第21話 完全にセーフ寄りのセーフ
やってしまった。
自分の臆病さが、心底嫌になる。
よく考えれば、あそこはセレブ地区。
非戦闘エリアだ。
殺されるわけがない。
そもそも――
声をかけられたのに、挨拶もせずに逃げるってどうなんだ。
プレイヤーとして、いや人として、だいぶおかしい。
……凹む。
……それに。
あの店、俺が入った瞬間から
空気が変わった気がする。
あれ、仕様なんか?
もう、あの店には行けない。
行けない……のだが。
そもそも店の場所、もう覚えていない。
――切り替えよう。
そうだ、PT募集掲示板だ。
……あれ?
さっき見た店の募集が、消えている。
え?
まさか……俺のせい?
変な客が来たから、店を閉めた?
一言も会話せず、ダッシュで逃げた客がいたから?
……いや、あり得るな。
店を閉めさせる原因になった客。
ある意味、逆選ばれし者かもしれない。
はぁ……やっちまった。
でも今回は、完全に俺が悪い。
システムを理解していないまま入ったのが原因だ。
遠くから様子見もできたのに、勢いで中に入った。
よし。
こういう時は――
「Google先生、お願いします」
検索、検索……
「MMO お店 システム」
……この雑な検索で出るんか?
出るわ。
しかも公式っぽい。
どうやらこのゲーム、キャラを作ると
公式にゲーム日記を投稿できるシステムがあるらしい。
――なるほど。
『お店って何?と思った初心者さんへ』
これや……。
なんで最初に調べなかった、俺。
読み進めると、
店にはいくつか種類があるらしい。
有料店。
無料店。
……やばい。
マネ、発生してたんか?
いや、待て。
もし発生してたら、俺のダッシュ逃走って
食い逃げみたいなもんじゃないか?
だから店を閉めた……?
辻褄、合うな……。
――いや、違う。
俺は席に座っていない。
つまり、セーフ。
リアルでも、席に着いてからが場所代だ。
今回は一瞬で逃げた。会話もしていない。
完全にセーフ寄りのセーフ。
……そう思うしかない。(混乱)
さらに読む。
無料店は、
カフェやBARなど、
有料と明記されていない店のこと。
さっきの店は……
確か、そういう記載はなかった。
有料店は、ちゃんと「有料」と書いてあるらしい。
つまり、親切設計。
……ありがたいな。
ということは。
さっきの店は、やっぱりセーフ。
よし。
次は、ちゃんと無料の店を選べばいい。
……が。
掲示板を見ても、全然ない。
ああ、そうか。
店って、常にあるわけじゃない。
プレイヤーがやってるんだから、
ログアウトすれば、店も消える。
つまり――
時間帯の問題か。
よし。
夜のゴールデンタイムに、もう一回挑戦や。
今度は、ちゃんと準備して。




