第35話 大規模MMO
……なんてことだ。
こんな人数のプレイヤーを見るのは、
イベントの時くらいだ。
いや、さすがにイベントほどではないか。
――それでも、多い。
数千万マネクラスのハウスって、
ここまで人を詰め込めるのか。
しかも、よく見ると――
ハウジングも適当じゃない。
柱、天井、床。
全部が「上級貴族のホール」って感じで統一されている。
……見たことないけど。
ピロリン。
<個別チャット>
エリー
「じゃあ、俺さん。
私はちょっと物色して、お話してくるわね?
俺さんも、頑張ってねw」
……。
いや、びっくりするな!?
今回は音じゃない!
物色って何!?
エリーさん、そんなキャラだったん!?
しかも――
今まで手を引いて(錯覚)案内してくれてたのに、
ここで急に放流!?
ちょ、待っ――
そう考えてる間に、
エリーさんは人混みに消えていった。
いや、早いなあんた!
あ、あんたって言ってもうた。
落ち着け。
俺。
まずは、状況確認。
今の俺は――
子供用プールしか知らないやつが、
いきなり大人用プールの真ん中に放り込まれた状態だ。
このままだと、溺れる。
よし。
一旦、壁際。
これは撤退じゃない。
戦略的壁際移動だ。
……が。
エリーさんに連れられて、
ホール中央付近まで来ていたのが完全に裏目にでとる。
壁、遠い。
移動、移動――
……いや、同じこと考えてる人、多くない?
壁際、びっしりやん。
人が、壁になってる。
……巨人的な。(やめておけ)
違う違う。
そんな物語じゃない。
落ち着け。
……落ち着ける場所が、ない。
視線を泳がせる。
キョロキョロ。
ピロン。
<個別チャット>
「こんばんは。お話できる?」
ヒィエエエエエ!!
個チャ!?
この状況で!?
お話!?
誰と!?
何を!?
そもそも「お話」って何だ!?
――違う。
ここは、そういう場所だ。
分かってた。
聞いてた。
さっき、教えてもらった。
とりあえず、返事。
反射で返事。
「え、あ、はい……俺でよかったら……」
「うん。じゃあね。
VCできる? 大人向けのお話しない?」
…………。
神話で見たことがある。
親しい男女が、
そういうことをする物語だ。
――違う!
神話じゃない!
さっき聞いた現実だ!
早い!
早すぎる!
準備は!?
心のヘルメットは!?
いや、もう被弾してる!
衛生兵!!
落ち着け俺、整理!
一旦、整理!
俺と。
この人と。
VCで。
大人なお話。
無理すぎる!!
無理すぎて、
この場からフェードアウトしたい。
でも、返事はしないと。
「すみません……
VC、していないんです……」
「あ、そう。
じゃあ、またね。」
……あっさり。
え?
今までの恐怖は?
心臓バクバクは?
……消えた?
幻覚?
いや、違う。
被弾はした。
ただ――
最初から、
実弾じゃなかっただけだ。
俺が、
輪ゴムを戦車砲だと思い込んでただけ。
……なるほど。
これが。
これが――
大規模MMOか。




