第36話 イメージトレーニング
あの後俺は、
エア衛生兵に運ばれるかのように店を後にした。
……凄かった。
あんな場所があるなんて。
エリーさんには、
個別チャットで挨拶だけ送っておいた。
昨日の体験は、間違いなくエリーさんのおかげだ。
今でも思い出す。
やけに煌びやかな空間。
あれだけ人がいたのに、
皆、好き勝手に喋ってはいなかった。
一般チャットは、ほぼ挨拶だけ。
……不思議だ。
大勢集まっているのに、
ちゃんと静かだった。
少し、羨ましかった。
あの場所は――
多分、このMMOの中でも
大事にされている場所なんだろう。
だから、皆ルールを守る。
ははは、何を分かった気になってる俺。
「フレンド0の俺とは、価値が違うな」
……ん?
場所に負けてないか、俺。
空間にまで負けるのか?
落ち着け。
……負けても、別にいいか。
そもそも、
場所はフレンドも作れないし、
女の子とも話せない。
明確に、俺の方が上。
……きっと。
でも、あの場所。
「友達、百人くらいいそうなんだよなぁ」
……やめよう。
張り合う相手を間違えている。
「これから、どうするか」
昨日の店、
結構な頻度で営業してるらしい。
マスターのBARは不定期だし。
……何日か、通ってみるのも、手か。
出来ないことは、
ちゃんと断ればいいだけだ。
なんとなく。
昨日のおかげで、
少し成長した気がする。
今なら、
自分から個別チャットも――
……無理だな。
とりあえず、壁際。
壁際で、
声を掛けられるのを待とう。
うん。
最初は、それでいい。
深く考えず、気楽に。
今まで、
考えすぎていただけかもしれないし。
エリーさんみたいに、
物色は無理だけど。
とりあえず。
声が掛かっても大丈夫なように、
イメージトレーニングだ!




