第30話 黒歴史とあったかい心
思えば……遠くへ来たもんだ。
誰が予想できた?
――否。出来るわけがない。
こうやって女性プレイヤーと見つめ合って座ってるなんて……。
ちがーう!
キャラだ!これはキャラ!
そう、ゲームキャラ!
大事なことなので三回言いました!
それにしても、エリーさんのキャラ、凄い美人だな。
そもそも髪型も俺好みで……。
いや、不味い!
何かに引き込まれてる!
「俺さんは、このお店に来るの初めてって言ってたよね?」
「え、はい、初めてです……」
違うだろう……。
実際は二回目だ。
一回目は――黒歴史だ……。
ここで言うのは憚られるが……。
「いえ……すみません。
実は一回じゃないです。二回目なんです……」
「え? でもさっきマスターが……」
「実は……」
俺は、ありのままを話した。
うん。
エリーさんは、自分の時間を削ってまで、
俺の練習台を嫌な顔ひとつせず引き受けてくれた。
そんな人に嘘をつくのは、違う気がする。
とは言え、めっちゃ恥ずかしいな!
でも、これで失望されるなら、
それはそれで仕方ない。
「ふふふふ、盾構えてきたの?
ふふふふ、あはははは、ごめんなさい、ちょっとツボに……w」
「いえ、俺も後から考えると、どうかしてたと思ってたので……」
「ふふふふ、そうだったのね。
通りでマスターが珍しく頼んできたのね、あはははは」
「はー、久しぶりに笑った気がするわ。
俺さんって、面白いのね?w」
「そ、そうなんですかね……ははは」
もう、乾いた笑いしか出ないよ……。
でも、笑い飛ばしてくれたお陰で、
少し気持ちが楽になったかもしれない。
「ふふふふ、なんとなくマスターが
俺さんを気にかけてたのがわかるわ」
「え?」
マスターが、気にかけてた?
俺を? なんで?
「だって、俺さんって、
なんだかちょっとほっとけないんだもんw」
……あ。
今、なんか心にクリティカル入った……。
ほっとけない。
なんというパワーワード。
なんだろう。
凄く、あったかい気がした。
「じゃあ俺さんは、フレンドを探しにきたのね?」
「はい、一緒にゲームを遊ぶフレが出来たらいいなって……」
「うーん、それは少し難しいかもしれないわね?」
「え?」
「うん。私もこのゲーム長いのよ。
でもね?別に戦闘したりはしないの。
こうやって、誰かが開いてくれるお店に足を運んでるだけ」
「俺さんがちゃんと自分のことを言ってくれたから、
私も本音で話しするわね?」
さっきまでとはうってかわって、
エリーさんが真剣な表情になった気がした。
俺のMMO人生は、
ここから動くことになっていく。




