、やば。
キーを押し間違えて、
一歩、前に出てしまった。
……しまった。
相手をタゲったまま前に出たせいで、
相手が、止まった。
……え。
こっち、見てる。
この状況で、
何も言わないのは……
さすがに失礼すぎる。
早く。
何か、言え。
――終わった。
これは、終わった。
ピロリン
「こんばんは!」
……っ!?
向こうから、先に個別チャット!?
やばい、早く返さないと。
「こ、こんばんは!」
…………。
……いや。
これ、次、何て言えばいいんだ?
話題。
話題、話題……出てこない。
どうなってるんだ、俺の引き出し!
何か。
何でもいいから……。
ピロリン
ヒェ!
「俺さん、って呼んでいいのかな?」
「は、はい。そう呼んでもらって大丈夫です!」
「ん~、もしかして緊張してたりする?w」
「え? あ、はい……実は、そうです」
「そうなんだねw私のことは、アリスって呼んでね」
「はい!すみません、アリスさん……ちょっとパニくっちゃって……」
「あははwいいのいいの!」
……なんだ、この人。
めちゃくちゃ、いい人じゃないか。
初めて声をかけた相手が、
アリスさんで――
本当に、よかった。




